ラジオ・テレビの処方せんを考える:放送批評懇談会セミナー2019 発言要旨

小林 史明

※編集部より:本記事は放送の将来像を小林史明さんらが語った大変充実した内容です。ただ、セミナーの対談の模様を起こしたものなので、約12000字の超長文になります点、あらかじめご了承ください。


総務大臣政務官任期中に取り組んだ放送改革が、NHKのインターネット同時配信の承認とともににわかに注目を集めています。先日は「放送に関する批評活動を通じて、放送文化の振興を図り、放送の発展に寄与すること」というユニークな目的を掲げるNPOである放送批評懇談会に招かれ、放送改革をテーマに、理事長を務める上智大学の音好宏先生と対談を行いました。

今回の対談の背景には、毎年7000億円という安定かつ非常に大きな受信料収入に支えられるNHKが、資本力をフル活用して、ドキュメンタリーや報道にとどまらず、バラエティやドラマを製作し、さらに今回、地上波放送のインターネット同時配信をスタートすることに対しての、民放各社からの民業圧迫ではないかという批判。

加えて、民放、特に地方局はインターネットの普及と人口減少に伴う視聴者の減少、それに伴う広告収入の減少に、将来の不安を覚えているということがありました。

この対談で私が伝えたかったことは、

  1. NHKはガバナンス改革に真摯に取り組むべし
  2. インターネット同時配信は、NHKと民放の協業によってグローバルにスケールさせるべし
  3. NHKは受信料収入に上限を設け、増収の際には受信料そのものを安くすべし
  4. 民放は、放送局からコンテンツ制作流通事業に転換すべし
  5. 放送は社会の安定装置として存続すべし

の5点です。長くなりますが、以下、議事録を公開しますので、放送改革の重要性と背景について広く知っていただき、私たち国民の生活に必要な情報流通機能として、放送が健全に発展するよう、見守っていただきたいと思います。

音:NHKの同時配信が承認されました

小林:私が政務官になった2017年から、本気でこれに取り組んだと言っていいと思ってるのですが、ずっと動かなかったこの話がなぜ今回動いたのかというと、2つの背景に整理できます。一つは放送業界の皆さんが、どうしても国内市場だけを見て戦っていること。もう一つは民業圧迫とNHKが言われたときに、いやいや、その可能性はありませんと断言できる仕組みがなかった、やはり懸念を払拭できなかったということだと考えています。

民放の皆さんがネット配信するのは民間ビジネスですから、株主の皆さんや自社の営業成績で考えていただければいいと思います。

しかし、日本全体の戦略からすると、この国内のシュリンクするマーケットだけで戦っていては、経営的にも伸びないですから、一緒にグローバルに見ていただきたいので、これは国としても、また私も政治家としても方向性を示す必要があると思っていまして、その1つが今回の改革とつながっているのです。

キー局各社との議論の過程で、ネット動画配信は同じプラットフォームじゃないと困るとおっしゃった。一方で、NHKは独自でやるということだったので、それは一緒にやりましょうと提案しました。一緒にやることで、NHKもグローバルに展開でき、同じプラットフォームでNHKのコンテンツも民放のコンテンツも出すことで初めて、インターネット配信やってよかったねという未来が描けると思いました。

音:BBCなどインターネット配信に本当に積極的ですし、放送局ってここまで展開できるんだというようなことを、先を見据えてやっているように思いますが。

小林:NHKには海外配信を頑張ってほしいと政府は思っています。日本のコンテンツ情報が正しく届いてほしいから。でもこれまでは、どうしても地上波志向で、NHKワールドをとにかく各国の地上波のコンテンツとして入れさせてくれと。でもこれは、近隣諸国の資本量を考えると、全く太刀打ちできないから、だったらネット周りに絶対行った方がいいと言ったんです。一方でNHK単独で行く意味があるかというと、全然なくて、むしろ民放さんも頑張って同じプラットフォームでやった方が、スケールするはずです。

