今こそ大戦略が必要な日本の災害リスク軽減対策

藤原 かずえ

NASAから引用

2019年10月の【台風19号 Hagibis】は日本各地に深刻な損害を与えました。

日本気象協会
台風19号は10月6日午前3時、南鳥島近海で発生しました。発達しながら西よりに進み、一時は「大型で猛烈な」勢力に。進路を次第に北よりに変え、日本の南を北上し、10月12日午後7時頃に「大型で強い」勢力を保ったまま、伊豆半島に上陸しました。その後、関東地方を縦断して、13日正午に日本の東で温帯低気圧に変わりました。大量の水蒸気を含んだ状態で上陸したため、東海から東北を中心に広い範囲で記録的な大雨や暴風、高潮となり、複数の河川が氾濫するなど列島に大きな爪痕が残りました。

戦後まもなくの日本において、豪雨災害は最も深刻な被害を定常的に与える自然災害でしたが、徹底的な治水対策により1980年代半ばまでに犠牲者が激減しました。

我が国における昭和20年以降の主な自然災害の状況(内閣府)

しかしながら、2000年代半ばからゲリラ豪雨の発生がしばしば指摘されるようになり、その後に線状降水帯を伴う平成24年7月豪雨(九州北部他)、平成26年8月豪雨(広島県他)、平成27年9月豪雨(関東・東北他)、平成29年7月豪雨(九州北部他)、平成30年7月豪雨(岡山県他)、そして今回発生した台風19号の豪雨(長野県・関東・東北他)といったように、多くの人命を奪いインフラに大損害を与える記録的な豪雨が毎年のように発生するようになりました。

これらの豪雨の素因として、日本近海の海域海面水温の長期上昇トレンドが指摘されています(産経ニュース)。地球温暖化との関係は明確ではないものの、既存のインフラでは防御困難な、日本国民の安寧な生活を脅かす過酷な豪雨災害がほぼ毎年発生していることは紛れもない事実です。このような状況に対して行政は抜本的な災害対策を【大戦略 grand strategy】の下に論理的に講じる必要があると考えます。

日本近海の全海域平均海面水温(年平均)の平年差の推移[気象庁]

豪雨による災害を引き起こす主たる自然現象、すなわち豪雨災害の【ハザード hazard】には、主として降雨による過度の表面水の発生に伴う【洪水 flood】、地盤内の間隙水圧の上昇に伴う【斜面崩壊 collapse】【地すべり landslide】などの【斜面破壊 slope failure】、そしてその崩壊土砂が水流に乗って移動することによる【土石流 debris flow】などがあります。

これらは、地球表層における通常の営みであり、その発生を完全に抑止することはできません。したがって、行政ができることは、その営みが私達に及ぼす【災害リスク disaster risk】を限られた費用で効率的に【軽減 mitigation】することです。このことは文字通り【災害リスク軽減 disaster risk mitigation】と呼ばれます。

さて、日本は自然災害が多く国民が大きな災害リスクに晒されているにも拘わらず、そのリスクを軽減する災害対策の基本的概念とその適用限界に関する根本的な教育が十分であるとは言えません。そしてこの教育の不徹底こそが、国民を巻き込んだ災害リスク軽減に関する政策議論を困難にしているものと考えられます。本記事では、豪雨災害のうち洪水の対策を例にとって、災害リスク軽減のための本質的な方法論について考えてみたいと思います。

災害リスクと災害対策

ハザードに伴う【リスク risk】とは、ハザードの【発生確率 probability】にハザードによる【損害 damage】を乗じたものです。

[リスク]=[ハザードに遭遇する確率]×[ハザードによる損害]

自然災害というハザードに伴う個人の損害とは個人の生命及び財産の損害であり、これは既に各個人に与えられている条件なので、個人の災害リスクを軽減するということは、個人が災害に遭遇する確率を低下させることに他なりません。

個人が災害に遭遇する確率を低下させる【対策 countermeasures】の【戦略 strategy】としては、ハザードが発生しても遭遇しないようにする【回避 avoidance】とハザード自体の発生を抑える【予防 prevention】があります。

