イカ金融の険しい道

2019年10月15日 11:30

企業は、生きたイカのように、元気に泳ぐ生き物である。それに対して、財務諸表等の数値に表現される企業は、過去の泳ぎの一姿態にすぎず、死んで干乾びたスルメである。金融庁は、銀行等の企業融資において、スルメの成分の静態解析に基づく判断を改めて、イカの動態を評価する方向への転換を強く求めている。さて、スルメ金融からイカ金融への脱皮は可能なのか。

画像:123RF

金融庁は、企業の生きた動態を事業性と呼んでいて、銀行等に対して、事業性の評価に基づいた融資判断を強く求めている。逆にいえば、過去の財務諸表の数値、担保の有無や担保価値、また保証の有無等の静的な基準に依存する融資では、真の金融機能の発揮はできないとの判断があるわけである。

ここで金融庁が考えている銀行等の金融機能とは、金融支援力により、企業のもつ成長余力を解放し、もって、経済の成長に資することだから、企業活動の生きた動態に基づく融資判断は、必須のものとなるわけである。

わかりやすく具体的にいえば、例えば、景気変動等の影響で、直前数期連続赤字に陥っていたり、自己資本の厚みが薄くなりすぎていたりする企業は、その時点の静的指標により評価する限り、銀行等の取り組みとしては、少し難しい先となるだろう。しかし、まさに、こうした状況における支援こそ、金融の社会的機能そのものでもあるわけである。

このことは、晴れには傘を貸し、雨が降ると傘を取り上げる、などと揶揄され、金融の解き得ない矛盾として、古くから常に問題とされてきた。もちろん、二律背反のないところに、経営能力など必要ないわけだから、銀行等の経営の要諦は、この矛盾が露呈する都度、それに真正面から対峙することによって、顧客の視点で、金融の社会的責務の貫徹を図ることであったのである。

要は、経営不振が一時的なものか、構造的なものか、構造的なものとしても、改革可能なものか、ということに帰着するのだが、問題は、そのような判断を銀行等はなし得るのかという点に尽きる。換言すれば、銀行等はスルメに干した事業評価はできても、生きたイカの事業評価は困難だということである。

故に、真の金融とは、この困難を克服することにほかならない。

 

森本紀行
HCアセットマネジメント株式会社 代表取締役社長
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twitter:nmorimoto_HC
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