「日本軍慰安婦」+「集団情緒」=反日?

2020年01月06日 11:31

李栄薫編著「反日種族主義」(文藝春秋発行)の中の「我々の中の慰安婦」を読むと、慰安婦問題がよく理解できる。日本軍の慰安婦問題は1991年、1人の金学順と呼ばれる女性が「自分は日本軍の慰安婦だった」と初めて告白してから始まり、170人余りの女性がその後、同じように告白したことから大きく報道されるようになった。

▲韓国でもベストセラーとなった「反日種族主義」(李栄薫編著)の日本語訳(文藝春秋発行)

▲韓国でもベストセラーとなった「反日種族主義」(李栄薫編著)の日本語訳(文藝春秋発行)

日本軍の慰安婦は1937年から敗戦する45年の間、軍の慰安所で歩んでいた女性たちのことだが、慰安婦の歴史は長い。朝鮮王朝時代の妓生制から、1916年から導入された公娼制、そして36年後は慰安所となった。

これだけではない。戦後も続く。日本軍が敗戦で帰国した後、1951年から54年まで韓国軍慰安婦が慰安所で韓国兵士を相手に働き、その後は米軍慰安婦と続く。慰安婦を著者は「戦争の文化」と表現し、いつの時代も慰安婦は存在してきたことを確認している。著者はそれを「我々の中の慰安婦」と呼んでいる。

「日本軍が韓国の若い女性を強制的に拉致し、日本軍兵士の慰安婦とした」「慰安婦は日本軍の性奴隷だった」といった報道は本来あり得ない。日本軍は1937年に初めて慰安所を設置したが、既にあった慰安所を軍が管理し、女性の衛生問題から性病対策のために厳格な管理をした。慰安婦には通常の公娼と同じように手当も休日もあったという。

著者は、「慰安所には、多様な形態がありました。軍が直接設置して運営したものもありますが、ほとんどは民間の業所を軍専用の慰安所に指定し、管理する形態でした」と述べている(259頁)。日本人研究者が言い出した「日本軍慰安婦=性奴隷」が如何にフェイクかが一目瞭然となってくる。

興味深い点は、韓国軍慰安婦や米軍慰安婦問題は韓国民の関心を呼び起こさないが、1936年から1945年までの日本軍慰安婦には大きな関心と国民の怒りが沸き起こってくることだ。著者は「ぎこちない不均衡」は「反日種族主義という集団情緒が働くからだ」と喝破しているのだ。

「私は米軍兵士の慰安婦だった」(米軍慰安婦数は推定1万人)と告白する女性が出てきたら、国民からの保護は期待できず、中傷誹謗すら受けるのが通常だが、「私は日本軍慰安婦だった」と告白すれば、同情と共に日本への激怒を生み出すわけだ。著者はそれを「集団情緒」という表現で記述している。米国軍への批判が少ないのは、国民の集団情緒が働かないからだ。

文在寅大統領は慰安婦問題に言及する時、決まって「女性の尊厳」を強調し、「慰安婦は女性の権利を傷つけた」と語るが、それでは51年から54年の韓国軍の慰安婦問題はどうしたのだろうか。韓国軍は1951年、将兵に性的慰安を提供する特殊慰安隊を設立している。ベトナムには派遣された韓国軍兵士のベトナム人女性への性的暴行は女性の尊厳を傷つけないとでもいうのだろうか。

「戦争の文化」(著者)の慰安婦問題は国民の「集団情緒」に訴えることが出来ないからだ。「戦争の時はいつもそうだった」という答えが返ってくるだけだからだ。人権弁護士だった文大統領がそれを知らないはずがない。しかし、日本軍慰安婦問題となれば、途端に「集団情緒」が機能するから、世論政治を施行する文大統領は声を大にして日本軍を批判するわけだ。

著者によると、韓国には本当の民族主義はなく、種族主義しかないという。「家族」という表現や概念も同じだ。朝鮮王朝時代には「家族」という言葉も概念もなく、「日帝初期になって初めて生まれた」というのだ。

韓国では家族間の絆が強いと考えていたが、実際は韓国では「家族」という概念すら久しくなかったことを知って驚いた。日本が統治してから「家族」という表現が広がっていったが、韓国では「家族」といっても家長と妻子の関係は支配・被支配の関係が長く色濃かったという。親が貧困のために娘を慰安所に売り渡すことが多く行われた。娘は親の財産のように扱われた時代だったからだ。

著者は、「日韓両国の友好関係が大きく損なわれたのは、問題の実態を客観的に理解しない韓国側の責任が大きいと思います」(217頁)と書いている。アルプスの小国オーストリアの代表紙プレッセですら、慰安婦報道は韓国情報に基づいているのだ。韓国発の嘘「慰安婦報道」が世界に定着してしまった現在、それを是正し、修正するためにはどれだけの時間と労力が必要となるだろうか。それを考えただけで、日ごろは楽観的な当方も絶望的な思いにとらわれてしまう(「日本外交官よ、『反日報道』に怒れ」2020年1月2日参考)。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2020年1月6日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。

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