森ゆうこ議員提訴と、それよりずっと大事な取組

原 英史

新型コロナウィルスに関する森ゆうこ議員の国会質問は、良い質問だった。

1月30日予算委員会で、「指定感染症」政令の施行前倒しを安倍総理に迫り、結果的に翌日、前倒しの閣議決定につながった。もちろん、国会質問だけで政府が動いたわけではなかろうが、迅速な対応是正につながったことは間違いない。これぞ、国会でなされるべき仕事だ。

1月30日の参議院予算委(参院ネット中継より)

しかし、だからといって、これまでの森議員の所業を帳消しにはできない。
昨年秋の臨時国会で、森議員は、私を名指しし事実無根の誹謗中傷を行った。私の自宅住所の掲載された資料を国会で配布し、ネットで拡散もした。繰り返し訂正・謝罪を求めてきたが、いまだに対応がない。

参議院に対し、森議員の懲罰を求める請願も行った。
国会議員の国会内での言論は、免責特権(憲法第51条)の対象で、「国会外」では責任を問われない。つまり、「国会内」で自律的に対処するのが本筋だ。

しかし、この請願も黙殺された。国会議員の多くは、6万7千人のネット署名に支えられた請願に無反応だった。

次のステップをどうすべきか、相当迷った。
私個人の名誉回復は、国政の諸課題に比べれば、ちっぽけなことだ。これ以上、無関係な国会議員を煩わせるのは気が進まない。

一方で、このまま放置・黙認すれば、同様の事案が繰り返され、ほかの人たちも被害にあう。

考え抜いた末、結論は二つだ。
第一に、私への人権侵害について、森議員を提訴する。訴状準備が概ね整ったので、速やかに東京地裁に訴状を提出する。

免責特権があるから、国会内での言論は原則、訴訟が難しい。
だが、森議員は、私の自宅住所情報を、ネットで拡散した。これは国会外での不法行為だ。

また、毎日新聞の誤報記事をパネルにして国会で掲げ、これもネットで拡散した。単に新聞記事を載せただけと思うかもしれないが、転載やリツイートも不法行為を構成する。しかも森議員は、記事中の私の顔写真を拡大し、私が犯罪相当の行為をしたとの印象をより一層強めてもいる。

森議員とはあとは、法廷で決着をつける。

第二に、私個人の事案とは完全に切り離し、より本質的な取組として、国会での言論を検証する独立機関を作ろうと思う。

本来、国会での言論は、国会内で自律的に検証するのが筋だ。しかし、実際上は限界がある。なぜなら、国会は政治の場であり、どうしても、真実か否かより、数の力、政治的な取引が優先されるからだ。
そこで、国会の外に、中立的・客観的な、事実に基づく検証を行う機関を設けたい。検証結果は国会に突きつける。いわば、“国会版BPO”だ。

あくまで、事実に基づく検証のみを行う。政治的立場には一切とらわれない。「保守系」「リベラル系」などとみられた途端、この試みは失敗に終わる。

政策・経済・メディアの専門家や、幅広い方々に参画を呼び掛け、信頼性ある独立検証機関を立ち上げたい。
当面、オンラインサロン「情報検証研究所β版」で、検証の試行を開始する。(国会質疑の検証と並行し、報道の検証も行う。)

これは、私個人の事案とは比べ物にならない、大事な取組と考えている。
「思い込み、言い逃れ、レッテル貼りの言論」がはびこるほど、社会の分断は進行し、民主主義の機能不全につながる。社会の未来を守るため、「事実に基づく言論」の拡大は限りなく重要だ。
いわば、綻びの目立つ民主主義のインフラ補修プロジェクトだ。

ぜひ多くの方々の参画・助力をいただけたらと思う。