コロナ死者数の推移を示す恐怖のグラフ

2020年04月05日 06:00

統計学を欠いた実数比較の限界

下のグラフは、新型コロナの感染死について、恐ろしいことを物語っています。私の知人で、半導体の開発、生産、品質管理のプロだった企業人で、工学博士号の持ち主の作成です。現役時代に駆使した統計学の手法で、コロナ感染に伴う死者数の推移を独自にグラフ化してみました。

通常メモリでなく、対数目盛(指数関数グラフ)という統計処理でよく使う手法を用いています。新聞、テレビがよく使う実数(絶対値)によるグラフでは、読み取れない動きが明瞭に示されています。

知人の指摘です。「人口100万人当たりの死者数が1を超えると、どの国でも、死者が急増する。イタリア、イラン、スペイン、フランス、スイス、イギリスがそうで、しかも同じような右肩上がりの線で死者数が増加していきました。下の方に米国もあります。よく見ると、やはり1を超えたあたりから死者数が急増しています」。

「1」を超える以前も、院内感染が進行しており、「1」を超えると、医療崩壊が起きているので、どんどん死者の数は増えていくというのです。

「医療崩壊が起きてしまうと、もう死者の増加は止まらない。その分岐点は1で、ここを境に医療崩壊が起き、病院の治療機能が喪失し、救える患者も救えなくなる。日本より下方にあったドイツはじわじわと上昇し、日本を追い越し、1を超え、医療崩壊が発生し、死者が急増している」

「日本はまだ1以下でも、じわじわ上昇を続け、医療崩壊の寸前まで来ている。日本医師会が医療現場が危機的な状況にあるとの宣言をだした。日本は感染数が少ない国だと、安心していられない」

もっとも、感染が社会全体に拡散し、集団免疫が形成されると、感染が広がらなくなります。そうすると、グラフのカーブは緩やかになり、最後はフラット(グラフが寝た状態)になるといいます。中国は集団感染が形成され、だから線がフラットになっているとの見方もあります。ただし、中国のデータは信用できないので、実態はどうなのか分かりません。

それと、集団免疫が形成されるには、時間がかかり、その間、多くの死者がでる。そのためにも、医療崩壊を防ぎ、救済できる患者の治療体制を維持していなければならないということでしょう。

sergio santos/flickr:編集部

テレビ、新聞報道では、主に累積数、日々の感染者数を実数で説明しています。その致命的な欠点は「実数のグラフだと、低空飛行だったものが、途中で急角度で伸びあがり、過去との比較ができにくい。対数グラフは極端に幅広い範囲のデータを目で見て分かるように処理してくれる」。

もう一つの致命的欠点は、各国比較ができないことだと指摘します。「各国は人口、医療制度、社会環境といった国情が皆、違う。ウイルスの検査方法、検査数にも差がある。だから実数で比べてはならない。死者数は操作できないから、人口100万人当たりの死者数に相対化し、対数グラフで比べるべきなのです。これが上のグラフの意味なのです」

「世界全体で感染者が100万人、死5万人を超えたとかいっているのは、累積数の話だ。どのような変化が各国で起きているかを知るには、この手法しかない。統計の専門家はもっと発言してほしい。政府、自治体は専門家会議に統計学者を加えるべきだ」と、警鐘を鳴らしています。

当面する日本の防止策として、知人はこう主張します。「死者を減らすことが最重要で、そのためにはあれもこれもでなく、医療崩壊(病院の機能マヒ)を防ぐことに全力を集中すべきだ。医療崩壊が起きると、各国共通して同じような率の死者がでる。各国とも右肩上がりで死者が増えていく。そうなれば日本も例外でなくなる」と。

具体的にはこうです。「病院を徹底的に守る。病院の医師、看護士が多数、亡くなっている国がある。さらに医師や看護師が感染すると、免疫力の弱った病人が犠牲になる」。そこで「検体を取る作業ができる臨時の資格者を作り、検査に対する医師の負担を減らす。検体を取るだけならテントでいい」「医師を発症者の治療に専念してもらう。人工呼吸器は補充できても、医師は補充できない」。

(注)logを使った対数グラフでは、たとえば縦軸で1000人を高さ3㌢、100万人を6㌢、1億人を8㌢というように書く。2000人は10の3・3乗だから3.3㌢。横軸は時間(何月何日)とすると、何日で10倍になったかなどが分かる。急増する感染者の増加をみるのに適している。実数を使ったグラフ(均等目盛)だとはみ出してしまい傾向がよくつかめない。


編集部より:このブログは「新聞記者OBが書くニュース物語 中村仁のブログ」2020年4月4日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、中村氏のブログをご覧ください。

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中村 仁
ジャーナリスト、元読売新聞記者

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