愛人に77億円!スペイン前国王に新たなスキャンダル

2020年03月18日 06:00

3月に入ってスペイン電子紙『OK Diario』が同月3日付けで、スペインの前国王ファン・カルロス1世(在位:1975-2014)がサウジアラビアの当時国王アブドゥラ・ビン・アブドゥル・アズィーズ(在位:2005-2015)から2008年に1億ドル(106億円)の送金を受け、2012年に前国王は愛人コリーナ・ツー・ザイン・ヴィトゲンシュタインと彼女の息子アレクサンダーになんと6500万ユーロ(77億3500万円)を振り込んでいたことを報じた。(参照:okdiario.com

ファン・カルロス1世とコリーナ・ツー・ザイン・ヴィトゲンシュタイン(Wikipedia、Vozpópuliより:編集部)

それは同時にスイス紙『Tribune de Genéve』でも報じられた。直ぐその後、スペインの数紙がそれに追随した。

彼女のロンドンの弁護士ロビン・ラスメルは『OK Diario』の取材に対して、「彼女はファン・カルロス1世からの送金を受け取ったもので、要求したのではない。国王が健康に問題を抱えていた数年、彼女が介護した。それで国王は彼女と息子に愛情を感じるようになった」と答えたのである。要するに、その返礼として国王は彼女に金銭でそれに応えたということなのである。介護で6500万ユーロ!

因みに、6500万ユーロがコリーナの口座に送金されたのは、前国王が彼女を同伴してアフリカのボツワナで象狩りをしていて腰を痛めて急遽マドリードの病院に搬送されたというスキャンダルのすぐあとだった。この旅行には、彼女の息子アレクサンダーと最初の夫フィリップ・アドキンも同伴していた。

彼女の説明によると、アドキンは前国王と仲の良い友達になっていたそうだ。また、アレクサンダーも前国王から恰も息子であるかのように厚遇を受け、毎年クリスマスには高額の腕時計をプレセントしてもらっていたという。

このスキャンダルが影響して、当時まだ国王だったファン・カルロスは息子フェリペへの譲位を内心決めたようだ。息子のフェリペがフェリペ6世として王位に就いたのはその2年後の2014年6月であった。

また、このスキャンダルのあと、コリーナはスペイン王家では歓迎されない人となった。

それ以後、スペインの諜報機関である国家情報センター(CNI)が当時スイスに在住していたコリーナを密かに追跡し始めたのであった。狙いは彼女の隙間をぬってファン・カルロス国王と彼女の間の経済的関係を証明する国王が不利になりそうな証拠書類を盗み取る為であった。

コリーナの口座に前述金額を振り込んだ以外に100万ユーロ(1億1200万円)を別の過去の愛人にも振り込んでいたのであるが、スイスの検察が2018年から調査に乗り出したのは、サウジの国王から前述した1億ドルがバハマ諸島に本社を構えるプライベートバンクミラボー銀行(Banque Mirabaud)のラクム基金(Lukum Fundation)に振り込まれていることであった。

勿論、この基金の口座名義人はオフショア取引を専門にした弁護士アルトゥロ・ファサナとダンテ・カノニカの2人で、ファン・カルロス前国王の名前はどこにも見当たらない。しかし、イヴ・ベルトサ検事が指揮するスイスの検察はこの口座が前国王の隠し資金の口座であると推察している。

サウジからの1億ドル送金がミラボー銀行で不審がられないように、サウジの当時外相だったアデル・アル・ジュベイルから口座名義人への付与であるという説明を同銀行支店長に行ったという。

尚、ラクム基金はコリーナに6500万ユーロを送金した以後この口座は解約された。
(参照:eldiario.es

スイスの検察は。サウジの財務省から送金されたこの1億ドルはスペインがサウジから受注して建設した高速列車に対して前国王に支払われたコミッションではないかと推察している。その起因となったのは、スペイン電子紙『OK Diario』と『Español』が以前コリーナがファン・カルロス国王はメッカの高速列車のコミッションを得ようとしていると発言した録音を公開したからであった。

その裏付けとなったのは国王がこの鉄道の建設に参加したスペインの企業グループに対して建設費の値引き交渉を成立させたからであった。その結果、サウジにとって15億ユーロ(1785億円)の節約に繋がったと言われている。(参照:vozpopuli.com

国王がコミッションを貰う?!といったことなど日本では考えられないことであるが、ファン・カルロス前国王がコミッションを貰っているはずだという噂はスペインではかなり以前から話題になっていた。

ところが、この推測には無理がある。サウジから送金が行われたのは2008年7月31日で、高速列車の落札が決定したのは2011年10月であった。この二つの出来事の間に3年の開きがある。ということで、落札する前にコミッションを貰うというのは考えられない。

そこで、スペイン電子紙『El Confidencial』が3月5日付で指摘しているのは以下の通りである。

サウジから送金の1週間前に両国の関係強化の為の「スペイン王国とサウジアラビア王国一般協力合意書」がマドリードで交わされたのである。その為の会議が同年7月16-18日にもたれ、両国王も出席。そしてファン・カルロス国王はアブドゥラ・ビン・アブドゥル・アズィーズ国王にスペイン王位の最高位の騎士団勲章として現存している金羊毛勲章(トイソン・デ・オロ)を、同様に現王位継承者のムハンマド・ビン・サルマン皇太子にはカルロス三世騎士団勲章をそれぞれ授与したのである。

アブドゥル・アズィーズ国王はこのスペイン国王からの歓迎に非常に満足したという。そのあと8月8日にサウジ国王から1億ドルが送金されたのであった。

恐らくこの出来事以外にも他のことでサウジからコミッションを送る理由があったように推察される。それはいずれ解明されるはずである。(参照:elconfidencial.com

前国王の愛人への高額の付与は早速政党間でそれを議会で調査委員会を設けて調査追跡するか否かで議論が始まった。社会労働党とポデーモスの連立政権でポデーモスは委員会を設けることに賛成を表明し、社会労働党はそれに反対した。2党による連立政府の閣僚の間で双方の意見の食い違いが目立つようになっている矢先に、新たにこの問題が発生したのである。

ポデモスはスペイン王家も健全な民主化と国家の現政治体制を守る為にも前国王が違法行為を犯したのであれ国民と同様に裁かれるべきだという意見だ。それに他の複数政党が賛成している。一方の社会労働党や右派政党はその当時がまだ国王で、国王は不可侵特権を享受しており、また現在王位を退位したとはいえ国王は裁きの対象にされるべきではないという意見だ。結局、今のところ審査されないことになった。(参照:eldiario.es

尚、スペインの検察はスイスの検察により詳しい情報の提供を依頼した。スイスの検察はこの件に関係して更に調査を進めている。今後の成り行きが注目される。

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白石 和幸
貿易コンサルタント、国際政治外交研究家

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