新型肺炎「日本政府に海外から批判」という“捏造”報道

2020年02月19日 16:01

乗客の下船開始を伝えるNHKニュース

日本のマスコミ報道を見ていると、海外からクルーズ船などについての新型肺炎対策への非難轟々のように見える。

しかし、国際ビジネスマンの真砂太郎氏の言葉を借りれば、実相は次のようなものだろう。

NHKは、BBCを始め海外のマスメディアが日本の対応を批判していると、9時のニュースで報じたが、テレビで見る限り、海外メディアの東京特派員に取材し、日本政府の対応を批判した発言をさせて放映したのであって、報道機関として批判したわけではない。BBCのホームぺージに掲載された記事を見ても、日本の対応を批判してはいない。さすが上位先進国最低の信頼度のNHK。(出典:真砂氏Facebook

新型肺炎ウィルスの感染力の強さ、感染率が予想以上に高かったことを知っている今の段階では、患者の生活の快適性などを犠牲にしても閉じ込め乗員などと乗客の接触を最低限にすることに重点を置くべきだったとはいえる。

しかし、それ以上には、今後の検証を得て問題がなかったかどうか、改善点がないか評価すべき問題であって、いま、忖度や売名行為で批判することはいかがかと思う。専門家で批判している人もいるが、たとえば癌の患者を前に専門医に意見を言わせたら、それぞれの流儀に従って意見をいうわけで、誰にもそれぞれに一理はあるが、テレビでもっともらしいことをいってるから、厚生労働省は間違っているときめつけるのは無茶だ(私も厚生労働省をそんなに信頼しているわけでないが、あまりひどい言われようなので義侠心で肩を持つことにしている)。

そして、本件を、とくに日本政府を支持するとかしないとか中立的に、国際的な常識のある人間の視点から整理するとこんなことになるかと思う。

第一に、たしかな話は、船内の感染の広がりが想定外というほどではないが、予想以上に広かったということだ。しかし、患者が出てからもバイキング方式での食事提供やパーティーを繰り返してきたクルーズ船の対応に明らかな問題があったことは言えても、日本側の対応に問題があったと決めつける根拠はない。

船内で消毒作業を行う自衛隊員(自衛隊ツイッターより)

発症していない患者も外から鍵でもかけて閉じ込めるまでするとか、乗員には船内では常に防護服を着せとくとかすれば完璧だろうが、精神衛生上の問題もあるからそこまでやるかということもある。もちろん、予想以上に感染力が強いという現在の知識からすれば、弊害はあっても、患者にもっと窮屈など生活の質を低下させてでも厳しく隔離しておくことに傾いていた方が良かったとは言えるが、それは結果論だ。

船内の空調を通じて広まったのでないかという可能性はゼロでないが、それは、特別の病棟にでも入れない限り、たとえば、ホテルなどに入れても同じようなリスクは存在する。

第二に、ダイヤモンド・プリンセスの3711名もの乗員・乗客を日本に上陸させてそれぞれ隔離するということは非現実的である。

一方、1000人を超える日本人がのっているのであるから、英国船だから追い返すのも現実的でない。日本人だけの上陸を認めたら非難囂々だろうからつまるところ、現状よりよい知恵があるわけでない。

第三に海外マスコミが日本を批判などほとんどしてない。例えば『現代ビジネス』では飯塚 真紀子(在米ジャーナリスト)という人が、『コロナウイルス「日本政府のヤバい危機管理」を世界はこう報じている』と報じているが(2/18(火) 6:01配信)が、記事の中身は

日本政府にはいったい危機管理能力があるのだろうか?アメリカのメディアはそんな疑問を抱いているに違いない。彼らの報道からは、日本政府に対する不信感がありありと伝わってくる

というわけで、書いてないことを忖度して想像を膨らませているだけに過ぎない。悪質なマッチポンプだ。『9・11の標的をつくった男 天才と差別ー建築家ミノル・ヤマサキの生涯』(講談社刊)という本のタイトル見れば想像力豊かな方であることが分かるだろう。

第四にこれはどこの政府が対応すべきか、船籍がある英国の責任はどうかといえば、「新型肺炎 クルーズ船対応にルールなし 船籍国・英政府の動き見えず」(産経新聞)ということで、要するに前例のない世界なのである。英国にどうするべきかボールを投げて日本は無理のない範囲で協力するということは論理的にはありえたが、英国がこういう場合に寄港を拒否するのこそ国際法に違反するとかいって押し問答になったときに1000人の日本人乗客がいて日本近海にいるものを前にチキンレースできるかといえば、現実的でない。

第五に、アメリカ政府が引き取ってくれたのは厄介払いで誠に歓迎だが、アメリカ政府が感染していたら自国人でも引き取らないというのは一貫しているし、感染しているかどうかも分からないままの自国人を引き取るのも同様だ。

感染していないのが分かったことは準備が整ったので、希望者は連れて帰って2週間、隔離しておくといっただけだ。

ニューヨーク・タイムズ(電子版)は見出しで「感染船を脱出したが、帰国のフライトも安全ではなかった」と報じた。米政府は当初、感染者はチャーター機に乗せない方針だった。しかし、乗客らが下船し搭乗機に向かうバスに乗った際に、帰国予定者のうち14人にウイルスの陽性反応が出たことが判明。米政府は14人の帰国を認めた。

チャーター機に乗った女性は同紙に「(帰国者に感染者がいることを)上空に至るまで知らなかった」と説明。同紙は「(帰国者は)12日間船に閉じ込められた後、必死に避けてきた病原体の保有者と飛行機を共有することになった」と報じた。帰国者は米国でも14日間の隔離措置が取られる。米国に帰国せず船にとどまった男性はFOXニュースに「残って良かった」と話していたそうだ。

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八幡 和郎
評論家、歴史作家、徳島文理大学教授

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