官邸記者会見:安倍首相vs蓮舫議員の質疑で解けた長年の疑問

2020年03月04日 06:01

先の土曜日の夕方6時。青山一丁目で楽しい夕べの最中でしたが、私は、ちょっと失礼をして、30分余りずっとスマホに耳を傾けておりました。そう、この首相会見は、割と大事な会見になるような予感がありました。

会見後、ネット上で、首相会見の評判は芳しくありませんでした。

私が注目する若き保守論客、岩田温氏が、ツイッターで次のようにと呟かれたのに対して、

私は、こう呟きました。

これは、実は、これまでの安倍首相記者会見でずっと感じてきた疑問でもありました。

2日の参議院予算委員会での安倍首相対蓮舫議員の質疑は、この長年の疑問を思わぬ形で、すなわち安倍首相のとても正直な答弁で、明らかにしてくれるものでした。こればかりは蓮舫議員に感謝しなければなりません。

(編集部より:記者会見に関する質疑は動画の2:23〜4:25)

自民党政権のみならず、民主党政権や細川政権を含めて、少なくともこの30年の歴代首相会見で、幹事社質問は必ず事前に取っています。

ただ、その後の質問は、広報担当秘書官が情報収集し想定対応はするものの、それでも事前入手できないようなガチの部分が必ず1問や2問はあったと思います、少なくとも第2次安倍政権以前は。

ある意味、安倍政権は、スタッフの努力もあって内閣記者会を上手にコントロール下に置くことに成功してきた訳です。

首脳の記者会見で、ここまでメディアが政府側のコントロール下に置かれるというのは古今東西珍しいと思います。本来は権力を監視する立場にある内閣記者会がよくこれで持ったと思います。かつての内閣記者会には決して権力に忖度しないような「侍」が必ず何人かはいたと聞きますが、最近は記者さんも従順というか草食化しているのかもしれません。

このあたりはかつて官邸クラブ(内閣記者会)で毎日新聞の官邸キャップをつとめられ、かつ、安倍首相とも親交のある、山田孝男さんあたりの見解を伺いたいところです。山田さん、後輩に嫌われることなんて気にしないで、是非とも風知草で書いてくださいな。

それにしても、首相の予算委員会での率直な答弁は、「安倍首相良い人説」を裏付けるに足るものだと思います。どなたが首相であれ、ここ一番の記者会見で恥はかきたくないし、大向こうをうならせるような発言がしたいものです。首相側近の秘書官や内閣広報官は普段の人間関係を駆使して記者の質問を事前に入手しようとこれまでも努力してこられました。

しかし、首相記者会見にはいわゆる番記者以外の大物記者も来られるので、日常的に情報が欲しい番記者だけではなく、必ず、えぐるような質問を希望するうるさがたもおいでで、なかなかそうは簡単に問屋が卸さぬものです。そんな中で、安倍首相を支える官邸官僚たちが、恐らくは長年の人間関係、飴と鞭を駆使して質問を入手する、あるいは質問を登録しない記者は指名しないという慣行を作り上げてきたのではないかと想像します。

その阿吽の呼吸の舞台裏を、野党に追及されるやあっさりと率直、無垢に語ってしまう首相の人柄の良さに私は微笑まざるを得なかったのです。広報官も秘書官もよくぞ椅子から転げ落ちなかったものです。

長期政権で官僚の忖度ばかりが批判されますが、どうやら官邸を中心にメディアにも忖度が生まれているのかもしれません。政権に批判的な朝日新聞の幹事も含めて、ここまで良好な記者会との関係を築き上げてきた官邸に、私は皮肉でもなんでもなく敬意を表します。

鳩山内閣時代の記者会見

かつての首相会見のオープン化を急いで、結果として(それが主因ではなくもっと本質的な政権運営能力の問題が原因だったけれど)キリモミ状態になった民主党政権は、この安倍政権のような執念にこそ学ばねばならなかったのです。格好をつけるだけでは政権は維持できないということです。

しかし、もし、内閣記者会に、少しでも「誇り」があるなら、次回会見以降同じ慣行をそのまま続けることは不可能でしょう。今回の記者会見と国会質問を機に、多くの日本人が、官邸と内閣記者会の“プロレス興行”に気付いてしまったからです。

政治とメディアの関係を、首相会見の持ち方から見直していくことは、ひとり安倍政権の問題ではなく、日本の政治とメディアの本質に関わる問題だと思います。今回の問題を機に、是非ともメディアが今後の報道のあり方、在野の言論機関と権力の緊張関係というものを考え直していただきたいと思います。

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松井 孝治
元内閣官房副長官、慶應義塾大学教授

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