小泉大臣、“レジスト”よりずっと有効な廃プラ対策がありますよ

2019年10月10日 06:00

「レジスト」といっても韓国への輸出優遇を外した電子材料のことではない。大臣就任の抱負をNHKに問われた小泉氏が案の定発した「レジ袋有料化」や「プラスチックストロー廃止」といった、象徴的ではあるがその実ほとんど環境改善に寄与しない廃プラ対策を揶揄する筆者の造語だ。

環境省HP、政府ネットTVより:編集部

内閣改造直後の9月13日の拙稿「進次郎氏の環境相就任、河野太郎氏の抜擢とダブる安倍総理の深謀」にこう書いた。

廃プラ問題は、分別はやめてペットボトル以外はまとめて回収し、焼却場やセメントメーカーなどで燃やすのがベスト。そもそも劣化しないのが売りのプラスチックを捨てたり埋め立てたりするから問題になる。再生も、少しでも異種のプラが混ざれば用途は極めて限られる。

(小泉氏が)レジ袋有料化やプラストロー締め出しなどの類の、ピントのずれたほとんど役に立たない小手先の策を弄するような気がするので釘を刺しておく。分別と回収の仕方を改め、高熱で燃やせる安価で高性能な焼却炉の開発と普及に努め、それを世界に広めることが大事ではないか。

そうは書いたものの、筆者はこの問題を特別に勉強した訳でもなく、プラスチック会社で働いた頃の拙い知識とセメント会社の知人から聞いた話からの日頃の思いに過ぎなかった。で、投稿も不評だったしちょっと無責任かと反省し、この機会に少し勉強した。本稿ではそれを述べたい。

日本の廃プラ有効利用の実情

ネットに環境省が今年まとめた「プラスチック資源循環戦略」(以下、戦略)なる資料がある。「基本原則」に「3R+Renewable (持続可能な資源)」とあり、4項目が書かれている。詳細は略すが3Rとは「Reduce(削減)」、「Reuse(再利用)」、「Recycle(リサイクル)」だ。

続く「重点戦略」には、①資源循環、②海洋プラ対策、③国際展開、④基盤整備、が挙げられ、①のプラスチック資源循環に「リデュース等の徹底」の一例として「レジ袋の有料化義務化(無料配布禁止等)」が書いてあるので、小泉大臣はこれを卑近な例として挙げたのだろう。

だが「環境省による海洋ごみの実態把握調査」によれば、プラゴミ(総量は2~6万トン)は「漁網・ロープ」41.8%が飛びぬけて多く、「ブイ」10.7%と「飲料用ボトル」7.3%が続き、「カトラリー(ワンウェイのプラ製フォーク・スプーン・ストロー類)」と「ポリ袋」は各々0.5%0.4%と微々たるもの。

日本の廃プラ総量は899万トン(プラスチック資源循環利用協会。2016年)だが、この戦略には84.2%という誇るべき日本のプラ容器包装廃棄物の有効利用率も出ている。世界全体の利用率は14に過ぎず、不適正な処理のため全世界で年間数百万トンを超える廃プラの海洋流出があるという。

「このままでは 2050 年までに魚の重量を上回るプラスチックが海洋環境に流出することが予測される」とは「エレン・マッカーサー財団」がマッキンゼーの協力の下で2016年にまとめたレポートの一説だ。海洋に1.5億トン以上のプラ廃棄物があるとの推定に基づくらしいが、何やらプーチンが非難する「若者を自身の利益のために利用する」臭がプンプンだ。

写真AC

「超優等生」日本の処理方法

ただ、この戦略から、日本は廃プラ有効利用の「超優等生」と知れる。そしてその理由こそ日本人の律儀できれい好きな国民性に違いない。ゴミは丁寧に分別して指定場所に出すし、そこらに捨てず持ち帰る癖はサッカーのサポーターで世界中に知れている。だから海洋流出の余地はほとんどない。

勿論ゴミの収集と収集されたゴミを処理する仕組みも優れているのだが、プラ廃棄物を再資源化する体制や設備も整っている。それらは、

1.材料リサイクル

2.油化

3.高炉還元剤化

4.コークス炉化学原料化

5.ガス化

6.固形燃料化

…の6項目。2~5はケミカルリサイクル、6はサーマルリサイクルともいう。

概ね想像が付こうが、

1.は元の材料に戻す

2.は油化して原燃料に用いる

3.は製鉄所の高炉で鉄鉱石の還元に使う

4.はコークス炉で原料炭の代わりに

5.はガス化して化学工業の原燃料にする

6.は固形燃料化してセメント工場等で使う。

当然いずれも相応の技術と設備とコストを必要とする。

1.で元の材料に戻せれば一番良いのだが、「少しでも異種のプラが混ざれば」元には戻せない。従って、家庭からのプラゴミでは明確に単種と判るPETボトルと発泡PSの白色トレー以外はNGだ。他方、工場などからの産業廃プラは単種が大量に出るので材料リサイクルに向く。

