陸自のオスプレイは空海自に移管すべき

陸自がオスプレイを導入すると航空隊は壊滅状態になります。それを回避するためにはこれを海空自衛隊に移管するべきだと思います。

米海兵隊所属のMV-22(Wikipedia)

陸自が17機のオスプレイを導入する予算は初期費用含めて約3600億円。ざっと陸自のヘリ調達予算の12年分です。オスプレイ1機あたりの維持費が10億円と言われておりますから、17機ならば毎年170億円が必要です。それは陸自のヘリ整備予算の3分の2にあたる金額です。

現在ですらヘリの稼働率は低く、パイロットの飛行時間は、かつては120時間以上あったのが資格維持がギリギリの80時間程度で北朝鮮以下といわれています。

これでオスプレイを導入すればどういうことになるか子供でも分かる話です。これは単に航空隊だけの話ではなく、陸自全体の予算が逼迫するということです。これに加えて、イージス・アショアも導入される予定ですが、それが実現されたら状況は末期的になるでしょう。このような事態でも防衛省も陸幕も危機意識がないように思えます。

それを回避するためにはオスプレイの調達をキャンセルすればいいのですが、それは政治的にできないでしょう。そうであれば次善の策として海空自にオスプレイを移管するべきです。

訓練用の1機は空自に移管して、これを空海自で共同利用する。4機は特殊作戦用としてCV-22に変更して空自が運用する。特殊作戦群を輸送する特殊作戦用航空機材は第一ヘリ団のUH-60しかありません(特警隊用としては海自のMCH-101のうち2機がそうゆう仕様になっています)。固定翼の機体がありません。ですからCV-22をそれに当てます。

せっかく特殊部隊があるのにその投射能力がないのは平和ボケもいいところです。島嶼防衛の尖兵たるべき特殊作戦群は習志野市で留守番していればいいのでしょうか。防衛省も陸幕も特殊部隊の運用を全く理解していないとしか言いようがありません。日本の規模の先進国で特殊部隊用の固定翼航空機がないのは極めて異常です。

残りの12機は海自のDDHの輸送用に転用します。これは米海軍が空母の輸送用のC-2Aグレイハウンドに後継として採用したCMV-22Bに変更すれば宜しい。海自ではDDHの輸送用のUH―XとしてMCH-101の汎用機型を導入する予定でしたが一部の将校と内局官僚が「反乱」を起こして、任務に不適合なSH-60Kベースの機体を導入すべく独断専行を起こしました。

これを諌めた当時の海幕長が逆に叱責、処罰されるという異常事態がおこりました。

SH-60Kベースの機体では想定されている、ヘリのエンジンやローターブレードの輸送も、大人数の救難もできません。また予定されているF-35B用のエンジンの輸送もできません。ならば陸自が導入予定のオスプレイをCMV-22Bこれに当てれば宜しい。

またCMV-22Bならば早期警戒機としても使えるでしょう。例えば英海軍のコンペでは「CERBERUS」に負けたロッキーUKの、AESAレーダーシステムをCMV-22Bに搭載すれば、ヘリよりより高い高度を、より長時間滞空できます。

これはイスラエルのIAIエルタ製AESAレーダー「EL/M-2052」 を搭載したセンサーポッドを使用するもので、固定式なので全周を常に探知はできないが軽量であり、無人機搭載に向いています。もともとAW101用に開発された機材なので、多少の改良は必要でしょうがオスプレイにも搭載はできるでしょう。

日本の空母保有は現実的か?~マンガ「空母いぶき」のリアリティ その3Japan-In-depth)

そもそも艦隊防衛のためには艦隊自前の早期警戒機が必要です。特にF-35Bを運用するならば尚更です。

オスプレイを海空自に移管できれば、とりあえず陸自は、一息はつけるはずです。またMV-22を17機陸自に導入するよりも遥かに有効活用ができる、費用対効果は高いでしょう。

■本日の市ヶ谷の噂■
自衛隊に不向きな、オスプレイ、グローバルホーク、イージス・アショアの導入を独断で決めたのは、コネクト大坪こと大坪寛子厚生労働省官房審議官と情を通じていると週刊文春が暴露した、首相官邸の和泉洋人内閣総理大臣補佐官。彼と通じているのが髙橋憲一防衛事務次官。本来なんの権限もないので、大本営参謀、辻政信気取りで防衛予算を米帝に貢ぎやがってと、市ヶ谷では不満が鬱積しているとの噂。


編集部より:この記事は、軍事ジャーナリスト、清谷信一氏のブログ 2020年3月23日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、清谷信一公式ブログ「清谷防衛経済研究所」をご覧ください。