新型コロナ患者の扱いは「インフルエンザ並み」に

池田 信夫

日本で新型コロナウイルス感染者が増えるペースは、それほど速くない。次の図のように対数グラフで描くとわかるが、PCR検査で陽性になった感染者の増加率はほぼ一定で、おおむね1週間で2倍になっている。今の感染者は約200人で、このうち80%が入院し、毎週10%が退院している。

厚労省の資料からアゴラ編集部作成(クリックで拡大)

これはPCR検査がボトルネックになっている可能性もあるので、週明けから増加率が上がるかもしれないが、とりあえず今後も感染者が毎週2倍のペースで増えると想定すると、4週間で24=16倍になり、3200人に増える。この80%が入院して10%が退院すると、入院患者が全国の感染症指定医療機関のベッド数2000を超える。

安倍首相はきのうの記者会見で「さらに5000のベッドを増やす」と約束したので、合計7000のベッドがあく予定だが、それでも感染者は6週間で26=64倍になって1万人を超え、4月上旬には指定医療機関のベッドがすべて埋まる計算だ。

今はサンプルが少ないので、これはざっくりした概算だが、すでに北海道では指定医療機関のベッドがほとんど埋まり、スタッフも足りなくなっている。問題は感染者が増えることではなく、この病院がパンクすることだ

インフルエンザ並みに扱えば病院はパンクしない

インフルエンザでは、こういう問題は起こらない。患者のほとんどは外来で診察を受けて帰宅し、重症患者以外は入院しないからだ。昨シーズンのピーク時には1週間に200万人以上の患者が発生したが、入院患者は通常の病棟で処理できた。

上の図でもわかるように、新型コロナ感染者の中でも重症患者は10%程度である。それ以外の入院患者は、インフルエンザなら外来で帰宅する人が多いと思われるが、新型コロナは指定感染症(2類)なので、検査で陽性になると簡単に帰宅させられない。

この規制を緩和して軽症患者を帰宅させれば、入院患者の負担は減る。重症患者(20人)が今の300倍になっても病院はパンクせず、今後8週間ぐらい(4月末まで)はもつ。インフルエンザなら終息する季節である。

新型コロナウイルスがどの程度の温度で消えるのかわからないので楽観はできないが、感染者を減らすのは効率が悪く、膨大なコストがかかる。大事なのは軽症患者には外来で対応し、入院患者を抑制することだ。新型コロナの感染力も致死率もインフルエンザとあまり変わらないので、軽症患者にPCR検査は必要ない。

きのう安倍首相が表明したように「希望する患者には、医師が必要と認めたらすべてPCR検査を受けさせる」という政府の方針では、軽症患者が病院に殺到して医療が崩壊する。法令を今から改正することはむずかしいので、医師が検査の受診を抑制して入院患者を減らすべきだ。

新型コロナは特別な感染症ではない。日本には毎年1000万人のインフルエンザ患者に対応できる医療インフラがあるので、それで処理できるように(規制も含めて)体制を立て直せば十分対応できる。政府が過剰反応して一斉休校するのは愚の骨頂である。