音:今回の同時配信承認にあたり、NHKのガバナンス改革を条件にされました。

小林:私は、NHKがどのサイズだったらいいのかということを皆さんと議論したいです。受信料の支払い率を上げることはやはりやるべきですよね。現状、8割の人が払っていて、2割の人が払っていない。それはフェアではないから、100%を目指そうとする動きは正しいと思っています。

しかし、100%を目指していくと、現在の受信料収入7,000億がもっと増えていくわけです。そのまま自動的に増えていけば、それは普通に考えると、NHKも事業としては全部使いたいですよね。必ずそれは肥大化を起こすということなのです。ですから、受信料収入の上限を、例えば7,000億で決めるのか。いやもうむしろ5,000億だと決めてしまうことを先にやらなければ、NHKの改革は進まないと思っているんですね。

先日、同時配信を決定したタイミングとともに、受信料の値下げをNHKさんが発表していましたが、これは若干その考え方を理解されたと私は捉えています。要は常に7,000億あって、受信料収入が増えていて、局舎の建て替え積立金以上に内部留保として現金がたまっていく。これ以上収入増やす必要があるかどうか。むしろ払う人が増えた分、頭割りが増えるわけだから、受信料の負担額は減っていくことで、NHKの肥大化はしないという証明にもなる一方で、受信料を払う国民にとっても納得感があるのではないかと思います。

音:私もその意見、半分賛成、半分別なことを思っています。常にこのNHKの受信料収入が増えていくとすると、徴収率が上がって、今回は値下げをするという形で、上限というのを決めて、それより超えたときには値下げをする。値下げをするということで、何かすったもんだするよりは、上限を決めたら残りの部分はどこかにプールしてしまって、例えば放送とか、または新しいメディアの開発とか、または新しい技術の研究とかにお金を回す方がいいんではないのかとも思うんですけれども。

小林:なるほど。その前提の考え方として、まずはNHKの本体の事業としてのサイズを、私はざっくり、5,000億ぐらいで回せるようにしてもらった方がいいんじゃないかと思っています。現状、地上波2チャンネル、衛星で2チャンネルプラス4K、8Kで、ラジオもあって、これはやっぱりどう考えても多いですよね。

例えばEテレに関しては、いいコンテンツですが、リアルタイムである必要があるかというと、学校教育で主に使われているので、むしろこれはネット側に持っていった方が役に立つと思います。受信料収入が7000億得られたとして、そんな感じでスリム化することで5000億で経営できれば、その差額の2000億で研究費用やメディア開発に回すというのは悪くないとは思います。

しかしその前にやった方がいいと思っていることがあって、皆さんへの提案でもあるんですが、地方に記者さんが足りなくなってきている現状をなんとかしたほうがよいと思っています。

今回台風被害のひどかった千葉の南房総は報道が極端に少なかった。各局映像を撮りにいけなかったんだと思うんです。これだけ自然災害が頻発することを考えると、NHKと民放で一時情報を撮りに行くクルーを共通化する仕組みがあってもいいんじゃないかと思うんです。それをNHK vs 民放的な発想で民放だけでやるんじゃなくて、むしろNHKに任せてしまって、災害時の映像や国賓の来日とか各局で特徴を出しづらいけれど国民に必要な情報などは、みんなで共益金として払っている受信料で担っていただく、こういう考え方で私はやるべきじゃないかと思います。

音:先日、AbemaTVに出演されて、夏野(剛)さんと一緒に、もう少しネットと放送って協調していろんなことができるんじゃないかとおっしゃっていたかと思うんですけど、まさに今の話ですね。

そうですね。ローカル局の話にもつながってくると思うんですけれども、今私たち、情報を受け取っている側の感覚としては、もう二極化していると思っていて、もう全世界共通及び日本共通の大きな話題をまず知りたいという話と、ものすごくローカルに寄った情報を知りたいということがあると思います。インターネットは、個別に知りたい情報を取りにいくのに非常に優れており、放送が担うのは、前者2つだと思っています。

キー局及びNHKというのは大きな話一方でローカル局はもう本当に〇〇市に特化したコンテンツが欲しいわけですけど、残念ながらそれが少ないんですね。

もう1つは、災害時に感じたんですが、ネットは「今何をすべきか」が伝えているんですね。ユーザーによってそれがさらに拡散していく。放送の多くが、こんなに被害が大変ですと状況を報道していますよね。でも、避難所で待っている人たちとか、家で避難している人たちが知りたいのは、今から何をしたらいいかなんですよ。

