(編集部より:本稿は、原英史氏を含む連名による提言になります)
新型コロナウィルスへの対応策として、テレワーク、遠隔医療、遠隔教育、各種手続きのデジタル化などを緊急に推進すべきです。これは同時に、今後のさらなる超高齢化に対応した社会のバージョンアップの機会ともなります。
そのひとつとして、休校に対応した遠隔教育の実施を提案します(小中学校を念頭におきますが、これに限定するものではありません)。
休校が続く中でも、子供たちの学びの機会を継続し、生活の場がなくなることによる不安を少しでも解消するため、緊急に実現すべきと考えます。
できることならば、教師と生徒をつなぐ同時双方向型のオンライン授業などを含め、最新のICT教育を提供することが最善です。しかし、これは日本全国のすべての子供たちに直ちに提供できる環境にありません。また、民間でさまざまな教育コンテンツの提供がなされていますが、自ら適切に活用することが困難な子供たちも多く存在します。
そこで、当面すぐできることとして、放送とネットを併用し、市区町村教育委員会とも連携して、休校中の子供たちに学びの機会を最大限提供することを提案します。特に、公共的使命をもち、日本全国どこでも視聴できるNHKの活用が有効です。
NHKの活用
1. NHKにおいて、Eテレの放送波(チャンネルでの番組放送)、NHKプラス、NHKアプリを活用し、休校中の子供たち向けのコンテンツを集中的に提供すること。その際、
・Eテレの放送波は、既に一部時間帯で複数チャンネル化(Eテレサブチャンネルの放送)がなされているが、拡大・活用を図ること。
・学習の素材となるNHKのアーカイブを無料開放すること。さらに、総合学習の題材となる番組の制作などを検討すること。
・NHK自身の制作するコンテンツに限らず、文部科学省「学習支援コンテンツポータルサイト」、経済産業省「未来の教室」で紹介されている民間作成の教育コンテンツ等の利用も検討すること。
(民間で提供されている教育コンテンツ等の例)
(文部科学省)臨時休業期間における学習支援コンテンツポータルサイト(子供の学び応援サイト)
(経済産業省) 新型コロナ感染症による学校休業対策『#学びを止めない未来の教室』
(注1)NHKプラス:3月からスタート、同時配信・見逃し配信など。
(注2)NHKアプリ:NHK for School、NHKキッズ、NHKゴガク、NHKオトッペずかん など
市区町村教育委員会等
2. 市区町村教育委等において、
・上記1や民間で提供されている教育コンテンツを最大限活用し、子供たちが学びを継続できるよう、学校からの適切な指導や情報提供を支援すること。
・必要に応じ、地域のケーブルテレビ(コミュニティチャンネル)などとも連携し、家庭向けの情報提供、子供たち向けのよりきめ細かな教育コンテンツの提供(例えば、地域の学校の先生からのメッセージなど)なども検討すること。
文部科学省
3. 文部科学省において、
・突然の休校対応に追われる市区町村教育委等や学校現場の負担を軽減しつつ、子供たちのために最善の対応がなされるよう、必要なサポートを行うこと。
・将来のより進んだICT教育の実現に向けて、遠隔教育の効果・課題等を検証するデータ収集の機会にもすること。
【賛同者】(五十音順)
(注)個人としての賛同であり、所属組織を代表するものではありません。
- 朝比奈一郎 青山社中株式会社代表
- 磯山友幸 経済ジャーナリスト
- 宇野文夫 金沢大学先端科学 社会共創推進機構 特任教授
- 梅嶋真樹 慶應義塾大学大学院政策メディア研究科 特任准教授
- 加藤康之 TIE社長
- 岸 博幸 慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科 教授
- 菊池尚人 慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科 特任教授
- 駒崎弘樹 特定非営利活動法人フローレンス代表理事
- 近藤則子 老テク研究会 事務局長、NPO法人ブロードバンドスクール協会 監事
- 清原慶子 前三鷹市長・メディア学研究者
- 菅原晶子 公益社団法人経済同友会常務理事
- 田崎健太 ノンフィクション作家
- 冨山和彦 株式会社経営共創基盤代表取締役CEO
- 竹中ナミ 社会福祉法人プロップ・ステーション理事長
- 中村伊知哉 慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科 教授
- 林いづみ 弁護士
- 藤原 豊 一般財団法人未来を創る財団 副会長
- 森下竜一 大阪大学大学院医学系研究科臨床遺伝子治療学教授
- 八田達夫 アジア成長研究所 所長
- 八代尚宏 昭和女子大学グローバルビジネス学部長・特命教授
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柳川範之 東京大学大学院経済学研究科教授ほか(さらに調整中)
(起草文責)
- 原 英史 株式会社政策工房代表取締役
- 吉井 勇 株式会社ニューメディア 月刊ニューメディア編集部ゼネラルエディター