このうち回避の【作戦 operation】には、特定の期間に限って災害場所から離れる【避難 emergency evacuation】と全期間を通じて災害場所から離れる【立入制限 off-limits declaration】があります。一方、予防の作戦には、ハザードの発生自体を阻止する【抑止 restrain】とハザードの発生要因を制御する【抑制 control】があります。以下、洪水というハザードに対する各対策について、その目的と限界を述べるとともに、克服すべきポイントについて述べたいと思います。

災害回避

■避難

避難は、特定の期間にハザードが発生する場所から離れてハザードとの遭遇を回避するものです。災害をもたらすハザードは特定の時刻(時間的位置)に特定の場所(空間的位置)で発生する【時空間的事象 spatio-temporal events】です。

したがって、ハザードの時刻と場所を特定できれば、その時刻に別の場所に移動する「避難」によって回避することができます。問題は洪水というハザードが、河川水位の時空間分布、予防インフラの空間分布、降雨量の時空間分布などの不確定要素を含むコントローリング・ファクターによって決定される【不確定事象 uncertain event】であるため、その時刻と場所を【決定論的 deterministic】に特定できないことにあります。すなわちハザードの時刻と場所は、【確率統計学的 stochastic】に推定するしかなく、国民は専門家の【予報 forecast】を参考にして独自の判断で避難することになります。

ここで、ハザードの発生予測において、予測と実測の関係は次の4つのパターンのいずれかとなります。

(A) 的中:ハザード発生を予測→実際にハザード発生
(B) 空振り:ハザード発生を予測→実際にはハザード未発生
(C) 見逃し:ハザード未発生を予測→実際にはハザード発生
(D) 外れ:ハザード未発生を予測→実際にハザード未発生

国民は過去の経験により、ハザードの【的中率】=A/(A+B)、【空振り率】=B/(A+B)、【見逃し率】=C/(A+C)を感覚的に取得して避難の可否を判断しています。しかしながら、統計値の母数であるA+Bは統計的な有意性が確保されるほど大きな数字ではなく、このような素人判断は、自分だけは大丈夫と信じてしまう【正常化バイアス normalcy bias】に陥る恐れがあります。

行政に必要なのは、ハザードの的中率を向上させ、空振り率と見逃し率を低下させることで国民からの信頼を得て避難行動を喚起することです。技術的には、空振り回数と見逃し回数が最小のときに最大となる【スレットスコア threat score】=A/(A+B+C)という評価関数を最大化するような避難基準を策定することが重要です。

勿論、【物理モデル physical model】あるいは【統計モデル statistical model】によるリアルタイムの【時空間シミュレーション spatio-temporal simulation】も極めて重要であり、スパコンを用いることで逐次得られる気象観測の時空間データから河川水位の時空間分布を逐次将来予測し、地域の防災無線やインターネットを使ってより確度の高い情報を自動的に国民に周知するシステムの構築が望まれるところです。

一方で、国民に必要なのは確度の高い情報の能動的な取得です。標高でコンターを描く洪水の【ハザードマップ hazard map】は当然のことながら見逃し率が低く、洪水からの避難にあたって、最も有用な確定的な空間情報です。この情報に基づき躊躇なく避難を繰り返せば少なくとも人命を落とすリスクを低減できます。しかしながら、家屋や農園等の移動不可能な財産(いわゆる不動産)については、避難させることは不可能であり、人間が守ることもできません。

時に一部の国民はこのような財産を心配して避難を躊躇してしまう不合理な行動に出ることも少なくありません。これは典型的な【サンク・コストの誤謬 sunk cost fallacy】です。避難によって生命リスクを低減することができる一方で、不動産などの移動不可能な財産の損失リスクを低減することはできないことを国民は強く認識する必要があります

■立入制限

立入制限は、高ハザード区域について、平時から、あるいは特定の期間に入場を制限するという方策です。これは必ずしも公的機関による命令のみではなく、自主的な立入制限も含みます。これによりハザードから人命を確実に守ることができます。