放送は、本来一斉に情報を届けることが得意なわけですから、本来届けるべき情報コンテンツの整理というのが、放送とインターネットでできれば、もっと役割は再定義されて、価値は上がるんだということです。

音:先ほどNHKのサイズという話がありましたけど、片方でよく言われるのが、関連会社についてはどう考えていますか。

小林​:これはもう今日この場ですから話をしますけれども、このNHKの同時配信を議論するとき、総務省の皆さんに私から提案をしたのは、やっぱりこれを機にNHK改革をやると。そのときに必ず世の中から批判があるのは、グループ会社の話、民業圧迫の話、そして受信料収入の話ということがあったわけです。ですから、これはきちっと整理するということを条件とすることにしました。複数社、もう整理するということになっていますので、よかったと思っていますが、まだやれるところが私はあると思っています。

一方でこれは、NHKの中での人事とか給与の話とかなり密接に絡むと思いますので、そこはやっぱりNHKの中で整理するのに時間かかると思いますが、しっかりやっていただきたいということは伝えていますし、進捗をチェックしていくことも必要だと思っています。

ひとつ明確にしたいのですが、何でこんなにNHK改革にこだわっているかというと、私、NHKはとても大事だと思っているんです。民主主義にとって、国民の共くこ通認識を作るという意味で、全国に共通の情報が届くというのはとても大切なことです。そのNHKが、やっぱりスクランブルにした方がいいんじゃないかとか、もう要らないんじゃないかと言われるので、これ国として危機的な状況だと思うんですね。

ですから、国民から見て、ああ、このNHKだったら必要だよねと言われる状態にすることが、私はすごく重要なミッションだと思っているので、NHKの皆さんも本質はそう思っていただいていると思いますが、お互いに合意できる方向に、しかも明るい未来が開ける方向に改革をしたいと思っていますので、一緒にやれたらなと思います。

音:ありがとうございます。話は変わりまして、5Gなんですけれども、本格化していく中で、通信放送の内容が相当変わっていくと思いますが、政策的にはどういう形で展開すべきだと思っていらっしゃいますか?

小林​:立案時点で総務省がこだわったのは、都市部だけがネット環境がよいというのはやめようということです。今までは人口カバー率というのでキャリアに規制をかけていたんですが、そうすると、5年間で50%カバーしてください、としたら、東名阪やったらカバーできちゃうんですね。それはフェアじゃないので、今回は、日本全土を10キロメッシュで区切って、この10キロメッシュをいつまでに何%カバーしてくださいとして、都市部だけが埋まるということにならないようにしています。

5Gはローカルのデジタルデバイドを解決するチャンスがあり、インターネットの価値が出やすいので、ローカルにこそ5Gを展開したいということを言っています。

もう1つ、このキャリアが展開する5Gに加えて、日本が注力するのは、ローカル5Gです。これはラジオ局さんやテレビ局さんも独自で5Gを展開することができるという仕組みです。今でいう、一般的になったWi-Fiを、このホテルのエリア環境にしますね。同じようなことを5Gでやろうということです。

ですから皆さんが持っている局舎内とか、もしくは中継に入るゴルフ場だけを、ある局が5Gエリアにして、そこにテレビカメラ持っていて、ライブ配信でテレビカメラからの映像を5Gで本局に飛ばして、どんどん映像を流していくみたいなことができる。こういうことをやっていきたいと思いまして、これに対して、さらに設備投資は減税するということをやろうとしています。

音:先日、長野の須坂に行ったんですけど、まさに今の、5Gの実証実験をやっていて、全然遅延しないですし、スポーツ中継も全然いいですし、絵もきれいですしというので。ローカルから5G化していくというのは、すごく可能性があるなと――まさにそういうことですよね。

