共産党との共闘は立憲・国民両党にとって「自殺行為」

2019年10月31日 06:00

日本共産党提唱「野党連合政権」共闘の呼びかけ

日本共産党は、安倍自民党政権打倒を目指して、打倒後の政権構想である「野党連合政権」の樹立を提唱し、消費税5%への減税を重点政策として、日本維新の会を除く野党各党に「共闘」を呼びかけている。

日本記者クラブHP(2017年10月衆院選党首討論会)より

しかし、これまでのところ、共産党との「共闘」の合意に応じたのは「れいわ新選組」(前参議院議員山本太郎代表)と社民党だけである。社民党は「共闘」の合意はしたが、「野党連合政権」までは合意していない。立憲、国民の両党は、いまだ「共闘」の合意に至らず、もとより「野党連合政権」の合意もしていない。

マルクス・レーニン主義信奉の「革命政党」である日本共産党

日本共産党は、マルクス・レーニン主義(科学的社会主義)を理論的基礎とし(党規約2条)、社会主義・共産主義革命を目指す「革命政党」である(※1)。したがって、政治的には「プロレタリアート独裁」(共産党一党独裁)の樹立であり(※2)、経済的には「生産手段の社会化」(大企業の国有化)による計画経済である(※3)。即ち、旧ソ連、中国の社会主義・共産主義の体制と基本的には異ならない。

「プロレタリアート独裁」とは、資本主義と共産主義の過渡期の国家がプロレタリアート独裁であり(マルクス著「ゴーダ綱領批判」)、共産党批判は一切許されず、反革命分子と見做せば、「人民の敵」として、暴力で徹底的に弾圧し抹殺する労働者階級の権力である(※4)。したがって、欧米先進諸国や日本などの、議会制民主主義、三権分立、法の支配、基本的人権、言論の自由などの「自由民主主義」の価値観とは絶対に相容れない共産党一党独裁である(2019年9月4日付け「アゴラ」掲載拙稿「日本共産党は生き残れるか」参照)。

また、生産手段の社会化による計画経済は、共産党官僚及び国家官僚であるノーメンクラツーラ(※5)が生産・流通・分配を全面的に支配し、国有企業間および海外企業との競争原理が働かないため、労働生産性及び国際競争力が低下し、マイナス成長、企業業績悪化、失業、賃金低下、経常収支悪化、税収減、福祉予算削減など、国民経済に深刻な打撃を与える。このことは、旧西ドイツと旧東ドイツ、韓国と北朝鮮の大きな経済格差を見れば一目瞭然である(2019年9月26日付け「アゴラ」掲載拙稿「日本共産党は日本の大企業を国有化するつもりか」参照)。

皇室(天皇制)の廃止を目指す日本共産党

日本共産党は、皇室(天皇制)は民主主義に反するなどとして、その廃止を目指している(※6)。その背景には、「共産主義」は唯一絶対の真理であり権威であるから、皇室(天皇制)という他の権威の存在を許さない絶対主義的イデオロギーが存在する。共産党は10月22日の天皇陛下即位儀式にも欠席した。皇室を反民主主義というならば、英国やベルギー、オランダなども反民主主義国家になる。筆者はかねがね皇室は自由社会のシンボルでもあると考えている。

マルクスの「宗教はアヘンである」(マルクス著「ヘーゲル法哲学批判・序説」)との宣言も、「共産主義」が宗教という他の権威の存在を許さないからである。旧ソ連や中国が宗教を厳しく弾圧したのは歴史的事実である。宗教という他の権威の存在を認めると、共産党一党独裁、即ち、共産党による国民に対する全面的支配が著しく困難になるからである。

「統一戦線戦術」の手段としての野党共闘

日本共産党が、他の野党に「野党連合政権」の樹立を提唱し、「共闘」を呼びかける目的は、「一致点での共闘」を通じて、可及的速やかに共産党主導の統一戦線の政府である「民主連合政府」を実現するためである(※7)。

「民主連合政府」では、自衛隊の解消と日米安保条約の廃棄を行い、「平和・中立・非同盟」の道を進むとされる(※8 )。これは、旧日本社会党の「非武装中立論」(※9)に近く、北朝鮮の核・弾道ミサイル開発、核保有国中国の軍拡と軍事的覇権など、北東アジアの緊迫する安全保障環境を考えれば、日本の存立と日本国民の生命にかかわる安全保障上重大な危険を招く極めて非現実的な政策である。

「統一戦線戦術」は、戦前コミンテルン(国際共産党)が提唱した戦術であり、社会主義革命のための「常套手段」である。ロシア革命の「労農同盟」(※10)、中国革命の「国共合作」(毛沢東著「国共合作成立後の差し迫った任務」「抗日根拠地の政権問題」毛沢東選集第2巻)が有名である(2019年9月18日付け「アゴラ」掲載拙稿「共産党の本気の共闘は民主連合政府・社会主義日本への道」参照)。

立憲・国民両党は「北欧型福祉国家」実現を目指せ

立憲・国民の両党は、「社会民主主義」政党として、日本におけるスウエーデンなど「北欧型福祉国家」の実現を目指すべきである。スウエーデンは「生産過程は資本主義的競争原理で高い生産性を維持しながら、分配過程は社会主義的な平等原理で徹底的な所得再分配をする国」(※11)とされている。

