知っトク解説:今回は“合意なき離脱”

中田宏の知っトク解説。
今日は“合意なき離脱”

EU(欧州連合)は28ヶ国で構成され、イギリスも長らくその一員でしたが、2016年の6月23日に国民投票の結果、EUからの離脱を決めました。離脱はリスボン条約と言われるEUの基本的な条約の第50条で認められていますが、当然ながら離脱した後、どういうルールで付き合っていくのかを決めなければなりません。

なにせ、EUは単一市場、いわば一つの国のような存在でしたから、人・物・サービスそしてお金の移動や取引が自由に行われていました。イギリスはそこから離脱するわけですから、貿易には関税をいくらかけるのか、人の移動にはどんな制限を設けるのか、お金の移動・投資についてはどうするのか、様々なことを決めなければ、取引ができなくなります。

離脱が決まった後、EUとイギリスは交渉して合意案をまとめましたが、イギリス議会で3回否決されました。そうしたことから、、離脱の切れも2019年4月の10日から半年延期されて10月末になりました。

しかし、イギリス議会には合意案を否決したままで、7月に誕生したボリスジョンソン首相はEUに再交渉を求めています。もしもこのままEUとイギリスの間で合意がないまま10月31日を迎えてしまえばそのまま離脱。これを「合意なき離脱」といいます。

そうなれば、ルールがない状態になってしまいますから、貿易などの様々な面に大きな影響が出ると言われています。

例えば貿易でも、イギリスが関税をかけたとして、税金や輸出入の許可などについていかなる作業で進めていくのか、それが滞りイギリスに物が入ってこないということなどが考えられます。イギリスの国民が困るだけではなくて、イギリスの製造業はEUから部品を輸入して製造して輸出することもできなくなってしまう可能性があります。

特にイギリスの主要産業である自動車製造業も製造できない、出荷できない事態が予想されるので、もし合意なき離脱の場合は、トヨタやBMWなどは一時操業停止を予定しています。イギリスに進出している日本企業は1000社以上あり、様々な形で影響を受けることになりそうです。

UNCTAD(国際連合貿易開発会議)の予想によると、イギリスからEUへの輸出は160億ドル(1兆7000億円)が減ると見込まれています。もちろん、EUからイギリスへの輸出にも大きな影響が出るでしょうし、イギリスからEU以外の国にも大きな影響が出ます。

ということは、ただでさえ不安定な世界経済にとって、このショックがどんな影響になってしまうのかが懸念されています。


編集部より:この記事は、前横浜市長、元衆議院議員の中田宏氏の公式ブログ 2019年9月9日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。