政治家が選挙に勝とうとするのが民主主義:浅はかなトランプ批判

2020年01月14日 20:00

先日「トランプ大統領よりも冷静さを欠く野党」という文章を書いた。 野党の皆さんには申し訳ない題名だが、野合ではなく、政策で頑張ってほしい、という気持ちのゆえである。

Gage Skidmore/flickr:編集部

関連して、ソレイマニ司令官殺害事件以降、日本で、「トランプ大統領の行動なんて全て選挙に勝つためにやっていることさ」、といった文章が大量生産されているのが気になる。トランプ大統領の頭に政策なんてないさ、ただ選挙に勝とうとしているだけさ、という訳知り顔の文章である。たいてい分析の一つもない皮相な言葉の羅列である。

わけがわからない。これは評論家のほうが無責任だ。

政治家が選挙に勝とうと思わなくなったら、民主主義の終わりではないか。代議制民主主義は、選挙を通じて政治家の行動をコントロールできる、という考え方によって成り立っている。

選挙民は、間違った政策をとる政治家を好まず、良い結果を出す政治家を好む。選挙は、世論調査とも違う。選挙民は、長期的に望ましい結果をもたらす政策を好み、合理性がなく破綻していく政策を見捨てていく。

したがって、重要なのは、「政治家が選挙に勝とうとしている!」、などと当たり前のことを指摘することではない。重要なのは、その政治家の政策は本当に多くの選挙民に評価される政策であるか?という問いだ。その政策は、数年後の選挙で政治家を勝たせる政策か、政治家が勘違いでとってしまった政策か、を問わなければならない。

「この政治家は選挙で勝とうとして行動している!」などと指摘する暇があるのであれば、むしろ「本気で選挙に勝つために合理的に行動しているか」という視点で、政治家を評価すべきだ。

日本の野党はどうだ。いかにも選挙に勝つ気がない。現有議席数を維持するために固定ファンにアピールすることだけしか考えていない。あるいは金の取り合いと揶揄されるような合併騒ぎで、選挙民の信頼を手放していく。

選挙で勝つために合理的な行動をとることを目指さず、既得権益の維持ばかりを目指す政党ばかりになったら、民主主義は終わりだ。溶解していく。

トランプ大統領の独特のスタイルを見習え、とは言わない。しかし、既存政党も飲み込んでしまったあの強烈なアピール力は、日本の野党に最も欠けているものではないか?

どうやったら次の選挙で勝てるのか、毎日毎日、真剣に自問自答を続け、ぎりぎりの中で見出した政策論を国民の前に投げかけている野党政治家が、今の日本に、どれくらいいるのか。

自分ほど日本の将来を憂いている者は他にはいない、自分の政策論こそが絶対に最も国益にかなう、という言葉を、国民に真剣に投げかけている野党政治家が、いったいどれだけいるのか。

政治家や政党が選挙に勝つことを目指すのは当然であり、そうしてくれなければ困る。問題は、どれだけ真剣に選挙に勝とうとしているのかだ。

選挙民は、確保したい利益を持っている。そのために、選挙民は、国政を託すのに最善と思う人物・政党に、投票したい。仮に一度間違えたと思えば、次の選挙では違う投票行動をとりたい。

大事なのは、政治家が、本当に「次の選挙」「次の次の選挙」で勝つために悩みぬいているか、だ。

次の選挙で絶対に勝つ、自分自身の力で必ず勝つ、そういう気概を、日本の野党政治家に見せてほしい。

篠田 英朗(しのだ  ひであき)東京外国語大学総合国際学研究院教授
1968年生まれ。専門は国際関係論。早稲田大学卒業後、ロンドン大学で国際関係学Ph.D.取得。広島大学平和科学研究センター准教授などを経て、現職。著書に『ほんとうの憲法』(ちくま新書)『集団的自衛権の思想史』(風行社、読売・吉野作造賞受賞)、『平和構築と法の支配』(創文社、大佛次郎論壇賞受賞)、『「国家主権」という思想』(勁草書房、サントリー学芸賞受賞)など。篠田英朗の研究室

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篠田 英朗
東京外国語大学総合国際学研究院教授

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