筆者の一押しは6.のサーマルリサイクルだ(実はセメント会社の友人からの受け売り)。なぜかといえばセメント工場は、廃プラの種類や汚れ具合などの文句をほとんど言わないし、固形燃料化の工程や設備も他に比べてそう複雑でない、いわば黙って何でも飲み込む「ダボハゼ」なのだ。

廃プラ利用を妨げる規制の存在

セメント協会資料によれば、2017年度のセメント業界の廃棄物・副産物の使用量は、石炭灰、高炉スラグ、汚泥・スラッジ、副産石こう、建設発生土、燃え殻、煤塵・ダスト、非鉄鉱滓等、廃プラ、木屑、鋳物砂、廃・再生油、ガラス屑等、廃タイヤから果ては肉骨粉までの28百万トンに上り、セメント生産量60百万トンに対し47%を占める。

セメント協会HPより:編集部

このうち廃プラは64万トン。実はもっと使いたいのに規制がそれを阻んでいるそうだ。廃棄物や副産物を28百万トンも使っているのだから899万トンの廃プラ全量だって理論上OKだ。もっとも廃プラ以外の廃棄物・副産物の持って行き場や、他の廃プラ使用業者が困るからそうは行くまいが。

整理すると、28年度の総廃プラ899万トンの内訳は一般廃棄物407万トンと産業廃棄物492万トン。そのうち材料リサイクルが23%、ケミカルが4%、サーマルが57%。一般廃棄物のうち約123万トンが容器包装廃棄物で、容器包装リサイクル(以下、容リ)法に基づくリサイクル量が約66万トンだ(国際環境経済研究所 西山進一氏の論文)。

従って容リ法に基づくリサイクル率は53%(66/123)になるが、日本も米国も署名しなかった海洋プラスチック憲章では、「2030 年までにプラ包装の最低55%をリサイクル又は再使用」するとしているので、現状の日本のリサイクル率は既にほぼ達成している(西山論文)。

そこで更なるリサイクル率向上を阻む規制のことになる。一つには容リ法で行っている入札方法。普通に入札すればコストの低いケミカルリサイクルが落札し処理量が増えるはずが、入札対象量の半数を材料リサイクルに優先配分する運用を行っているという。

これがコストでも収率(49%vs85%)でもCO2排出量でも優れるケミカルリサイクルが4%しか普及が進んでいない理由だ。先述の通り、材料リサイクルは異種のプラや汚れの混入はNGだが、ケミカルやサーマルならほぼ何でもござれ。よって、収率も上がりコストも安く済む上、分別も簡便で済む。

小泉氏にふさわしい“既得権益”打破

もう一つの規制はサーマルリサイクル(固形燃料化)における容リ法に基づく容リ協会のガイドラインだ。それにはエネルギー利用率が96%以上と厳しい数字に定められている一方、セメント業界のエネルギー利用率は一般に80%なのでこれ及ばないのだ。

そこでセメント協会は「材料リサイクルの事業者で再生利用する際に利用出来なかったプラ容器包装は、その事業者から産業廃棄物として排出され、それらはセメント工場で多く受け入れています」と健気だ。それが先述の64万トン。つまり、規制はサーマルの「ダボハゼ」を見込んで「駆け込み寺」にしている。

小泉大臣はこの規制を外して100%有効利用を目指したらどうだろう。各リサイクル関係者の権益もあろう。が、その打破こそ彼にふさわしい。そしてこの誇るべき日本の廃プラ対策の実績を得意の英語で世界に発信すること。技術や設備の輸出も良いだろうが、何より最上の輸出商材は日本人の律儀できれい好きな国民性に違いない。

最後に、欧州では縷説したリサイクルはCO2を出す「空への埋め立て」として排され、「良い処理方法が見つかるまで土に埋めておく」との呆れた発想がある。中国がプラゴミ輸入をやめた今、いずれ欧州中の森林がプラゴミと太陽光パネルと風力発電塔で埋め尽くされ、CO2吸収も覚束なくなるだろう。

高橋 克己 在野の近現代史研究家
メーカー在職中は海外展開やM&Aなどを担当。台湾勤務中に日本統治時代の遺骨を納めた慰霊塔や日本人学校の移転問題に関わったのを機にライフワークとして東アジア近現代史を研究している。

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