3回目のライオンキング

2019年10月07日 11:30

「ライオン・キング」、3回目です。
94年のアニメ映画、2000年にニューヨークのブロードウェイで観た舞台、そして今回の超実写映画。
筋書きはアニメをなぞる血統主義の勧善懲悪で、ぼくの趣味ではありません。
音楽もThe Lion Sleeps Tonight(61年 The Tokens)を除き、ぼくの趣味ではありません。

なので、筋でも音でもなく、
ただただ、映像を眺めました。
ただただ、技術を観ました。
恐ろしい映像でした。
フルCGが、現実を超えるリアルさを伴う。
恐怖映画でした。
ぼくにとって3世代目の恐怖映画です。

第1世代は20年前、カメラを使わずコンピュータだけで映画が作られるようになったこと。
そう、「トイ・ストーリー」です。
1997年6月のマックパワーに記録しました。
「「トイ・ストーリー」は恐怖映画である」
http://www.ichiya.org/jpn/column/macpower/08.html

「「トイ・ストーリー」は、映画誕生101年目の奇跡だった。カメラからコンピュータへのシステム変更だ。しかも表現はハリウッド的な感性でみれば完璧。わざと残したCGっぽさの具合もほどよい。
これは、産業のシステムや技術だけでなく、表現技法も、映像文法も、ストーリー展開も、アメリカが次世紀の審判となるぞというソフトな宣言なのだ。恐怖映画である。」

こう書きました。

テクノロジーがカメラや照明といった人の所作をひっくり返した、と思いました。
日本はデジタルで敗けた。
完敗。
河瀨直美「萌の朱雀」(1997年)、宮崎駿「千と千尋の神隠し」(2001年)、このアナログで生きるしかない、と思いました。

第2世代は10年前、「クリスマスキャロル」、「AVATAR」、「Toy Story 3」。
3本立て続けに感じた恐怖です。
CGがリアル3Dに進化し、映像表現の制約がなくなってしまった、負けっぱなし。

「クリスマスキャロルも恐怖映画だった」
実写以上にリアルな表現であること、表現の制約がなくなったこと。
恐ろしや。
http://ichiyanakamura.blogspot.com/2009/12/blog-post_26.html

「AVATARなる体験」
3D・CGによるVR体験。作品は批判しつつ、技術に戦慄です。
https://ichiyanakamura.blogspot.com/2010/01/avatar.html

「Toy Story 3も恐怖映画だった」
ストーリーは定番だけど、3D臭さのない3Dの怖さ。
https://ichiyanakamura.blogspot.com/2010/09/toy-story-3.html

そして今回。
ジョン・ファヴロー監督は既に2016年、これもディズニーのリメイク「ジャングル・ブック」で3D・CGが現実、実写を超える技術を見せていました。

当時ぼくはツイートしています。
「子どものころに見たアニメ版には強い印象があったが、実写を超えるCG版を見ることになるとは、50年生きたかいがあった。にしても少し前まで、どうやって作ってる・撮ってるかが気になっていたが、もう何を見ても「作れるんだ」としか思わない。」

俳優も要らず、ロケも要らず、カーチェイスや爆破も自在、全バーチャルがリアルを超えるリアリティーで作り出される。
AIも組み込まれ自動に生成されていく。
バーチャルの3D・CGが映像を制圧する。
それがデフォルトになる。

ただ、それは第2世代の恐怖。
第3世代の恐怖は、それをもう一度、アナログ+リアルに引き戻したことです。
今回、舞台の風景や動物たちの動きをデータ化し、VR装置を着けたスタッフが実際にカメラを操作し、人の手によるアナログな手法で撮影したそうです。

アフリカで現地調査と写真撮影をしてCGで再現、それをVRに落とし込んだ。
フルCGではあるが、VR内で現実のセットにいるような感覚で映画製作を行った。
撮影クルーが実写映画と同じ感覚でVR空間内を動きカメラの構図などを決定する。
PC上の操作から、再び手足を動かす運動へと回帰したというのです。

ビットとアトムの結合。
バーチャル空間のビットがIoTでリアルなアトム(物理)に引き寄せられる。
コマースではもう馴染んだ光景ですが、映像制作でもその手触り感が求められるようになったんですね。

デジタル、バーチャル、3D・CGを制圧して、アナログ、リアルに新地平を拓く。
日本がアナログ、リアル、2Dでの勝負にこだわる間に、一周回ってそう来たのか。
なんともはや。

気を取り直して、楽しい面も見てみよう。
オッと思ったシーン。
シンバの毛が風に飛ばされ、鳥がくわえ、キリンが食べ、ふんころがしが転がし、アリが運び、マントヒヒがそれと気づく、絵だけで見せる連鎖。
さすがディズニーの描写力。

そして、吹替版、ティモンの声をミキの亜生にやらせたプロデューサーの耳。
あの役が亜生にハマる、と見抜けるプロが日本にもいるってことですな。
まあそれでよしとしましょう。


編集部より:このブログは「中村伊知哉氏のブログ」2019年10月7日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はIchiya Nakamuraをご覧ください。

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