問題は高ハザード区域に存在する不動産です。基本的に高ハザード区域の不動産を守るには、個人では負担不可能な莫大なコストをかけてハザードの「抑止」あるいは「抑制」を行うことが必要となります。当然のことながら、個人の資産に対する損害については、基本的に個人が負担するのが原則であり、大量の公金の支出によってゼロリスクの予防を実現することは必ずしも公正ではありません。

このような原則を考えた場合、高ハザード区域に今後新規に投入される不動産については、例えば、すべての不動産に対する災害保険への加入の義務化、住居用建築に対する安全性確保の義務化、災害の被害認定の制限等を所有者に課すことで、高ハザード区域の無人化・無利用化を促進することが重要であると考えます。

このことは、投資なしに顕著なリスク低下を効果的に実現するため、最も優先すべき政策です。居住者が居住地に対して愛着を持つのは自然な感情ですが、その感情を大事にするあまり、たった一つの命や人生で得た大切な財産をリスクに晒し続けるのは合理的とは言えません。

もちろん人間には自由権があり、居住の自由は尊重されなければなりません。ただ、その自由を行使するにあたって発生する災害リスクの対策については、自己責任を前提とすべきです。

なお、例えば、土地の大部分が高ハザード区域に指定されていると同時に莫大な不動産を内在している東京都江戸川区や台東区のような既存の人口密集地(高災害リスク区域)において、立入制限をするのは事実上不可能であり、避難にも限界があります。このような場合には、多くのコストをかけて抑止・抑制による災害予防をすることが必要となります。

災害予防

■抑止

洪水を抑止する主たる方法は河川堤防のかさ上げと強化です。河川堤防の設計においては、想定される河川の最高水位を基に計画高水位(堤防が抑止可能な河川の水位)が決定されますが、近年の豪雨のようにその想定を十分に超える降雨量が発生した場合には越流・決壊し、洪水が発生することになります。

基本的に河川水は動圧と静圧をもつ流体であるため、線状構造物である堤防のうち、最も高さが低い区間を越流し、最も抵抗力が低い区間を浸透破壊します。問題は、構造物の計画段階においてそのような区間がどこに位置しているかを確実に特定することが困難であるということです。

降雨の強度は空間的に一様でなく、しかも時間とともに変化するので、事前に河川水位の時空間分布を正確に得ることは不可能です。このため、様々な降雨の時空間パターンを想定(例えば、台風第19号の降水量の時空間分布に【安全率 safety factor】を乗じたもの)し、物理モデルあるいは統計モデルを用いることによって実施する時空間にわたる【モンテカルロ・シミュレーション Monte Carlo simulation】をベースとする【リスク解析 risk analysis】を行うことで、クリティカルな脆弱部を把握することが重要となります。

特に、近年多いのは本川と支川の合流部、あるいは河川の狭窄部の上流部で水位上昇が起こる【バックウォーター backwater】の関与による堤防決壊です。本川の堤防に比べて支川の堤防は脆弱なことも多く、本川と支川の合流部では支川側での堤防決壊が多く認められます。

いずれにしても国立研究開発法人土木研究所は、特定の流路形態を再現できる3次元格子ボルツマン法等の水理解析と粒状体で構成される堤防の浸透破壊を再現できる3次元個別要素法等の力学解析を連成させることによりリアリスティックな設計値を得る解析スキームを確立して、個別の問題に対処する必要があります。スパコンを使えばできるはずです。

既存の河川堤防がこれまでの想定以上の河川流量に抵抗するためには、堤防を高くして強化する工事が必要となります。さらに、河川堤防は長大な線状構造物であるため、特定箇所だけを改修するだけでは不十分です。

上述したように、動圧と静圧をもつ流体である河川水は、一つの区間を改修すると、それを嘲笑うかのように、いとも簡単に次の破壊ターゲットを見つけて攻撃してくるからです(無機物は思考能力を持っていません。比喩です。念のため)。場合によっては、堤防全体の改修が必要になる可能性もあります。これには極めて多くの時間と労力を要します。