小林​:放送業界には5Gの力を過信して不安な方もいらっしゃるかなと思うので、説明しておきたいのですが、5Gで、無線のところはとても早くなります。高速・多数接続で低遅延で、いわゆる早いということなのですが、その電波で拾った後の情報は、光回線で送ります。ここの光回線が抜群に速くなるわけではないので、詰まります。ですから、放送が全部5Gに取られるという幻想は捨てていただいた方がいい。

一方で、例えば、特定のスタジアムの中だけだったら、電波と基地局だけで折り返せますから、すごく速くなります。そのスタジアム内で映像をどう使うかというのはとても便利になるし、もちろん今よりも5倍、10倍は一般の方も、5年、10年以内に早くなるので、今やっているラグビーワールドカップみたいなリアルタイムのライブ発信が見やすくなります。だからといって、放送波が要らなくなるというわけではなく、むしろ皆さんがつくり上げたコンテンツの出口が増えるし、そして活用方法が広がると思っていただいて、どう使うか考えていただくといいと思います。

音:私もローカルをすごく大事にしていかなきゃいけないと思うんですけど、人口が減少していく中で、東京のような首都圏も減少するでしょうけど、ローカルも減少していって、県庁所在地にどんどん人が集まっていくというのが、ますます進んでいくのではないか。とすると、放送が今まで担っていた広くあまねくの問題と、それからもう片方で、今のローカルでBWAみたいなものを使っての5Gができる。

だけどその5Gができるのは、ローカルの中で、とは言いながら、比較的県庁所在地に象徴されるような、比較的ローカルの中の人が多いところに行ってしまって、「ポツンと一軒家」的なところというのが取り残されてしまうんじゃないかのかという感じがするんですけど、その辺りはどういうふうにお考えですか?

小林​:論点は幾つかあると思いますが、一方で、そういうところをまさに無線でやろうと今、舵を切っているんですね。NTTが課されているユニバーサルサービスといって、どこでも固定電話がつながらなきゃいけないというふうになっているわけですけど、今、実はそこ、無線でもいいじゃないかと法改正しようとしています。どんどん無線を使おうとなっている。むしろそういうところが拾われるようになれば。

一方で、地方局こそこのインターネット、5G時代はチャンスがあると見ていまして、先ほどのベタベタのローカルコンテンツがみんな欲しいのです。ベタベタのローカルコンテツは今までは圏域にしか流せなかったのが、5Gで世界中に流せるようになるんです。

TVerで観られるというのは第一段階でしょうけど、AmazonプライムとかHuluとかNetflixにどんどん載せていけばいいと思いますね。動画コンテンツのプラットフォームで、世界中にコンテンツを売れば、インバウンドに効果があって地域経済にも貢献できる。すでに北海道のローカル局がアジアにコンテンツ売って、今、北海道にアジアからの観光客増に貢献している。自治体とビジネスモデルを組んで、来た観光客の収益は自治体だけでなく放送局にも入る仕組みにすれば、ひとつの売り上げソースとして確立できると思います。自治体から受託をして、観光客何人以上呼んだら幾ら以上の報酬、みたいな契約をどんどんやるといいと思うんですね。

私の地元、福山市の例でいくと、福山市主催のマラソン大会に約7,000人参加するんですが、スポンサープログラムで、一番高いのが、30万くらいなんです。一方で、一昨年から始めた、せとうち福山-鞆の浦トライアスロンは、2年目で300人ぐらいの参加なんですが、民間に営業かけていたら、通信会社さんに300万、化粧会社さん300万のスポンサーがつきました。

何を言いたいかというと、自治体主催のローカルのリアルイベントって、たくさん集客力があってコンテンツ力があるのに、広告を取ってくるノウハウやコンテンツを展開するノウハウは自治体はもちろんないので、機会損失しているんですね。もし自治体からローカル局が受託をしたら、全部企画して、広告取って、映像撮って、ネットで流して、放送して、その映像を再利用するなど、ビジネスに展開できるはずなんですね。

ご自身を放送事業者の枠にはめずに、コンテンツをどうお金に変えられるか考えると、放送事業者じゃなくて、情報事業者になっていただいて、情報をつくるところから世界に持っていくところまでやろうとすれば、放送のビジネスチャンスはもっと広がると思っていて、放送の未来は明るいと私は思っています。

音:今の話で、制度的なことを考えると、今までの圏域免許みたいな考え方ですとか、同じエリアには一定程度の放送局があることをすごい大事にしてきたかと思うんですけど、その辺り自体も、ネットとの関係の中で変えていった方がいい、また変える直前まで来ているとお考えですか?

