「ねじれの国、日本」を乱暴に読んでみた

2019年08月19日 11:30

堀井憲一郎さん著「ホリイのずんずん調査 かつて誰も調べなかった100の謎」。
1995年から2011年まで週刊文春に連載されたコラム。
最初は読み飛ばしていたが、だんだんくだらなさが気になり、真っ先に読むようになり、次第に憧れるようになり、中高の先輩だと気がついた、その抜粋本です。

食べてみる、外に出て調べる、スポーツを測る、テレビを数える。
寿司を1カン2カンと数えるのは平成に始まった。
1983年から2009年までの雑誌を総ざらいして調べた結果だという。
馬鹿げた調査パワーだ。

つゆだくが許せないからと、並を頼んだのにつゆだくが出る牛丼店を148日連続で食べ歩く。
チョコボール1021箱で金のエンゼルは1枚だった。
東海道五十三次を歩いてみた。
7年で1万席の落語を聞いてかからなかったネタ。
上沼恵美子のほら話を全部並べる。
くだらない。

この堀井先輩の角度と筆致は鏡とするものです。
そして、「ひよっこ」がスゴいドラマであることを気づかせてくれたかたであり、
「50年間、朝ドラを見てきた私が断言したい「『ひよっこ』はスゴい」」
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/51942

高校の歴史出身高校に何があったかを教えてくれる存在でもあります。
「1971年、京都で起きた高校紛争の記録~左翼運動はなぜ衰退したか」
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/57096

その堀井憲一郎さん著「ねじれの国、日本。」を読みました。
いつもの角度と筆致でありながら、日本の国家観をざくざく切って曼荼羅っぽく示す熱量の高い本で、精緻でないぶん難解な、そして刺激的な作品でした。
誤読を怖れず、自分用にメモしておきます。

日本はウチ向けには言葉にしない思念を示し、外向けには虚構を示す。ねじれ。
思念とは同調すること。日本は地政学的にも自然的にも元気で、暴力を内包する。
虚構とは日本という国家、仏教を抜き去った神道、偶像としての天皇。
それらは7世紀の中国に、19世紀のナショナリズムに、対抗して作った。

建国記念日は何の日か。
(正解は神武天皇の即位日)
知らなければ日本人で、ぺらぺらしゃべったら敵国スパイ。
教育をしていないし、説明するつもりもない。
国民にはウソとわかるサインを出しつつ、世界にはそう説明する。ねじれ。
アメリカ独立記念日やフランス革命記念日は教えるのに。

7世紀、律令国家を世界(中国)に宣言。
聖徳太子から天智・天武天皇、中国向けに日本という国号を決めた。
唐という巨大な中央政権が建った危機感。
独自の共同体として。
海と山があり、狭い平野に密集して住む。
左側ばかり見ていた。

昭和17年、開戦から半年の連勝に知識人は「近代の超克」に高揚し、国民も興奮した。
明治以来、西洋から無理を強いられた近代への恨み。
西洋の近代を敗戦でより大きく受け入れるハメとなった。
日本は大きく変わったというウソのスローガンで戦前と戦後を切った。

日本はいつも大陸の王朝に向いている。
古来、野蛮で元気。半島をまたいで攻め込む厄介者。秀吉も日中戦争も。
逆はない(元は世界史上の奇態とみる)。

中国は何度も王朝が変わったが日本はずっと日本。
中国も朝鮮も日本が怖い。
中国はいろんな民族が暴力で王朝を建てる続けた「ステージ」であり、日本も秀吉や陸軍がエントリーした。

日本が攻め込んでも背後(右側)から突かれない。
逆に日本に左から攻めるのは困難で、コストに合わない。
すると右側からペリーが大砲を鳴らしたからビックリした。

神様は善意とも正邪とも関係なく、ただ在る。
願いは五穀豊穣=生活安定のみの、未開で原始的。
教義も理論もない。共同体。
世界宗教は原始共同体を壊していったが、日本は枠組みを壊さず、仏教も儒教も取り入れキャッチアップした。
言語化することなく同調するのが民族的な基調。

国の根幹に関わる言説を「ねじる」。それによって安定する。
鎖国はきちんとねじった200余年。ねじったままでいい。

地政学的・自然的に有利な条件の下、ずっと一まとまりだった共同体が、実体をぼやかして国の姿をまといつつ、フィクションを編み出して対外的に格好をつける。
そんなことが書いてあります。
たぶん。

とすれば、戦争も動乱もなかった平成は、そのねじれを維持し固めた30年だったのでしょう。

令和はどうでしょう。堀井さんが令和をどう読むのか、聞いてみたいです。


編集部より:このブログは「中村伊知哉氏のブログ」2019年8月19日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はIchiya Nakamuraをご覧ください。

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