韓国でテレビが報じない反文在寅集会

高 永喆

韓国では8月15日、光復(解放)74周年を迎えて、ソウル市の中心部に約30~50万人(警察推計10万人)が集結し、大規模な反文在寅集会・デモを行った。開催団体は様々に分かれていたが、雨空にも関わらず、光化門広場の李舜臣将軍銅像辺りから市庁前広場を経て南大門辺りまで人波で埋まった。

反文在寅デモ(韓国国内のテレビ報道から:編集部)

また、今回の集会には陸・海・空や海兵隊のOB団体が大勢参加した。

韓国経済発展の父、朴正煕元大統領を狙撃した側近は軍出身であり、当時,釜山と馬山で勃発した大規模な反政府デモがバックグランドになった。さらに、米国の“暗黙の了解”があったのではないかと推定された。

建国の父、李承晩元大統領も大掛かりな反政府デモによって下野を余儀なくされた。歴代指導者が大部分不幸な末期を迎えたが、今の文大統領は国の経済と外交・安保の破綻を招いて国民の批判世論が沸騰しつつある。

その一方で、韓国は現在、金日成主体思想派と左派労働組合が大統領府と法曹界、言論界、メディアを掌握し、事実歪曲とプロパガンダを繰り返している。

15日の反文在寅集会についても、地上波放送局のニュースは文政権寄りの「安倍糾弾ろうそく集会」ばかりを取り上げ、ケーブル・衛星放送局でもYTNや聯合ニューステレビも国民️デモを報道しなかった。JTBC は縮小して取り上げたものの否定的な側面だけを強調。比較的公平に扱ったのは朝鮮テレビ(朝鮮日報系)くらいだった。

しかし、インターネットでは右派ユーチューバーたちが集会の様子を生中継などで伝えており、国民は文政権とマスコミの事実歪曲に惑わされず、彼らの誤魔化しを見抜いている。

光復節で演説する文大統領(大統領府Facebookより:編集部)

文大統領の虚偽と失策は常識を超えて限界に至っている。とりわけ文氏は、金正恩が1年以内に核を放棄すると嘘をついて米国と北朝鮮の双方から信頼を失った。そうした虚構上に締結された南北軍事合意書は降伏文書に近い。相次ぐ失政は,政策の失敗というより意図的に韓国を壊そうとする行為でないかとまで指摘されている。

一方、北朝鮮は先月25日から8月16日まで6回、各2発ずつミサイルを発射した。北朝鮮に資金や物品を提供して正恩氏を支援したにも関わらず、北朝鮮は文氏を「恥知らずな男」などと罵倒し、文政権との交渉を一切打ち切ると表明した。これこそ,北朝鮮を後ろ盾にした文政権にとって致命傷だろう。

正恩氏はトランプ氏が文氏を嫌がる本音を見抜き、文氏の面子を潰しているのだと推測される。文政権のレームダック現象が早くも始まった証だ。

(拓殖大学主任研究員・韓国統一振興院専任教授、元国防省専門委員、分析官歴任)
※本稿は『世界日報』(8月21日)に掲載したコラムに筆者が加筆したものです。

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