立憲民主党、国民民主党の両サイトより:編集部

これは自由民主主義政党である自民党とは、政治理念・政治路線や、あるべき国の形を異にする。立憲・国民の両党は、英国の労働党や米国の民主党に近い政治理念・政治路線であること、及び、日本における「北欧型福祉国家」の実現を目指す政党であることを明確に打ち出すべきである。

旧民主党政権が提唱し進めた人口減少・少子化対策・社会福祉対策としての、「子供手当制度」や「幼児・中等・高等教育費無償制度」は優れた政策であり、現在では自民党もこれを取り入れ進めている。「農家個別所得保障制度」なども、自民党は農業政策として、おおむね取り入れている。このように旧民主党の「分配政策」は評価できるものであった。

しかし、遺憾ながら、「分配政策」の財源を生むための「金融・財政政策」や「経済成長戦略」による経済発展において、「アベノミクス」に匹敵する有効適切な経済政策が存在しなかった。これが旧民主党政権崩壊の主たる原因と言えよう。

そのうえ、旧民主党は、国の存立と国民の生命にかかわる「外交安全保障政策」において国民に不安を与えた。海上保安庁巡視船と中国船衝突事件への対応や、鳩山首相の最低でも県外発言、米国との同盟関係の動揺などである。

したがって、立憲・国民の両党が、政権に復帰するためには、日本における「北欧型福祉国家の実現」という夢のある具体的な長期ビジョンを国民に提示して理解を求め、かつ、国民が安心できる外交安全保障政策及び「アベノミクス」を凌駕する有効適切な経済財政金融成長戦略を練り上げる必要がある。

その意味では、折角日米同盟関係が強化されたにもかかわらず、これを後戻りさせる「安保法制廃止」は論外である。立憲・国民両党が政権を目指すならば、外交安全保障政策は「水際まで」にとどめ、いたずらに政争の具に供すべきではない。

共産党との共闘は、立憲・国民にとって「自殺行為」

前記の通り、共産党による「野党連合政権」樹立への「共闘」の呼びかけは、共産党主導の「民主連合政府」実現のための「統一戦線戦術」に他ならない。もしも、立憲、国民両党がこれに応じれば、図らずも「民主連合政府」の実現に協力することになる。

これは、共産党とは全く基本理念が異なり、外交・安保などの基本政策も異なる「社会民主主義」政党である立憲・国民両党にとっては、まさに「自殺行為」である(2019年8月30日付け「アゴラ」掲載拙稿「極めて危険な日本共産党提唱の野党連合政権」参照)。

日本国民の間では、現在も「共産党アレルギー」が根強く存在する。これは、戦後共産党による「火炎瓶事件」「交番襲撃事件」「山村工作隊」「中核自衛隊」などの極左冒険主義的暴力革命路線や、「敵の出方論」なる暴力革命の肯定、党最高指導者の独裁を生む「民主集中制」、プロレタリアート独裁の名による「共産党一党独裁」、さらには旧ソ連、中国、北朝鮮など、共産主義国家における大量粛清、銃殺、強制収容所、人権侵害、言論弾圧などに対する日本国民の恐怖心が今も消えず、根強い「共産党アレルギー」になっているからである。

最近では香港、ウイグル、チベット問題が、改めて日本国民に中国共産党に対する「恐怖心」や「警戒心」を与えている。

自民党大阪府連は、2019年4月の統一地方選で、「大阪都構想」を争点とする知事選及び市長選において、自民党推薦候補が共産党から自主支援を受け、大阪維新の会公認候補と戦ったが、いずれも大差で敗北した。出口調査では自民党支持層の50%前後が維新候補に投票したことが判明した。「共産党アレルギー」が明らかに影響している。

立憲・国民の両党にとっても重要な教訓とすべきである。安易に共産党の組織力に依存すれば、共産党の狙いである「統一戦線戦術」に陥ることに十分留意すべきである。

加藤 成一(かとう  せいいち)元弁護士(弁護士資格保有者)
神戸大学法学部卒業。司法試験及び国家公務員採用上級甲種法律職試験合格。最高裁判所司法研修所司法修習生終了。元日本弁護士連合会代議員。弁護士実務経験30年。ライフワークは外交安全保障研究。

【出典一覧】
※1 党綱領五=15
※2 党綱領五=16「社会主義を目指す権力」。不破哲三著「人民的議会主義」1970年新日本出版社
※3 党綱領五=15・16。上田耕一郎著「社会主義=その理論と展望」1986年新日本出版社
※4 レーニン著「国家と革命」、スターリン著「レーニン主義の基礎」
※5 ミハイル・S・ボスレンスキー著「ノーメンクラツーラ=ソビエトの赤い貴族」1981年中央公論社
※6 党綱領四=12
※7 党綱領四=13。上田耕一郎著「先進国革命の理論」1973年大月書店
※8 党綱領四=12。不破哲三・井上ひさし著「新日本共産党宣言」1999年光文社
※9 石橋政嗣著「非武装中立論」2006年明石書店
※10 レーニン著「民主主義革命における社会民主党の二つの戦術」
※11 岡沢憲芙著「スウエーデンの挑戦」1992年岩波新書

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加藤 成一
元弁護士(弁護士資格保有者)

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