小林​:はい。これについてはまさに皆さん民間企業ですので、皆さんがやりたいと思ったときに、できない選択肢があるとするならば、我々政治はその選択肢を広げるのが仕事だと思っています。困ることがあればどんどん言ってください。ただ、その意欲がないのはダメです。売り上げをあげるのは、これは国の仕事ではないですから、そこはもちろん放送で働くみなさんご自身で考えて実行するべきですね。

音:参加者からの質問に移ります。ネットをすごく大事にされることは、お聞きしていた分かったんですけれども、ネット情報の信頼性みたいなことというのをどう考えていったらいいんだろうかと。または、将来のローカルのプラットフォーマーとしては、CATVというのも非常に重要だと思いますが、CATVについて何かされていらっしゃいますか?

小林:​1つ目のところで、ネットにフェイクニュースが流れるじゃないかと。これ行政も言うし、放送の皆さんも言うんですね。個人的にはインターネットが持つ力を信じていて、インターネットは全世界がフェアに情報を発信する機会を提供したと思っています。でも、もし放送の方がそう言うならば、だからこそネットに出てきましょうよ。皆さんが正しい情報を、ネットに配信することで、フェイクニュースが淘汰されていくようにしたら良いと思うんですね。

ケーブルテレビについては、今のままでいくと、ローカル局よりもケーブルテレビの方が伸びしろがあると思っています。ケーブルテレビはいいローカルコンテンツを持っていて、地域の運動会、孫が出ているから契約するといって、おばあちゃんたち見ている。

ここの、べたべたのローカルコンテンツ持っているケーブルテレビが、しかも各家に回線も持っているわけですね。そうすると4K、8Kも送れる。何だったら在宅医療までインターネット回線でしていくべきだというふうになるので、むしろこれはCATVがものすごく伸びしろがあって、逆にこことローカル局はどう連携するのかということも考えていく必要があると思っています。連携すると、もっと広がる世界があるんだろうと思っています。

音:今日ラジオの方もたくさんいらっしゃっていますので、コミュニティーFMについてはどうお考えですか?

小林:​耳だけで得るコンテンツという意味では、ものすごく幅が広くて、音楽だってあるし、落語を聞いている人もいるしということもあるわけですから、そこには大変な伸びしろがあると思っています。

映像は電通さんのデータによると、モバイルで観ている人も、テレビで観ている人も、ほぼ自宅で観ているんですね。さすがに電車の中でガタガタしながら長い映像は観られないってことなんだと思いますが、音声コンテンツは可能ですね。私もAudible(オーディブル)という、本を読み上げてくれるサービスを、新幹線でよく聞いています。目も疲れなくて、とても頭に入ってくるんです。

先ほどのテレビと同じで、コミュニティーFMの”コミュニティー機能”をもっと生かして、リアルの場に地域のコンテンツをつくりに行くということをやった方がいいかと思います。ただ、問題は、これもテレビと同じで、災害等の情報をコミュニティーFMごとで情報が断絶されていて、あまり情報が共有されていないんですね。福山市のFMと、隣の尾道のFMで、災害情報、実は交換していないんですよ。ですからこういう文化経済圏域が近いところは、情報を共通化しようとかということはやっていけると、さらにコンテンツ制作側に稼働を回して、一次情報の収集には稼働を割かなくていいということができるんじゃないかなと思います。

音先生:今まで行っていた、例えばラジオならラジオというサービスをもう一回少し整理をし、また結び付けられるところは結び付けて、そこで共通作業ができるようにしている、そういうイメージですか?

