移民・難民への偽善が文明を滅亡させる

八幡 和郎

21世紀の欧米は、イスラム過激主義と難民・移民に振り回されている。私は欧米的な進歩主義的な価値観に立っても、ヨーロッパの穏健左派やアメリカのリベラル勢力が意図的、あるいは無意識に勘違いして蟻地獄に陥ったと思う。

今後、東アジアなどでも同様の間違いが繰り返されないことを願う立場から願い考察してみよう。

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圧政を理由だけに直接的な命の危険などなくとも難民になって優遇されるなら、その国民は、自国を改革する努力などせずに、逃げ出すほうがいいのは当たり前だ。

母国の豊かな生活を捨てて経済的には損でも自由を求めてこそ政治難民なのではないだろうか。

かつての東欧からの政治亡命者は、その流出が若い人や知識層が多かった。その流出は、東側諸国の経済に打撃を与え、体制変革を促す意味があった。しかし、現在の難民は独裁者たちにとって厄介払いになってかえって好都合だ。

経済的理由の難民まで認めてしまってはなおさらだ。

ヨーロッパでは、国内の賃金高騰を怖れて安い労働力を求めてEU加盟国の急速な拡大や難民を歓迎するドイツ経済界の存在も問題だ。左派政党も、持ち前の「国際主義」から反対できずにおり、結果、賃金を抑制している愚かさだ。

穏健左派やリベラル政党が移民・難民を警戒しない理由には、移民が彼らの支持者になりやすいこともある。アメリカなど白人は共和党優勢で、黒人やヒスパニックやアジア系の支持者の多い民主党は党派的な利害から移民歓迎だ。

イスラム教はキリスト教より個人の自由や女性の権利を侵害しているが、それを追及しない(フランスのベール着用禁止を左派政党が推進しているような例外はある)。日本でも一部の政党が某国の独裁政権を「支援」したり、「応援」したがるのも同じ党派的理由だろう。

さらに、ニューヨークのインテリが移民歓迎なのは彼らの個人的利害からだ。大都市では人件費が高くサービス料金は高騰する。そんなときに、家庭も持たず、劣悪な生活条件で安くで働く移民は大歓迎だ。被害者は典型的にはラストベルトの白人だ。

移民は古代ローマの奴隷と同じように大都市生活を支え地方の衰退を招いているのである。

アジアについては人口が多すぎる中国という特殊性もあることがポイントだ。中国から難民・移民が流れ出すことをコントロールしないと、政治的にも文化的にも日本も含めて多くの国が呑み込まれてしまうだろう。これはヨーロッパにはない危惧なのである。いくら難民がアラブから来ても彼らが多数派になったりはしない。

ドイツなどは、移民の「ドイツ化」はしっかりやっている。日本では、もともと反日教育をしている国からの移民にすら警戒をしない。そういう国からの帰化にあっては、反日教育の影響を排除するための再教育くらいあってしかるべきだ。また、帰化に当たって日本への忠誠宣言も要求しないなどとんでもないことでないか。

八幡 和郎
八幡 和郎
評論家、歴史作家、徳島文理大学教授