令和元年の情報通信白書、値打ちアリ。

2019年11月18日 11:30

令和元年版 情報通信白書。できました。
今年も編集委員を務めました。
いつもは、せめて概要版読めば?と勧めるところ、今年は、本文をじっくりお読み下さい。
デジタルのこれまでと、今と、これからを知る重要な読み物に仕上がりました。
タダです。
http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01tsushin02_02000143.html

第1章「ICTとデジタル経済はどのように進化してきたのか」

ショルダーホン、ポケベル、PHS、パソコン通信、ダイヤルアップ。
携帯電話とインターネットが普及した平成の30年をがっつり振り返ります。

日本企業のICT利用は、昭和には世界に先駆けた先進的な利用があったものの、平成はICT投資が停滞、米国や欧州と比較しても低い伸びにとどまることを明示。
80年代は電子立国と称されながら2000年代にはICT機器は生産・輸出とも減少、2013年に輸出入逆転。
・・勝者から敗者へと堕ちた実態を描きます。

デジタル史の総括に加え、現在の断面も切り取る。
米GAFA、中BATらデジタル・プラットフォーマーの動向と事業構造、欧GDPRなど世界の規制、AIの仕組みと動静、サイバーセキュリティの動向など。
・・デジタルの今を読む包括的で絶好のテキストです。

インターネットとマスメディアの関係にも1節を割く。
エコーチェンバー、フィルターバブル、世論分断、炎上、フェイクニュース、リテラシー。
放送法改正で通信・放送融合2.0を迎える一方、海賊版などネット言論空間の在り方も問われた1年。
・・踏み込んでいます。

第2章「Society 5.0が真価を発揮するために何が必要か」

デジタル経済の特質とデジタルトランスフォーメーション。
所有から利用へ。シェアエコ。フリーランスとして仕事を受注。時間や人間関係に縛られない生き方。C2CやC2Bといった取引関係。バリューチェーン構造が変化。
・・根本的な変化を説きます。

1. 全情報がデジタルデータになり、2.全情報のやりとりのコストが抜本的に低廉化し、3.全経済活動のコスト構造を変革する=デジタル経済。

2. 5Gとオープンデータがこの仕組みを更に進化させる。そして全産業にICTが一体化していく=デジタル・トランスフォーメーション。
・・経営者が読むべき書籍です。

そして、デジタル経済の進化は社会を豊かにするかを問う。
ICTはGDP成長をもたらさないのか。
GDP統計はデジタル経済の経済活動を捕捉できていないのではないか。
GDPは指標として有効か。
ICTは格差を生むのか。
ICTは「一人勝ち」を生むのか。
人は何を豊かさと感じるのか。
・・本質的な問題提起です。

ICTの指数関数的な発展の変化はある地点から急激になる。
汎用技術が効果を発揮するまでには時間がかかる。
補完的なイノベーションが伴うことで汎用技術は効果を発揮する。
新たな技術はバブルと恐慌を経て普及してきた。
・・ぼく好みの分析ですが、ぼくもまだきちんと読み込めていません。考えます。

さて、ここからは「どのような改革が必要か」と題し、プロフィットセンター/フロントオフィスのICTへの転換、ICT人材の再配置、オープン・イノベーションとしてのM&A、働き方改革といった処方が並ぶ。
・・だけどここは要注意。白書がそう言うからといって、読者は鵜呑みにせず、自らの戦略を考えること。

「人間の拡張」に紙幅を割いている点に注目。
ICTが人間の能力を更に拡張することを期待するという分析だ。
外骨格・義手義足のように身体機能を補綴すること。
テレプレゼンスが遠隔地での作業を可能にすること。
視覚や聴覚などの感覚を技術で強化すること。
AIと人間の協調で認知を拡張すること。

ICT、IoT、AIによる人間の拡張を、マズローまで引用しつつ、社会インフラの全体最適化、サービスのパーソナライズ化などを通じ、「身体の拡張」「存在の拡張」による新たな働き方や人間が働くことのポジティブな代替に言及する。
・・めっちゃ攻めてますよ、総務省。

これは1-2章だけの紹介でございまして、ICT産業の動向、サービスの利用動向、政策の動向など白書たる基本はちゃんと収められています。

ほう、白書ってやつ、たまには読んでみるか。
という値打ちのあるデジタル冊子です。
紹介まで。


編集部より:このブログは「中村伊知哉氏のブログ」2019年11月18日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はIchiya Nakamuraをご覧ください。

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