小林​:テレビもラジオも、要は自分たちは何を扱っている仕事なんだっけと、一度上位概念に上げた方が考えやすいかなと思っていて、放送の皆さんというのは、基本的には情報を集めてきて、編集して、届けるという役割をやっていらっしゃる。それが放送波でなきゃいけないということは誰も決めていなくて、むしろ技術の進展で出口がたくさん増えているとするならば、もっといろんなやり方あるよねと考えていただきたいですね。もう一度自分たちが得意なことを再認識して、顧客はそれを価値だと確実に信頼を持ってくれているはずですから。自信を持って、むしろ企画屋としての楽しい気持ちを思い出して、もっとイベントやろうぜとか、もっとこっち攻めていこうぜと初心を思い出してもらえたらなと思います。

音:来るだろうなと思ったら、やっぱりこういう質問がありました。「とはいっても、ローカル局は、いろいろ放送したいとか、地元の情報を取りたいという思いはあっても、人手が足りなくて、人を雇うお金もないので、国がもっと予算を出してくれませんか?」という質問ですが、いかがですか?

小林​:皆さんは「民間企業」ですよね。資本がないのであれば、出資を受けるなど、資本を調達したり、今の硬直した株主体制でいいのかとか、場合によってはM&Aを仕掛けたり、インターネット事業をやるノウハウがないんだったら、インターネット広告会社と資本提携するとか、どの民間企業も普通に考えることを、考えるべきだと思います。

政治行政がサポートできるとすると、先ほどのNHKとの情報の共有化とか、記者の共通化みたいなことを、皆さんもいいよねと思っていただけるならば、これをやれると、皆さんの人手不足というのはかなり解消できるということであれば、その橋渡しはお手伝いできると思います。

音:ずっとローカルの話をしてきましたが、小林議員、総務省の政務官をされていたときに、衛星ということに対して積極的に改革というか、展開を進められましたけれども、BSの新規参入ということの門戸を開いてくださったわけですけれども、衛星等と考えたときに、今後はどういうふうにお考えでしょうか?

小林​:このBSの新規参入枠をつくるという中でこだわったのは、業界全体の話題性とレベルをあげること。先ほどの放送から国民が離れていっているということに対する危機感は理解できて、長く広く普及した業界ですから、ここらで活性化が必要で、それには新しいスター選手が出てくるといいと思ったんですね。

もう1つは、そのためにも、放送というものは参入可能なんだということを多くの皆さんに知っていただく必要があると思っていて、衛星だと年間約4億円で一日中映像が流せるので、とても実は効率のいいプラットフォームであるということを皆さんに知っていただいて、よいコンテンツを持っているプレイヤーに入ってきてもらいたいと思いました。

今回参入が決まったのは、吉本さん、ジャパネットさん、松竹さんなんですが、どちらかというと、吉本さんと松竹さんは、自分たちでコンテンツを持っている。何だったら吉本さんは人まで持っているので、恐らく芸人さんがニュースから報道番組からバラエティーから全部できる。まだまだ可能性に十分気付いていただいていないと思いますが、個人的にはEXILEのLDHさんとかジャニーズさんとか手を挙げるてくれないかと思っているんですが、EXILEのメンバーがニュース読んだり、ダンス教室したり、歌のレッスンがあったり、結構面白いと思うんですね。ジャニーズも。

そういうコンテンツを持っている人が出てきてほしい。コンテンツがあれば誰でも放送局を持てるということが面白いと思っているんです。そういう意味で、地方局さんもコンテンツ持っているので、1社で持てなかったら10社集まればできるなど、柔軟に考えていただければと。

音:本当にケーブルテレビは大丈夫なのか、というご質問が来ています。

小林​:もう一度言いますが、放送局はケーブルテレビを含め、放送事業でなく、情報事業なのです。テレビというのが画面を離れていくというのは必ず起こるんだと思いますね。ケーブルテレビは、基本的にケーブルを使ってコンテンツを流しているわけなので、そのコンテンツをインターネットに流せると考えれば、無限に”メシの種”は地域にあります。地域のスポーツ大会とか、お祭りとか、行政のお知らせとか、情報を提供してほしい側も受け取りたい側もそこにいるのです。

