大麻輸入容疑:國母元代表選手逮捕に見る“麻取”の変化

田中 紀子

田代まさしさんが覚せい剤の所持で逮捕されたその日、スノーボーダーの國母和宏・元オリンピック代表選手が大麻取締法違反(営利目的輸入)容疑で“麻取”(麻薬取締部)に逮捕されました。

- YouTube
YouTube でお気に入りの動画や音楽を楽しみ、オリジナルのコンテンツをアップロードして友だちや家族、世界中の人たちと共有しましょう。

私、この方を心から尊敬していたので、逮捕の一報を聞き、今後また國母さんが叩かれまくるだろうな…と、暗澹たる気持ちになりました。

しかも國母さんの逮捕で、メディアは一斉に國母さんのバンクーバーオリンピックでの腰パン騒動を映像に使っていますが、これもまた実に嫌な気分になります。大体、あの「腰パン騒動」も私は騒ぐ方がどうかしてたと思っているんですよね。

だって、死ぬほど努力して、オリンピック出場を手にした人に対してですよ、
「服装が乱れてた」なんて瑣末なことで、これからオリンピックに向かう人に日本中が説教に走るって
常軌を逸してたと思いませんか?

しかも服装を乱れととるか?おしゃれととるか?は単なる主観ですからね。
あんなことでオリンピック前に国中で心労を与えて平気な神経がわからないです。
あれで一時は、出場辞退させる!って話にまでなった位ですからね。
日本人のこういった突然国民全員が道徳主義に陥る風潮こそ危険じゃないの?と思いますね。

とまぁ、國母さんは本当にすごい方なので、私としては言いたい事は沢山あるのですが、今日は、麻取が湾岸署に移送してきた際の映像を見て、我々依存症界にある感慨が走ったのでそれについて書きます。

皆さん、あの映像をご覧になって何かいつもと違うことに気がつかれましたか?
そう!車のカーテンが閉められていて、國母さんのお顔が見えなかったことです。

これには我々「麻取りも少しは改心したのか!?」と、まだ疑心暗鬼ですけどそう思いましたね。

TBS「グッとラック!」より

というのも以前記事にも書きましたが、麻取りというのは自分たちの存続に危機感があるんだか何だか知らないですけど、とにかく薬物事犯の再犯防止とか、回復とか、社会復帰とかもう一切お構いなしで、自分たちの自己顕示しか考えていないんですね。

ましてや我々依存症者の家族に対する配慮、特にお子さん方への配慮すら1ミリもない、冷血漢というか非人道的な集団で、この人たちが再犯防止をやるなんてちゃんちゃらおかしい!

あなた方のその態度こそ我々を社会から排除させ、再犯させる原因でしょうが!
と、特に我々依存症の家族達は猛烈に怒っているんですね。

この度、逮捕映像をテレビ局に流すって、完全アウトでしょ!という守秘義務違反が明るみに出て、
初鹿先生に、しっかりと国会でご質問頂いたわけですが、

有難うございます!初鹿明博先生 薬物事犯へのダブルヘッダーでの質問

我々としては、この逮捕映像をTV制作会社と癒着して横流ししてきたことと、もう一つ麻取のパフォーマンスに激怒していたのが、例の「移送車のカーテンを、マスコミが集まっているポイントの直前で全開にする!」というやり方だったんですね。

色んな有名人の方に話しを聞きましたけどね、厚労省から湾岸署に移送されてくるじゃないですか。
そしてマスコミが待ち構えている直前で、麻取りがマスコミに「さぁ、サービスショットですよ~!」とばかりに、あのカーテンを全開にするんですって!実に、実に、実にいやらしいと思いませんか?

しかも「髪型大丈夫かな?」とかマスクを急に外したりして、カメラ意識しまくりの麻取りもいるそうで、この話に、もう我々家族組は「はらわた煮えくりかえるとはこのことだ!」と思っていたんですね。
「おめ~らの虚栄心のために、見せものにしていいわけじゃないぞ!」と、怒髪天をついていたんですよ。

で、この麻取りの人権無視のやりたい放題に対し、アルコール、薬物、ギャンブルの家族達の連携ができたことから、「そろそろ我々も黙っちゃいないよ!!!」と、度々話し合っていた丁度その時に、麻取が守秘義務違反で刑事告発されたわけですよ。

もうこれ絶対に検察に徹底追及して頂きたいと思っておりますが、この件以降の著名人初逮捕が國母さんで、初めて移送車のカーテンが閉じられていたんですよね。

やっと麻取りも自分たちのアピールよりも、薬物事犯に対する人権に配慮すべきという、超あったり前のことに気がついたのかな?と思いました。

今回の田代さん逮捕の報道をみると、殆どが「治療」と「再発防止」について語られていて、そろそろ社会の皆さんも麻取りと、監麻課の「ダメ絶対」という人を追いやり、見せしめにする、あのパフォーマンスこそが、社会に居場所を失わせ、薬物事犯を再発させる大きな要因だ!と気付いてくださったのでは?と心強く思っています。

ついでに言えば、麻取りだけじゃなく薬物依存症という精神疾患を抱えた人たちに対して、スクープ映像を狙うようなマスコミに対しても、我々もうこれからは絶対黙っちゃいないです。

ネットメディアの方々なんかは先駆的なので「ダメ絶対こそがダメ絶対」とご理解頂いていて、度々、そういった記事も配信して下さり、我々の味方も増えています。

我々家族も、これまでのように泣き寝入りなんか絶対しないですよ!
特に私は、薬物の家族の仲間たちも心から愛し大事に思っているので、薬物事犯に対する人権無視の扱いには絶対に黙っちゃいないので、そこんとこ宜しく!です。


田中 紀子
公益社団法人「ギャンブル依存症問題を考える会」代表
国立精神・神経医療センター 薬物依存研究部 研究生
競艇・カジノにはまったギャンブル依存症当事者であり、祖父、父、夫がギャンブル依存症という三代目ギャン妻(ギャンブラーの妻)です。 著書:「三代目ギャン妻の物語」(高文研)「ギャンブル依存症」(角川新書)「ギャンブル依存症問題を考える会」公式サイト