このような場合に有効な方策が、ダム等によってピークの流量を抑制する(遅らせる)こと、あるいは河川幅を拡張することで河川水位を下げることです。これが次に述べる抑制です。

■抑制

ダムは河川の水流の一部を一時的に貯める構造物であり、これによって下流の河川流量を一時的に低減します。これは、豪雨の前に事前放流によって可能な限り貯水位を下げておき、豪雨時に発生した増水を貯水するという操作によるものです。

間違いやすいのですが、ダムは水流を抑止する構造物ではなく、遅延させる構造物です。豪雨時に貯水機能が限界に達すると徐々に放流量を増やして行き、最終的に流入量と同量を放流することでダムが存在しない自然状態の流れに戻します。この操作は「緊急放流」と呼ばれます。緊急放流が下流に損害を与えたとするのは誤りであり、ダムの貯水機能が限界に達して自然状態に戻ったと考えるのが公正です。ダムは緊急放流まで下流の河川流量を確実に減らしているのです。

もう一つ間違いやすいことは、ダムは緊急放流の操作をする前にも平時の流量分だけ放流を続けています。ダムは平時の流量を超えた増水分を貯めることで流量を抑制しているのです。なお、緊急放流については、アゴラで川松真一朗東京都議会議員と加藤拓磨中野区議会議員がわかりやすく丁寧に説明されていますので是非ご参照下さい。

・ダムで行われた緊急放流の役目とは:開業前の八ッ場ダムも活躍
・緊急放流、八ッ場ダム…今こそ「治水」を語ろう
・一部議員でも錯覚。緊急放流は危険を回避するための方法だ
・元国交省職員として言いたい!緊急放流に至るギリギリの判断

下流の河川堤防の計画高水位は個々のダムが豪雨時の河川流量を一時的に低減することを前提にして想定されています。しかしながら、近年の豪雨は記録的であり、ダムの貯水容量を同時多発的に上回るような状況が発生しています。このような状況に対応するには、ダム管理者の事前放流の権限強化と計画規模を超える洪水時のただし書き操作の高度化が重要なキーポイントです。

何を言っているかといえば、集水域の高度な気象予測に基づき操作の無駄を可能な限り排除してダムの貯水機能を最大限に利用するということです。特に過去から現在に至っても解決できていない問題が、渇水被害リスクを過度に恐れるあまり事前放流を抑制してしまうことです。当然のことながら、事前放流を抑制すると、それだけ豪雨時の貯水容量が減少してしまいます。

この問題を本質的に解消するには、流域の利水権者との調整と社会的理解が必要になります。数学的に言えば、渇水リスクと洪水リスクを考慮した対策のポートフォリオをどのように河川の流域社会で構成するかという最適化問題であると言えます。声の大きい水利権者に一時的に負の経済効果をもたらす渇水リスクを重視し、声の小さい一般国民に不可逆的な損害を与える洪水リスクを軽視する現在の状況は必ずしも合理的ではありません。ダム建設にある程度のリードタイムが必要な中、既存のダムの効率的運用こそが極めて重要になってきます。

ダム以外の代表的な抑制工としては河川幅の拡幅と河川変更があります。河川幅の拡幅は河川水位を低下させることができる有効な対策です。ただし、この対策を実現するには、河川周辺住民の理解と協力が大前提となります。本川と支流の合流地点で発生するバックウォーター現象に対しては、合流点を有利な位置に付け替えるなど、流況に応じた河川改修が有効です。例えば、合流点を本川の下流側に付け替えて水を流れやすくする工事によって水位を数メートル下げる効果が期待されるケースもあります。

なお、注意が必要なのは、しばしば話題になる森林の保水力は、豪雨時にはまったく機能しないことです。森林の表層部には確かに細かい間隙が存在し、降雨時以外には不飽和帯として水を吸収する機能があります。しかしながら100~200mm程度の降雨があると不飽和帯は水で満たされてしまうためにそれ以上の貯留は不可能になります。

