マラソン札幌移転論は東京の敵か?味方か?《現場の混乱と苦悩》

2019年10月23日 19:00

東京都議会議員の川松真一朗(墨田区選出・都議会自民党最年少)です。

「札幌案」急浮上、なぜか都議会自民党が批判される!?

東京都政は新たなマラソン移転の報を受けてざわめいています。IOCや国際陸連(IAAF)がマラソン・競歩を札幌へ持って行きたい意向が強い中で、私たちが今、何が出来るのか連日動いています。

官邸サイト、都知事公式FBより=編集部

折しも、即位礼正殿の儀やラグビーのワールドカップ開催の時期で東京には各界で影響力のある方が集っています。にも関わらず、何故か一部の方々からが都議会自民党が札幌移転を推し進めているかのような雰囲気作りが横行しています。私のポリシーからすると現在進行形の内容については黙っておくべきところですが、敢えて今日は本件について書いていきます。

冒頭にも述べましたが、競技の開催地を最終的に決めるのはIOCでありIAAFです。オリンピックの競技会場として、IAAFの承認を得た上で、さらにIOCの理事会の承認を得て決定するものです。どの競技団体も国際〇〇連盟、世界〇〇連盟のような組織が承認しない事には前に進みません。

このことは、小池知事や顧問団が一番分かっているはずです。小池都政下で行われた3会場見直し。当時は、バレーボール、水泳、ボートの3競技会場の新設をやめて、当初計画以外の地へと小池知事が動いたことがありました。

この時も、国際バレーボール連盟(FIVB)は有明を熱望、国際水泳連盟(FINA)マルクレスク事務総長が都知事と面談して客席減を容認。国際ボート連盟(FISA)ジャンクリストフ・ロラン会長も宮城県長沼への移転を小池知事へ反対しました。小池知事は一見するとカッコいいアイデアを出しましたが、多くの現地民を期待だけさせて国際統括団体との協議はしていなかったのでした。

ここまで都知事はどう動いてきたのか?

今回の札幌開催案浮上までの過程で、IOCやIAAFと都知事がどんな暑さ対策への意見交換をしてきたのかは注目ポイントです。300億円かけた遮熱性舗装は逆効果だと学者に指摘された時、どう動いたのか?

私は少なくとも導入きっかけとなった「瀬古利彦さんの言葉は重いですよね」と主張しています。ちなみに300億円はオリンピックのマラソンコースの為の整備という報道も見えますが、実際には2008年から東京都が進めている事業です。これは東京の中心部センターコアエリアの都道の補修に合わせて塗装をしているものです。強調しておきます。

参考:東京都建設局「2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会に向けた道路の暑さ対策について(舗装の取組み)」

今般、小池知事へのちゃぶ台返しだと騒ぐメディアもあり、その流れで都議会自民党が札幌移転を容認しているかのような雰囲気作りをされている方もいます。小池知事は既に決まっていた豊洲移転をストップさせる決断は「AI」がやったという議論のプロセスなしのちゃぶ台返しを行った実績があります。しかしながら、IOCの動きを見ていると、プロセス無しの「AI」決断はなく、ドーハで行われた世界陸上を検証した結果だという事です。

私自身、ドーハ世界陸上の競歩で金メダルを獲得した2選手の言葉が気になっていました。

20kmの山西利和選手が「湿度は90パーセントにもなる。どの国内大会よりも体へのダメージが大きい。特に内臓、循環器系のダメージが大きかった」。

50キロの鈴木雄介選手は大会から1週間以上経った日本でのメダル獲得報告会見で「まだ内臓疲労を取り切れていない。競技人生の中で最も過酷なレースだった」と答えたのを見て、どれほど大変だったのかとゾッとしました。

競歩50kmは大会2日目の23時30分スタートでした。日本時間ですと9月29日の早朝で上記の会見は10月8日のことです。暑さを考慮した深夜開催にしたのに気温30度以上、湿度70~80パーセントという状態で、本当に暑くなると東京も大変だなと感じたのでした。

ちなみに鈴木選手はレース開始後に抜け出すという大逃げの展開でしたが、そのレース内容を考慮しても相当なダメージだったことが分かります。マラソンも棄権者続出といったニュースに触れた方は少なくないはずです。

