日経新聞で柳川範之東大教授が、大学の卒業を待たずに就職し、10年の間に必要な学位を修得して卒業する仕組みを提案しています。
独学で大学を卒業して教授になったパンクな柳川さんらしい構想で、ぼくも膝をポンポンポンと打ちました。
柳川さんは言います。
大学生の時にもっと勉強しておけば良かったと後悔する声をよく聞くが、それは勉強する時期が適切ではなく、経済・法学などは社会経験のない若者にはリアリティーもない。実社会に出て初めてその学問の意義や重要性に気がつく。
だから、早く就職し、そこから必要に応じて学ぶ。
単位修得は入学後10年間有効としておき、就職後も必要になったときに単位を履修できるようにしておく。企業も早く採用をする代わりにそのような学業の時間を認め、卒業を目指させることにする。
実にいい。
ぼくはパンクロック三昧で授業というものに出席しませんでした。
それでも卒業できる(日本で唯一と言われていた)学部を選びました。
もちろん、罰は食らいます。
就活で受けた会社、全て落ちました。
日銀、都銀、証券、電電公社、KDD、広告などなど全部落ちました。
一次、というか、喫茶店で落ちたこと多数。
な~んも勉強してませんからね。
ただ一つ、日本開発銀行(現 政策投資銀行)は最終面接まで行き、落ちました。
この就活1か月ほどの間に、それまでの大学4年間で得たもの全てを上回ることを学びました。
濃密に。強烈に。
社会で活躍する大勢の大人たちに、優しく、厳しく接してもらい、自分の未熟さを突きつけられ、かく汗の量を求められ、頬を張られ、覚醒したかんじ。
こらあかんわ。
マジで進路を考えました。
表現、今でいうコンテンツ、そしてメディアに関わろう。
その大将は誰だ。
ルール作っているヤツだ。
どうやら郵政省というところだ。
そう思いたち、留年して公務員試験の勉強を始め、翌年なんとか補欠で郵政省に潜り込んだ次第です。
就活、全部落としてくださり、心から感謝しています。
ありがとうございました。
あの時、銀行なりどこなり通っていたら、素直に入社して、違う道に進んでいたでしょう。
その後、自分のやりたいことを見つけて、失敗したと落ち込んだことでしょう。
だけど、本当に勉強したのは、社会人になってから。
経済学部を出たものの、そんなの役に立ちません。
まず法律。
配属先の上司が、1週間後に公衆電気通信法の試験をするという。1週間で丸暗記。
次に、成立したばかりの電気通信事業法の試験をするという。1週間で丸暗記。
そして担わされたプロジェクトが自動翻訳電話の開発。
人工知能です。
学者集めて報告書を作る。
電子工学やら認知科学やら、最初何もわからんが、片っ端から読んで読んで聞いて聞いて勉強の連続です。
そして、そんなことがその後もずっと続く。
であれば、もっと早くから、社会の大人たちに触れ、自分に必要となることを知り、大学などの場で真剣に学んでいく。
その仕組のほうがライフ・ビジネススタイルにも合う。
この柳川プランはどうすれば実装できるでしょう。
4年の学費をもらいつつ、10年の猶予を渡し、その間に単位を取れば卒業証書を渡す。
それは日本の制度では難しいのかな?
ぼくが準備するiUで導入するなんて勝手なことはできないのかな?
だけどそろそろ、大学としてスキームを準備しなくてもよいのかもしれぬ。
MOOCs等で教授や研究室が単位を任意に認定してやり、ブロックチェーンで管理する。
この枠組みに賛同するトップ級のかたがたが委員会を組織し、卒業を認定してやる。
「超大学」です。
これならできるかも。
どうでしょう柳川さん?
編集部より:このブログは「中村伊知哉氏のブログ」2019年10月28日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はIchiya Nakamuraをご覧ください。