武漢からの救援機を無料にしたのは大失敗

八幡 和郎

新型コロナウイルスによる肺炎騒動で、政府が武漢からチャーター機で帰国した人々の航空機代を安直に無料にしたのはよろしくなかった。野党や世論が無料にしろとうるさいので、攻撃の材料とされないために先手を打ったのだろうが、これは非常に悪い影響を残すと思うからだ。

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野党が人気取りで誰かの負担を減らせといったら、さほど弊害がなければ、めんどくさいから先回りして受け入れるというのを、安倍政権はよくやるが、決していいことではない。

特に、今回のことで心配するのは、これから伝染病に限らずいろんなときに自分で避難すればいいのにしなくなってしまう。また特別機を出せと言う圧力も強まってしまうことであって、常に危険だと思った。

国民が生命の危機にさらされる緊急事態というほどでないが、それなりに危険な状況になったら政府が自ら救出するといってもそう簡単でないことが多い。また、今回のように人数が多いとチャーター機なら合理性があるが、そんなときばかりでもない。

にもかかわらず、いつでも政府がチャーター機を出してくれてしかも無料だとかなるとそれをあてにしてしまいかねない。できるだけ自分で脱出してくれないと困るのである。そして、そういうときには、格安航空券など使えないから、ますます、自力で脱出した人との不公平が大きくなる。

今回は日中関係が非常に良いときであるから円滑に特別機も出せた。そういう意味で運が良かったのである。たとえば、半島有事のときなど、韓国政府は日本人の避難に対して意地悪をするに決まっている。そんなときにどうするのか。

今回のようなケースで政府が特別機を出してしかも無料だというのが前例にならないように、政府もよほど例外的措置だと宣伝しておかないと、後々えらいことになりかねない。

チケットを買わないと搭乗させないとしなくても、東日本大震災の時、アメリカが自国民向けに飛ばした避難フライトの告知には「後から費用を請求する可能性がある」と書いてあったようだが、そういうことでもよかったと思う。