防災インフラ整備は地元にまかせてはいけない

2019年10月15日 17:01

台風19号の被害が堤防やダムで防げたことで、インフラの役割が見直されている。特に民主党政権が完成を遅らせた八ッ場ダムが、完成直後の試験貯水で洪水を防いだという評価が高い。利根川の流域全体の水量からみると大きな差がなかったという意見もあるが、ないよりあったほうがいいことは明らかだ。

こういう公共事業に反対するのが、10年ぐらい前まで流行した。田中康夫知事が「脱ダム」を打ち出した長野県が千曲川の氾濫で大きな被害を出したことが批判を浴びているが、大部分のダムは農業用水のための利水ダムだったので、治水設備としては効率が悪い。

治水は100年に1度ぐらいの洪水にそなえるものだから、自治体の防災対策は99年は空振りになり、過少投資になりやすい。だが日本全体としてみると、去年の西日本豪雨に続いて今年と、大型の台風や集中豪雨はほぼ毎年、全国のどこかに来る

つまり国レベルで考えると、ほぼ確率1で起こる出来事にそなえる災害予算を組めばよい。政府の一般会計予算で治山・治水費用は約1兆円あるから、これを水害の被害の大きい都市部の堤防に優先的に配分すればいいのだ。

このとき地元の意見を聞いてはいけない。たとえば荒川の堤防は、200年に1度の大雨では下流の東京が氾濫するのを防ぐために、上流にある埼玉県の戸田市は水没するように設計されている。この設計を戸田市の住民が判断したら反対するだろう。

戸田市ホームページより

日本では避難してからの「災害関連死」が多い。これも市町村が避難所をつくるため、予算に制約があるからだ。それに対してイタリアでは、国の市民保護局が災害対応を行なうので、避難所の設備も十分だ。設備は可搬式なので、国でストックして災害の起こった地域に運べばいいのだ。

ところが既存のダムは農業用につくられたものが多く、地方に過剰投資され、都市の堤防は過少投資になっている。今回氾濫して問題になった多摩川のように、反対運動で建設が難航する場合も多い。

これは地震も同じで、南海トラフ地震の対策を都道府県がやるのはナンセンスだ。地震にも台風にも県境はない。防災インフラは公共財なので、個別の被災地の情報収集や復旧作業は自治体がやるべきだが、防災の意思決定は国が一元的にやることが合理的だ。

今回の台風で、自民党は昔ながらのバラマキ公共事業を復活させようともくろんでいるようだが、大事なのはインフラ整備の費用対効果と優先順位である。地方のインフラを増強するより都市の堤防に投資したほうがいい。その権限は国がもつべきである。

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池田 信夫
アゴラ研究所所長 学術博士(慶應義塾大学)

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