IAAFとすれば、この状態がもし東京オリンピックでも起こったら大変だという認識を持ったのは間違いありません。特に、東京の夏は暑い暑いと皆が言うものですから。上に示した競歩のコース図ですが、皇居外苑を周回する設定になっていて、このコースに日陰がないことは以前から指摘されていました。

昨年秋には日本医師会の横倉会長がオリンピック大臣へコースに天幕を張ったらどうだという提案もされていたのです。

私は東京で問題ないと思っているが

昨年の夏頃には、大会準備が深まっていくという時期に「東京の夏場にマラソンをやることはよくない」と主張する長田渚佐さんと議論を展開した事もありました。僕自身は、アスリートはさすがに調整してくるはず。心配なのは沿道の観客だと言っていたのですが、私も自信を無くしたのが世界陸上だったのです。ドーハでは、そのアスリートが調整できなかったとも言える「棄権者続出」という結果になり、私の目論見が間違っていた面があるのは認めざるを得ません。

ただ実際には、水道局を所管する公営企業委員の私ですが、水道局では沿道の各所に水供給装置を配備すべく歩道幅の確認や沿道の空地情報を収集するなどの作業をしているところでもありました。

9月15日に行われたマラソングランドチャンピオンシップ時にも1トンタンクと仮設給水栓を合わせた装置を2か所で配備しました。休憩所として、共立女子大、区立芝公園を選定したのでした。沿道で応援される皆さんの暑さ対策、直射日光対策などが指摘された中で対策していないわけではないのですが、「かぶる傘」のようなもののPRばかりが大きかったのは間違いありません。

さて、一方で小池知事が語っている事に端を発している《私が知らされるのが一番遅かった》騒動についても自民党批判に繋がっています。IOCに「東京は暑さ対策不十分」と思われて最後になったのか、たまたま交渉過程でタイミングを逸していたのかは分かりません。少なくともIOCが対外的に公表する前には小池知事に伝わっていたのは事実です。

仮に小池知事が言う《特定の都議》が「札幌開催に向けて動いてた」「事前に知っていた」という指摘があるならば、《特定の都議》候補を指摘して尋問でもすれば明らかになる真実がそこにあると思います。

絶好の機会を逃した都知事

また、本気で関係各所に東京開催をアピールされたいのならば、先日行われたラグビーワールドカップ準々決勝会場に顔を出されて数分でも都の意向を伝える事が出来たはずです。2020大会組織委員会幹部や関係大臣が一堂に会した中で、東京都知事も出席リストに入っていましたが、突然として、そこにいたのは所管外の副知事でした。

ドタキャンではないというのが都庁側の考え方ですが、基本的にはそこに小池知事が来ると誰もが思っていました。私も含めてそこにいた自民党都議は費用面の課題や準備・警備の課題などでマラソンの札幌開催の不安点を関係各位にお伝えている事も強調しておきます。但し、大原則として会場決定の権限についてはIOC、IAAFが肝ですが、そこへ交渉していくチャンネルを増やそうと思うのは自然だと考えます。

その一方で、都議会では「オリンピック・パラリンピック及びラグビーワールドカップ推進対策特別委員会(以下オリパラ委員会)」の特別委員長が21日に委員会理事会を開催したいと各会派に呼び掛けていました。20日の時点で、私も我が党の吉原副委員長から聞いていました。

ところが、本件について、21日の本会議場で某都議から「あのハンコ文書は何なの?自民党はそれでいいのか?」と聞かれて、私は「???」。この後に衝撃の事実が発覚するのです。

都議会自民党に仕掛けられた文書

それは、都議会オリパラ委員会に所属する自民党を除く全議員が押印された「特別委員会招集請求について」という文書が委員長に提出されていたのです。その後、理事会は開会されましたが「特別委員会招集請求の取り下げについて」という文書が出されたとの事です。両方とも21日付です。本日、この文書を私が入手したのでここで公開させて頂きたいと思います。

「特別委員会招集請求について」の文書

「特別委員会招集請求の取り下げについて」の文書

招集請求については、自民党に呼び掛けること無く、委員長に出された文書です。仮に「自民党も賛同しますか?」と声を掛けられた上で、自民党議員が抜けているのではなくて、全く存在も知りませんでした。数の力で押し切ろうとしたのでしょうか?

