ダムで行われた緊急放流の役目とは:開業前の八ッ場ダムも活躍

川松 真一朗

東京都議会議員の川松真一朗(墨田区選出・都議会自民党最年少)です。

緊急放流とは

10月12日の午後から「緊急放流」という言葉がNHKでも使われ始めました。言葉のニュアンス的に突然にダムの水を吐き出している感が強く、下流域の皆さんを不安に導いているのではないかという印象を受けました。

私は都議会議員になって、公営企業委員を長く務め、また八ッ場ダムの推進議員でもあり、ここはダムの考え方、緊急放流の考え方を残しておかなければならないという思いが強くなったのです。

決して、工学系の人間ではないのですが、最低限のお話を紹介することで、正しい情報を共有し、この危機を乗り越えるために冷静な判断となる事の一助になればと考えています。

城山ダム(Wikipedia:編集部)

まず、台風一過を迎えている地域の皆さん。上流からまだ水が流れてきますので、警戒は緩めずにして下さい。

さて、緊急放流というのはダムにおける「特例操作」のことです。では、この特例操作とは何だろうかという話になります。想定された計画洪水量を超える洪水が発生し、このままではダムの水位が一定値(洪水時にダムが洪水調節をして貯留する際の最高水位)を越えると予想される時に実施される操作です。実際に相模原の城山ダムでは、当初報道された時間よりも遅くに緊急放流が行われました。

ダムの洪水調節を理解する

そもそも、ダムは堰堤と呼ばれていて、川を堰き止めている構造物です。ですので、いったん川の流れを止めるいう大原則があります。

多くの方はダムは洪水を全て貯め込むためにあるものだ、と思いがちですがそれは間違っています。

多くのダムの場合、大雨が降ってダムに流れ込む水の量が増えても、下流の川が溢れない程度の水量であればそのまま流すことになっています。しかし、下流の川が溢れてしまいそうな水量に増え続けると、ダムは溢れない水量に抑える役割をします。これが洪水調節です。

つまり上流からの流入量>放流量にして下流への水量を抑えるという仕事をします。

ダムで水量を抑えるとき、抑えた分だけダムに水が貯まり貯水量が増加します。雨が止んで川の水が引き始めると、それまで貯め込んでいた水を加えながら流し、次の大雨に備えます。流入量<放流量にするわけです。

前提としてダムは、大雨が降って一気に流れる危険な水を貯め込み、安全な水量に減らしながら時間を掛けてゆっくり流しています。

自然の流れに戻す

つまり、ダムが機能している間は、下流域の危険は抑えられています。ところが、今回のような緊急放流というのは、ダムに貯め切れなくなって、ダムの容量を超えて決壊の恐れがある時に、はじめて川の流れの水量をそのまま下流に流すという操作になります。

緊急放流というおどろおどろしい表現から想起される「ダムから全ての水を吐き出す」というということではなく、本来、上流から下流に流れる量だけを下流に流していくことになります。正に緊急的な操作です。この作業により災害回避、もし水量が多いならば下流域の為の時間稼ぎが出来るのです。

したがって流入量=放流量以上には水を流すことはないのです。ダムが放流するから下流で洪水が起こる的な発信をされている方も見受けられますが、緊急放流は上流から流れてきた水量をそのまま流すという意味です。もしダムの放流で洪水が起きたのならば、ダムがなければもっと前に洪水が起きていることになります。

今回の城山ダムは、当初は「17時緊急放流の予定」で報道されていましたが 、更にギリギリまで頑張るぞと現場が判断し 「21時30分緊急放流開始」になったのです。この4時間30分は現場で大変な緊張感に包まれていたものと想像できます。 今回は宮ケ瀬ダムの運用も同時にハンドリングする事で、危機回避に繋がったものだろうと考えます。

ですから、一般論としても、今回のような台風接近が判明した頃から、有事に備えて徐々にダムから放流をして、出来るだけ台風に耐えられるようダムの水位を下げて準備します。それでも、水位が上昇してきたら、緊急放流になるのです。ダムの現場に携わる職員の方々は台風接近時から判断をするのです。その意味で、職員の皆さんは総合的に判断をされました。本当に有難うございました。

八ッ場ダムがデビュー前に一仕事

一方で、民主党政権やマスコミがいやというほど批判をした八ッ場ダムですが、八ッ場ダムのライブカメラをご覧ください。水が溜まっています。八ッ場ダムの開業は2020年春です。

試験湛水中の八ッ場ダム(10月13日朝、国交省サイトより)

では、なぜこんなに水が溜まっているのかというと、10月2日に試験的に湛水(水を張って溜めること)を開始し、実際の運用での安全面等をチェックし始めたところでした。当初の予定では、2、3か月で一杯になるとのことでした。この台風19号で一気に水を溜め込みました。

八ッ場ダムは治水上、あまり効果がないと指摘される方も多かったのですが、私達も100年に1度の災害で威力を発揮すると主張してきましたが、実際にデビュー前に八ッ場ダムの力を見たところでした。

ちなみにここまでの過程はツイッターで星野夕陽さんが紹介して下さっていました。

他にも荒川の氾濫防止の為に、やってきた各事業も大きな効果を残すことにもなりました。これについてもご紹介していきたいと思います。

川松 真一朗  東京都議会議員(墨田区選出、自由民主党)
1980年生まれ。墨田区立両国小中、都立両国高、日本大学を経てテレビ朝日にアナウンサーとして入社。スポーツ番組等を担当。2011年、テレビ朝日を退社し、2013年都議選で初当選(現在2期目)。オフィシャルサイトTwitter「@kawamatsushin16」