すなわち、大洪水が発生するような豪雨時にはいわゆる「緑のダム」が流水を効果的に吸収することはありません。このメカニズムは実験的に明らかになっており(例えば、森林総合研究所国交省・林の保水力の共同検証)、森林の保水力が豪雨時の洪水防止に有効という説は聞きかじりの無責任な俗説に過ぎません。むしろ森林の保水力は河川に渇水に悪影響を及ぼすことが指摘されています(国交省)。

ダム建設か河川改修か

さて、抑制工であるダムの建設と抑止工/抑制工である河川堤防の改修のどちらを選択するかについては、当然のことながらライフサイクルコストを含めたすべての費用とデリヴァリーを含めたすべての便益が考慮された【費用便益比 B/C】によります。治水は全インフラによる時空間にわたる軽減効果がネストして機能するものです。重要なのは、この判断を権力者や担当者の政治的な意図に起因する根拠のない思い込みに委ねてはならないということです。

公正な判断にあたっては、従来のような【理論解析 theoretical analysis】はほとんど無意味であり、スパコンを利用した【数値解析 numerical analysis】を行うことが必要です。具体的には、先述したモンテカルロ・シミュレーションによって河川のクリティカルな脆弱部を確率統計学的に把握した上で、この脆弱部を解消するにあたって、河川改修が有利なのか、ダム建設が有利なのかを同様のシミュレーションで得られるリスクの空間分布から個別に判定するのが最も論理的です。当然のことながら「ダム建設よりも河川改修がよい」「河川改修よりダム建設がよい」という一般論はありません。

いずれにしても、これらの対策には国民の理解と協力が大前提となります。実際問題として、日本のような自由主義国家においては、しばしばこの点が災害対策で最も難度が高い障壁となります。

なお、空間リスク解析を行うまでもなく、八ッ場ダムの建設は抑制の「作戦」上必要な【戦術 tactics】でした。次の図は利根川上流部のダムの位置図です。吾妻川は広い集水域があるにも拘わらず洪水調節用ダムがない一級河川でした。

利根川上流域のダム位置図(国交省関東地方整備局作成図面から編図)

河川流量は大局的に集水面積に比例するので、事業中止は、流量緩和能力の空間的不均質性を放置するというリスク管理上あり得ない愚かな選択であったと言えます。勿論、この影響は下流にまで及びます。

1都5県知事共同声明参考資料

災害リスク軽減の大戦略

洪水リスクを軽減するための【大戦略 grand strategy】は、戦略研究者の奥山真司先生が【一般化 generalization】されている【戦略の階層 The Hierarchy of Strategy】の概念で説明することができます。

戦略の階層(奥山真司先生)

すなわち洪水リスク軽減の大戦略は「回避」「防止」等の【軍事戦略 military strategy】における「避難」「立入禁止」「抑止」「抑制」等の【作戦 operation】を実現するための「河川改修」「ダム建設」等の【戦術 tactics】で構成され、これらは「時空間シミュレーション」「放流操作」等の【技術 technology】によって支えられています。そして、これらの戦略の集合体は、洪水災害のみならず災害一般に適用することが可能です。

今回は洪水被害のみに着目しましたが、実際にはすべての災害に対して同様の戦略の集合体でリスク軽減が行われています。例えば斜面災害については、土砂災害警戒情報による「避難」、立入禁止区域の設定による「立入制限」、擁壁・アンカー・ロックボルト・吹付による「抑止」、盛土・水抜き孔による「抑制」がこれにあたります。また、災害の種類によって各戦略の重要度は異なります。例えば、地震災害に対しては耐震などの「抑止」「抑制」、火山災害に対しては、「避難」が最も大きなポイントになります。

重要なのは、どの戦略をどう使っていくかの大戦略であり、これには積み上げられてきた数値的な根拠とともに、主権者である国民の【世界観 vision】が重要な意味を持ちます。そして世界観と大戦略の間を【政策 policy】として論理的に調整するのが政治の役割になります。

この戦略の階層を機能させる【リアリスト】こそが今日本に求められるところです。


編集部より:この記事は「マスメディア報道のメソドロジー」2019年10月27日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はマスメディア報道のメソドロジーをご覧ください