CATVさんによっては、BWAサービスを提供されていますけど、今、うちの地元ちょっと実験したんですけど、BWA(無線)でケーブルテレビの放送を送れるということが分かったんですね。ですから、ケーブルが届かない、費用が合わないところよりも、無線で送る組み合わせは、ケーブルテレビさんもできるということが技術的に判明しています。

あとセットトップボックスだけ家に置いちゃえば、固定回線がなくても無線で受けられるんですね。なので、そういうことを含めると、まだまだやれることはあるかなと。もちろん、実際にやろうとすると、経営ですからとても難しいと思いますが、ゼロではないし、私はむしろ伸びしろがあるかなと思います。

音:最後に。今、自民党の青年局長になられて、なおかつ放送通信にお詳しい。政権与党としては、この後の通信放送でどういうふうなスピードで変えようというふうに考えていらっしゃいますか?

小林​:放送政策に関わる政治家は昔から比べるとだいぶ減ってもう数名しかいないです。そのうち、私がずっと7年間一緒に仕事をしてきたのは、川崎二郎さんと佐藤勉さんなんですけれども、どちらとも思いは同じでありまして、やっぱり放送の重要性というのを感じている。世代が違うからといって、何か意識の差はなくて、むしろ思い入れが非常に強いので、アドバイスもエネルギーもいただいています。

あと理解していただきたいのは、事業者と政治の間に立つ総務省の方々が大変だということ。どうしても国民からも事業者からも色々なことを言われて、矢面に立ってくれているわけですが、高い志を持って改革を進めてくれているので、その気持ちが激務でくじけないないように、政治家が背中を押し続けるということが重要だと思っています、私自身は総務省の皆さんにも必ずやるということを言い続けていまして、今日のような機会に事業者の皆さんとも意識共有をし、また、取材に来てくださっている記者さんを通じて国民の理解が得られたらと思っています。

音:ありがとうございます。最後に、今日は圧倒的に放送事業者の方々が多いので、小林議員から放送事業者の方々にメッセージをいたたければと思います。

小林​:今日はこういう伝統ある機会に登壇をさせていただきまして、ありがとうございました。NTTドコモに勤めていたイメージがあるので、どうしても通信を大切に思っているんじゃないかと思われがちですが、政治の世界に入って7年、多くの仕事の機会を通じて、歴史を学ぶに当たっても、いかに放送が大事な役割を果たしていくかということを痛切に感じています。

さらに、世界中で今、民主主義の混乱が起こる中で、より一層、この放送の、同じ情報を等しく全国に届ける役割の重要性は、私は増してくると思っているんですね。ですから、そこを皆さんも誇りに思っていただきたいと思います。ただ、そのためにも、今のままでは難しいという危機感を持っていますので、皆さんには、技術の進展とともに、できることが増えてきたことを前向きに捉えて、皆さんの担ってきた大事な機能と魅力ある能力、コンテンツを世界に展開するためにすべきことをやっていただきたいと願っています。私は、その放送の新しい可能性を実現するために必要な、政策や改革を担っていきます。

政治行政だけが叫んでいてもダメで、皆さんと一緒に一歩を踏み出せることが重要だと思っていますので、ぜひこういう機会を今後ともいただきながら、皆さんの納得の一歩が進められる放送通信政策をやっていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

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小林 史明  衆議院議員(広島7区、自民党)自民党第50代青年局長、行政改革推進本部本部長補佐。

電波、通信、放送政策、海洋水産政策、社会システムのデータ、標準化に取り組んでいる。2007年上智大学理工学部卒業後、NTTドコモに入社。2012年の衆院選で自民党から立候補し、初当選。第3次、4次安倍改造内閣にて17年8月〜18年10月、総務大臣政務官 (情報通信、放送行政、郵政行政) 兼 内閣府特命担当大臣(マイナンバー制度担当) を歴任。公式サイト。LINE@では、イベントのおしらせや政策ニュースをお届けしています。登録はこちら


編集部より:この記事は、自由民主党青年局長、衆議院議員、小林史明氏(広島7区)のオフィシャルブログ 2019年11月4日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は小林史明オフィシャルブログをご覧ください。