対馬を学園都市にしてはどうか 〜 対馬市長選に想う --- 吉岡 研一

寄稿

今回の長崎県対馬市長選(2月23日告示、3月1日投開票)が、ちょっとした話題になっている。立候補者の一人が、日本第一党という悪名高い、それゆえある種の政治的傾向の持ち主からの根強い支持がある政党から出馬している事に加えて、選挙公約に原子力発電所の使用済み核燃料の最終処分場誘致を掲げているからだ(参照:長崎新聞 )。

日本第一党の荒巻靖彦氏後援会ツイッターより

かなり思い切った提案で、対馬の有権者がこぞって支持するとは思えないが、今の対馬の観光に頼った経済のあり方に問題があるのも事実であろう。

正直言って対馬は、レジャー・観光としての魅力には欠ける。しかし、歴史的に古くから 中国 朝鮮などから様々な文物が行きかい、多くの文人、墨客が逗留した。名所旧跡も多い。この様な歴史的経緯を生かせないだろうか?

一つ提案したいのは、対馬に東洋の技芸を教える学校を作る、具体的には、書、篆刻、東洋画、漢詩、そして、陶芸、文房七品を総合的に教える学校を創設または誘致したらと、私は提案したい。

対馬の中心地・厳原の市街地(Wikipedia)

対馬には、高麗茶碗を焼いている窯があるし、若田石という硯に適した石も産する。名所、旧跡、豊かな自然は、東洋の芸美を追求するのにふさわしいといえるのではないか?

生徒は、主に社会人、つまり年齢に関わらず学びたい人を対象にする。書や篆刻や東洋画もカルチャースクールの定番になっていることからも、一定の需要があると考える。会社を定年になって時間に余裕が出来てセカンドライフとして東洋芸美の探求を志す人々に、対馬の風趣に富んだ環境で、書画、作詩などにいそしむのは、他では得難い経験を得る事が出来るのではなかろうか?

無論、対馬全体を芸美の探求にふさわしい風致の街に積極的に整えて行く必要もある。それは、人が対馬に愛着を持ち、定着する要素にもなるだろう。

観光は一時的な滞在がほとんどだが、学校では、教員も生徒も数年単位で滞在するので、地元の貢献という意味では、観光より学校を創立又は誘致するほうが、より多くの益があるのではないか?

教員はもとより、学生も対馬で学び続けて、対馬で芸術家として生活する可能性もあるかもしれない。

無論これだけでなく、他にも、対馬の山林や海洋の生態、あるいは海洋発電や潮流発電などの自然エネルギーの技術を研究、開発する大学や研究所を候補にしてもいいだろう。

要は、対馬全体を学園の島にしていく。対馬にはそうなるだけの歴史的、文化的な堆積と風致に富んだ自然がある。これらを生かさない手があるだろうか? 使用済み核燃料の処理場誘致は、万策尽きてからでも遅くはないだろう。

これらの政策は、短期でドラスチックに経済を好転させることはないだろうが、持続的な発展が望めると、私は考える。

これらの作業は、単に市長一人が出来るものではなく、地方自治体、国も深く関わる事になるだろうし、そうでなくてはならない。

今回の市長選が、地方活性だけでなく地方創生の端緒になればと、私は願っている。

吉岡 研一 ホテル勤務 フロント業務
大学卒業後、司法書士事務所、警備員などの勤務を経て現職。