NHK会長のかんぽ謝罪問題で思う、日本の報道はこれでいいのか?

田原 総一朗

9月26日、毎日新聞がスクープを出した。NHKのかんぽ生命保険の不正販売問題報道に関する内容だ。NHKのこの報道に対して、日本郵政グループが繰り返し苦情を申し立てた。それを、NHKの上田良一会長が郵政側に謝罪していたのだ。

毎日新聞によるとこうだ。問題となったのは、昨年4月24日に放送された、「NHK クローズアップ現代+」。「郵便局が保険を“押し売り”!?〜郵便局員たちの告白」という特集だった。

放送後、NHKは続編制作のため、情報提供を呼びかける動画をツイッターに投稿した。これに対して郵政側は、この投稿を削除するように上田会長に申し入れたのだ。

この一件で、上田会長は、NHK経営委員会に厳重注意を受けた。さらに上田会長は、「番組幹部の説明を遺憾」とする、事実上の謝罪文を郵政側に届けたという。

NHKの上田会長は、なぜ拒まなかったのか。いわば、報道が郵政側に屈したのだ。NHKの独立にかかわる、大変な問題である。いや、NHKだけの問題ではない。問題は、民放も含むメディアすべてに広がるのだ。

いまテレビ局は、無難な番組ばかりを放送している。あおり運転、殺人事件……。もちろん、そういった報道も必要だ。だが、あまりにも偏っていないか。

本当に国民が、考えなければいけない問題はある。たとえば、日米貿易交渉の結果だ。これを、どう見ればいいのか。あるいは、今回の台風だ。なぜ千葉の被害は、ここまで長期化しているのか。千葉の台風被害は、東京電力が、原発事故以降、設備保全の経費を削減した。その影響があるのではないかとも言われている。なぜ、そういう報道がないのか。

テレビ報道は、いったいどこへ行ってしまうのか。僕は、大変な危機感を持っている。


編集部より:このブログは「田原総一朗 公式ブログ」2019年10月3日の記事を転載させていただきました。転載を快諾いただいた田原氏、田原事務所に心より感謝いたします。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、「田原総一朗 公式ブログ」をご覧ください。