「イートイン脱税」より「タックス・ヘイブン」を取締れ!

2019年11月10日 11:30

「想像を絶するマメさ」で税逃れ

吉本興業所属のお笑い芸人が、「想像を絶するずさんさ」で税申告を怠っていた件が発覚した。ただただ真面目に税を納め続けている多くの日本国民からすれば呆れ憤るばかりだが、逆に「想像を絶するマメさ」で節税という名の税逃れをしている人たちがいる。

Netflixで配信中の『ザ・ランドロマット―パナマ文書流出』は、スティーブン・ソダーバーグ監督が「パナマ文書流出事件」の真相と裏側を描いたオリジナル映画だ。しかも出演者もメリル・ストリープ、ゲイリー・オールドマン、 アントニオ・バンデラスといった豪華な面々。

パナマ文書問題を揶揄した絵(Wikipediaより:編集部)

作品自体は、込み入った「タックス・ヘイブン」の仕組みを映画的に見せるのに苦労した面を感じさせるが、いわゆる「ヤシの木茂る南の島=タックス・ヘイブン」というイメージから発展し、中国で起きた薄熙来事件、さらには法輪功信者に対する見るに堪えない中国当局の仕打ちに至るまでを盛り込んでおり、闇の深さを感じさせる構成だ。

本作は、パナマ文書流出の出元となった法律事務所「モサック・フォンセカ」から「(モサック・フォンセカの弁護士、モサック氏とフォンセカ氏を)資金洗浄や脱税、贈収賄、その他の犯罪行為に関与した非情で思いやりのない法律家として描き、中傷している」として訴えられているという。

彼らからすれば、法律の穴をかいくぐったことは確かでも、悪事を働いたつもりはなく、半分茶化し、半分は批判的なこの作品での「胡散臭い弁護士としての自身の姿」には我慢できなかったようだ。

国ぐるみで「税逃れ」?

『ザ・ランドロマット』を見れば、タックス・ヘイブンの想像を絶する複雑さとずるさ、は分かるのだが、「なぜそんなことが許されているのか?」「どんな仕組みでこうなっているのか?」については詳しいことは分からない。

そこでおすすめなのが、志賀櫻『タックス・ヘイブン―逃げていく税金』(岩波新書)

筆者は大蔵官僚として、国際的な金融システムにおいて「税逃れ」を取り締まる仕組みを構築する側の立場を経験しており、その実体験、実例を踏まえながら、複雑なタックス・ヘイブンの仕組みを実に分かりやすく説明してくれる。

私は経済に関しては全く知見がないが、まるで映画のような国際金融の舞台での応酬を盛り込みながら、いかに一般の納税者がタックス・ヘイブンのしりぬぐいをさせられ、またそれが投機マネーと結びつき、金融危機を引き起こしているかを明らかにしており、知識がなくてもその負の影響を知ることができる。

それだけではない。「ヤシの木茂る南の島」的なタックス・ヘイブンの地の背後には、その地を必要とする世界一の金融都市を抱えるイギリスがおり、アメリカがおり、そして中国もいる。いや、背後どころか、各国のオフショアセンターやロンドン、ニューヨークは、「ある種のタックスヘイブンとして国際社会に害悪を広めている」とまで指摘する。

「イートイン脱税取締り」より大事なもの

いちご大福/写真AC(編集部)

「想像を絶するマメさ」と複雑なシステムによって何億円もの税金逃れを行っている企業や人々に対する怒りよりも、小市民としてはちょっとした税金逃れに気を取られ、この日本でも10月以降は軽減税率の仕組みを使った「イートイン脱税」がやり玉に挙がっている。片や数億円、片や10円未満。どちらを問題視すべきかは言うまでもないだろう。

しかし私たちには、「世論の目」として機能する以外に、大企業の事実上の脱税行為に歯止めをかける方法がない。もしくは合法的な範囲内で、節税を試みるくらいが関の山だろう。

只野範男『完全版 無税入門』(飛鳥新社)は、副業を持つことでサラリーマンでも節税が可能、頑張れば無税に持ち込めるという手法を紹介する。

これにならうかどうかはあなた次第、自己責任だが、この程度でも「それなりのマメさ」は必要になることをお断りしておく。

noteで「Netflix+書籍で知識を深めるシリーズ」公開中。また、安倍政権関連書籍を読みまくる「あべ本」レビューも随時公開しています。

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