在日米大使館が米国人に帰国を勧めた!日本はまたしても大本営発表を繰り返すのか?

中村 祐輔

産経新聞に「在日米大使館は3日、新型コロナウイルスの日本での感染者増加を受け、日本に滞在中の米国人に対し、無期限に海外にとどまるつもりがなければ直ちに帰国の準備をすべきだとウェブサイトで呼び掛けた」とあった。この理由は「日本政府がウイルスの検査を広範に行わないと決めたこと」にあると説明されていた。このブログで何度も指摘しているように、日本国内における感染状況の正確な実態把握が困難であるからだという。

在日米国大使館サイトより:編集部

このブログを書いている時点の米国の感染者数は277,607人、死者は7,406人である。それに対して、日本の表向きの感染者数は2,935人、死者は69人に過ぎない。この数字を見れば、米国に帰国せよと言われたくないと思う。それであるにも関わらず、米国政府が米国人に対して帰米を勧めるのは、どんな理由なのだろうか。

米国の情報では、日本の実態はもっと深刻であり、日本の公表数を信じていないからではないのだろうか?もちろん、私も、十分な検査を行っていない日本の統計値は信じていない。自国のデータを信じることができないのは悲しいことだ。そして、科学的でないウイルス対策で国難を乗り切れるとは思えないのだ。

しかも、PCR検査を広範囲に行わないことを国民には告げずに米国政府に伝えたのか、それとも、メディアに報道制限をかけていたのかわからない。どこかの時点でこの方針を決めていたのだろう。これでは、多くの国民を犠牲にした太平洋戦争時の大本営発表と同じだ。厚生労働大臣と総理大臣のPCR検査を増やすという発言が、ここまで軽いとは思わなかった。東日本大震災時の津波被災者を蔑ろにした「民主党の悪夢」を想い起こした。

曖昧な言葉を垂れ流していても、このコロナウイルスとは戦えない。命を救えない。今日の東京都の感染者数は118人だ。そして、国立がんセンター中央病院、慶応大学病院に続いて、慈恵医大病院、岐阜大学附属病院での院内感染が報告されている。外来や病棟が閉じられ、濃厚接触者の医療従事者は自宅での隔離を求められる。医療機関での感染の連鎖は、相対的な医療供給体制の減少を引き起こす。日本の状況は、持ちこたえているどころか、すでにオーバーシュートは起こっていると判断した対応が必要ではないのだろうか。

しかし、アベノマスクといい、このPCR検査忌避といい、緊急事態宣言はまだ不必要という話など、政権を担う資格があるのかどうかを問われるような姿勢である。こんな時だからこそ、政治家は自らの言葉にもっと責任を持つべきではないのか?

2月の時点での学校の一斉休校は経済的なダメージはあっただろうが、人の命を守る観点では国として立派な英断であったと思う。しかし、欧米からの帰国者が、欧米で猛威を振るっているウイルスタイプを国内に持ち込んだ可能性が高くなってきたにもかかわらず、学校再開を示唆して気が緩んだのが、今になって顕在化してきた。

私のコメントが危機を煽りすぎたと批判されるような結果となれば、それは日本という国にとっては幸せに違いない。そうなって欲しいと願う気持ちは強いが、私の知識・経験はかなりの確率で赤信号を示している。私がこれ以上コメントしても、何も変わらないこともわかっている。 

そして、今回でコロナ関連のブログは終わりにする。そして、私の発言が単なる煽りであったなら、このブログを閉じようと考えている。


編集部より:この記事は、医学者、中村祐輔氏のブログ「中村祐輔のこれでいいのか日本の医療」2020年4月4日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。