岩田健太郎氏が全部正しいことはありえない

2020年02月20日 06:01

神戸大学・岩田健太郎教授が、2月18日、ダイヤモンド・プリンセス号内の様子を動画をYouTubeにアップしで報告し百万回を超える再生回数を記録し、CNNでも紹介され大反響だ。

岩田健太郎氏YouTubeより(※現在は非公開)

私も非常に強い印象を受けたが、しかし、拙速な評価は考え物だと考え、さっそくFacebookで次のように書いた。

それなりに説得力はあるが、一般論として一方的に自分の意見に固執する医者の意見は眉唾なので慎重に確認することにしています。セカンドオピニオンをよく聞き理解してから参考にしましょう。批判するときに、おそらく、厚生労働省はこのように考えてこうしているのだろうがというように説明されると割に信用するのですがこのトーンでは一方的すぎる。

岩田教授は医療関係者の手引きで正規の手続きをとらずに船内に入り視察したようで、本来分けるべきはずの、(ウイルスの全くない)緑ゾーンと(いるかもしれない)赤ゾーンが峻別されていないとし、

「そもそも常駐してるプロの感染対策の専門家が一人もいない」

「ちょっと短期的にいますが意思決定ができない。厚労省の言うことを聞くイエスマンだけが中にいることを許されます」

「アフリカに居ても中国にいても怖くなかったわけですが、ダイアモンドプリンセスの中はものすごい悲惨な状態で、心の底から怖いと思いました。これはもうCOVID-19に感染してもしょうがないんじゃないかと本気で思いました」

などと述べた。

“ドクターX”の言うことを鵜呑みにできない

いってみれば、珍しい病気に私がかかって大学病院に入院していたとしよう。内科と外科の先生も含めて検討し「手術しないで内科療法で治療しよう」と言われていたとして、そこのよその病院の若手の医者が珍しい病気だからみたいと友人の手引きでやってきくる。

そして「あの病院はくずだ、すぐ手術だ、外科の医者も関与してるといっても、あそこではなんとか教授が実力者だからイエスマンしか意見を聞いてもらえないからだめだ」と騒いでいるというようなものだ。

そういうことになれば、私ならそれなりの評価がある医者のいうことだからということで、あちこちセカンドオピニオンを求めて聞いてまわるし、疑問は主治医にもぶつけてみる。しかし、少なくとも、その騒がしい医者の言うことを鵜呑みにはしない。

ところが、政治家からマスコミまで岩田氏にあっという間に洗脳されてしまったようである。みなさん米倉涼子主演の『ドクターX~外科医・大門未知子~』でも見て一匹狼のスーパードクター願望になってしまったらしい。

音喜多駿参議院議員も、「専門家が決死の告発、記者周辺も感染…国会は桜で、小泉大臣は新年会に出席か」とかアゴラに書いているが、別に岩田氏が「決死の告発」などしているわけでないし、政治家ならそういう扇情的な言葉で対応するのはよろしくないと思う。

意見は大いに聞くべきだが、全部が正しいのか?

岩田氏については、ある医療関係者は「細菌感染症、特に抗菌薬の専門家ではあることは確かで、彼の専門分野である細菌感染症や抗菌薬の適切利用についての啓蒙活動はそれなりに評価されてはいるし、医療現場の人でも岩田教授のシンパは結構多い」と指摘する。

その一方で「他の分野、例えばウイルス感染症とかの知見は疑問。ナルシストで、専門外の分野や専門分野の中でもやや弱い所も知ったかぶる態度をとるとか、講演会であちこち行くのに傾きすぎという批判もあるし、感染症治療についてそんなつよいのだろうかというあたりか」と評していた。

その意見は大いに聞くべきだが、彼が言っていることが全部正しいと信頼できるタイプでもなさそうだ。

また、ウィキペディアでは、「はじめ『最上丈二』の筆名を用い、のち多くの啓蒙的著作で知られ、「ルサンチマン」をキーワードに社会を分析するその姿勢が評価されている」とした上で、2019年7月12日のTwitterにて以下のような過激な投稿をしたことも紹介されている。

新型肺炎問題については、「「新型肺炎」日本の対策は大間違い」、は大間違い』という主張を展開したり、BLOGOSなどで、騒ぎすぎだという方向で過激な論陣を張ってこられたようである。

また、はやとちりもあって、岩田氏のYoutubeではダイヤモンドプリンセスの乗客の発熱・発症記録がないと過激に批判しているが、それは誤認できちんととられている。この記録に基づき流行曲線(エピカーブ)が作成され、今日発表されるという。

これによると、2月5日以前に殆どの発症者が感染しており、2月5日以降に船内で感染したのは乗務員と例外的な乗客に限定されているようだ。そうだとすると厚生労働省の不手際で拡散したとはいえなさそうなのである。

もちろん、厚生労働省がずさんなことは、登録をせずに岩田さんを船内に入れてあちこち歩かせていることでわかる。岩田さんが厚生労働省の誰かに頼んで入れたと言うことは他にも同じことをしている人がいるはずだ。これは由々しき事態である。これでジャーナリストなどを入れていたとしたらそれこそ感染が広がる原因になる。

そういう意味において厚生労働省は岩田さんの潜入ルートについてきちんと調べて処罰をしないと大変なことになりかねないのかもしれない。

全部が嘘ではないが、危惧すること

もちろん私は、彼が言うことが全部嘘だなどと言うつもりはない。ただ中立的な専門家だとか、感染症の日本でダントツの専門家とか言う目では見ないほうがよさそうである。そのあたりをNHKやCNNが騙されて世界中に広めているのは残念だ。

言論の自由ではあるが、日本政府が一生懸命、面倒を見てきたのに、世界から恩を仇で返されるようなことにならないといいと思うし、本来の対策で忙しいときに、この岩田氏のような現場のモティベーションを低めるような言い方で、自分だけがスポットライトを浴びたのではせっかくのユニークな見識がいかされないことになりはしまいかと危惧するのである。

それから、クルーズ船の乗組員も乗客もほとんどが外国人であり、日本人ばかりのときのような行儀良く整然とした対応など意思疎通の困難もあってできるはずないのである。また、まさか全国から大量に医師や看護師をこの船に投入もできない。

感染を防ぐためだけだったら、もっと厳しく部屋に閉じ込めといたほうがいいのだが、精神衛生上の配慮も無視できないなかですべての面で満足できる対応など現実にできるはずなかろうとも思うのである。……くれぐれも言っておくが、私は厚生労働省のクルーズ船に対する対策をすべて支持するわけでも岩田氏の意見にもっともな点がないともいってないので最後に念を押しておきたい。

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八幡 和郎
評論家、歴史作家、徳島文理大学教授

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