沢尻エリカさんに対するエイベックスの画期的な対応

田中 紀子

一昨日の12/6に違法薬物所持の容疑で逮捕されていた沢尻エリカさんが保釈されましたが、保釈と同時に、沢尻さんが所属するエイベックス・マネジメント株式会社より、下記のコメントが発表されました。

沢尻エリカは、本日違法薬物所持の容疑で起訴されました。
ファンの皆様を含め関係各方面の方々には多大なるご迷惑とご心配をおかけしておりますことを改めてお詫び申し上げます。

皆様におかれましては様々なご意見があるとは存じますが、
弊社といたしましては弁護士を含めた専門家の指導の下、本人を更生するための支援をいたします。

メディア関係の皆様におかれましては大変恐縮ではございますが、本人を更生に専念させていただきたく、
本人や家族、更生先への取材、問い合わせにつきましては差し控えてくださいますよう、何卒ご理解とご協力のほど、よろしくお願い申し上げます。

また、本人に対する処分につきましては今後の裁判の結果を踏まえて決定させていただき、
改めて皆様にご報告させていただきます。

2019年12月6日
エイベックス・マネジメント株式会社

薬物問題に対する人権への配慮を求めてきた私、このコメントを見て思わず唸り、そして感謝の気持ちでいっぱいになりました。この対応こそ、社内で違法薬物問題や依存症問題を起こした時の、経営者側のとるべき姿だと思います。

NHKニュースより編集部引用

これまで芸能人が薬物で逮捕されると、速攻でマネジメント会社は解雇しておしまい。
このパターンが多かったのですが、「それってだれ得?」って思うんですよね。

しかし今回のエイベックスさんの対応は、まさにお見事!今後この対応が標準化して欲しいと願うばかりです。
何が、素晴らしかったかと言えば

1)社会のスティグマを強めることを防ぐ

芸能人の方って、必要以上に見せしめにされがちです。
やっと問題視されはじめましたが、これまで警察や麻取りによるマスコミへの情報漏えい、下手すれば公務員の守秘義務違反に問われるような行為が平気で行われているわけじゃないですか。

田口淳之介さんの弁護士さんが頑張って下さり、今回初めて守秘義務違反で麻取りが刑事告訴されましたけど、それだけ「違法薬物問題を起こした芸能人はどんな扱いをしても構わない!」というのがこれまでの慣習だったわけです。

こうして芸能人が見せしめにさせられると、偏見が強まり、社会で居場所をなくすのが、一般社会の薬物問題を抱える人たちです。こうした芸能界の大騒ぎは、我々のように地道に依存症支援に関わっている者からすれば迷惑千万なわけですよ。

芸能人は事務所の後ろ盾があるとないとじゃ大違いですからね。
特に大きな事務所の庇護があるかないかは、芸能界という「Top of the 忖度社会」みたいなところでは、対応が全然違うことは、我々一般人だって見抜いている訳じゃないですか。だから必要以上にマスコミ、特に劣化した地上波テレビと、スキャンダル週刊誌が、やりたい放題をしないよう守って頂きたいんですよね。

2)更生支援(回復支援)

ここは「回復支援」とおっしゃっていただきたかったところですが、そこは起訴されたわけですから致し方ないとしても、
沢尻さんが依存症かどうかは分かりませんが、違法薬物でストレス解消しなくてはならないほど、メンタル的に追い詰められていたことは間違いない訳じゃないですか。ですからメンタルヘルスの問題として、回復支援は必要な訳ですよね。

けれどもメンタルヘルスの問題というのは、本人は「否認」しがちで、なかなか医療機関や支援機関に繋がってきませんから、事務所が保釈と同時に「治療」に繋げたことは、実に懸命な判断だったと思います。

田代まさしさんの頃はこうはならず、根性論で「もうやりません!」と誓わせることしかなく、周りの芸能人も「今度やったらぶん殴ってやる!」みたいな発言をし、それが美談のように伝えられていたわけです。私はそういった初期のころの間違った対応によって、マーシーさんが重症化していき、再発を繰り返してしまった要因の一つだと思います。

沢尻さんが、回復への道に繋がれたことは、本当によかったと思います。
ゆっくりとご自身に向き合って頂くためにも、マスコミの方は彼女を追いかけまわすようなことがないようにお願い致します。

3)法的な流れに沿った対応

そもそも、逮捕されただけでは有罪か無罪かもわからないのに、これまでは逮捕されただけで、速攻で「解雇!」ってなってたわけじゃないですか。これって完全に法的に考えたらおかしな話ですよね。誤認逮捕や不起訴だった場合でも、すべてを失ってしまう訳じゃないですか。だから「裁判の結果を見てから、処分は考えます」というのが、本当は当たり前の流れだと思います。

…と、今回のエイベックスさんの対応は画期的なことだらけで、業界のロールモデルとなりました。
是非、今後この流れに他事務所さんも続いて欲しいと願います。エイベックスさん、ありがとうございます。


田中 紀子
公益社団法人「ギャンブル依存症問題を考える会」代表
国立精神・神経医療センター 薬物依存研究部 研究生
競艇・カジノにはまったギャンブル依存症当事者であり、祖父、父、夫がギャンブル依存症という三代目ギャン妻(ギャンブラーの妻)です。 著書:「三代目ギャン妻の物語」(高文研)「ギャンブル依存症」(角川新書)「ギャンブル依存症問題を考える会」公式サイト