>この理事会開会前に、同文書に名を連ねる与党会派議員がツイッターで「30日の調整委員会までに自民が委員会を開くことに応じてくれるかどうかが焦点。自民の意向を理事会で確認します」と呟いていたのです。

外堀を埋めて、あたかも自民党だけが札幌移動に係る委員会開催を妨害しているかのような印象操作を行う行動に断固抗議し、ここに名前が挙がっている全議員の都議としての矜持を問うものです。自民党は委員会開催に否定はしていません。

ただし、特別委員会は理事者(東京都庁役人)からの報告を受けて質疑するものです。現時点で、都として「何を議会に報告するのか?」という大前提に立っていただけです。何でもいいから委員会を開けということこそ中身の無いパフォーマンスだと言わざるを得ません。

もし、開催するならば30日から行われる調整委員会のやり取りを見てからでないと役人と何を議論することがないわけです。私からすれば、調整委員会前の開催ならば、小池知事が出席して、どう交渉するかを議論するのであるなら意味があると考えます。

その一方で、東京都がマラソン開催時間変更を検討し、関係機関に伝えているという報道が出ました。委員会を開催するかを協議する理事会が展開されている時に水面下折衝が行われていたようです。

【独自】東京都「スタート時間変更」を提案 五輪マラソンでIOCに(FNNニュース)

これまで、何かと都議会自民党は「小池都政への妨害だ、怨念だ」とレッテルを貼られてきました。色々な面で、小池知事の間違った方向への進行を正常な道へ修正してきたのは私達です。イメージ先行で悪者にされていますが、現実論を訴えて各調整をしているのは与党会派ではないのです。

私たちは東京でのマラソン沿道各自治体の皆さん方の意見も聞いています。かく言う私も地元墨田区へマラソンコースを誘致したいと先頭に立って動いてきた身ですから、そのあたりの状況、気持ちが痛いほど分かります。

札幌移転論は東京の敵なのか?

先にも挙げましたが、マラソンは生死に関わる可能性がある。その視点で考えれば、ドーハは一つの教訓となります。但し、東京都市開催ということで、マラソンその他の準備を進めてきている立場からすると東京開催は死守したいのは当然です。

どちらのウエイトが大きいのかと聞かれれば、どちらを選ぶにしても苦しい決断になります。マラソン選手の現場から時間変更などの提案もあり、実際に東京都も検討されているようですが、熱帯夜の時はずっと暑くて、寝苦しくて皆眠れないですよね。家の中はクーラーあるかもしれませんが、外は常にモワっとしているのは事実です。

こういうことを言うと、私に対して「東京の敵だ」というメッセージがばんばんきますが、暑さ対策が中途半端な中でのマラソン競技の中で「もし事故があったら」それこそ東京都のイメージは急落します。私は東京都にとってベストな方策を探ります。

なお、都議会の理事会は秘密会というルールになっており、公開されていませんし議事録も残りません。当該文書が、委員長より事前に何の説明もなく理事会机上に置かれていたこと。ならびに回収されなかったこと。都議会議員一人一人が名前を出して押印までされた文書であること

…などの観点から、取り扱いを検討しました。理事会で決定したことを委員長がマスコミに話したことを受けて、再度、秘密会の考え方を確認し、あくまで協議内容(誰が何を話したかといった)は秘密にされる原則であるという認識で、当該文書を広く皆様にお示しさせて頂くこととしました。

川松 真一朗  東京都議会議員(墨田区選出、自由民主党)
1980年生まれ。墨田区立両国小中、都立両国高、日本大学を経てテレビ朝日にアナウンサーとして入社。スポーツ番組等を担当。2011年、テレビ朝日を退社し、2013年都議選で初当選(現在2期目)。オフィシャルサイトTwitter「@kawamatsushin16」

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川松 真一朗
東京都議会議員(自由民主党、墨田区選出)

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