(閲覧注意)日本郵政「内部通報つぶし」の録音データ公開

山口 利昭

公式ツイッターより

さきほど(4月28日午前10時30分)、朝日新聞のHPに、昨年1月に録取されたと思われる録音データが公開されました(ただし有料会員のみ 有料会員ではない方も閲覧できるそうです、失礼いたしました)。(心臓に悪いのであまり体調の悪い方にはお勧めできませんが)ぜひお聴きいただきたいと思います(「絶対潰す」に震える局長 録音示す日本郵便の風土)。

統括局長曰く、「おまえ、まさかコンプライアンス室に通報してないよな?いまなら許すから正直に言え!俺は辞めた後でも顧問で残るから、きっと誰が通報したのかは、そのときわかる。そのとき局長が関与していることがわかったら、絶対に潰す。普通の社員ならしかたないが、局長(幹部)が通報することは絶対に許されない。みんなで仲良くやってきたではないか、そうやろ?」

問い質された局長の憔悴しきった対応、疲労困憊の様子は聴くに堪えないです。家族がいらっしゃるとしても、この様子では心配です(録音作業を行っていること自体が、安心材料かもしれませんが)。この録音データはぜひとも多くの中間管理職の方々に聴いてほしいです。どんな感想でも結構です。これが会社にとって「あたりまえの風景」ということであれば、20代、30代の若い従業員の方々にとっても気構えが必要ですし、我々、内部通報制度を支援する専門家にとっても、これが当たり前であることを前提に対応しなければなりません。

昨日、日立金属は検査不正が発生していたことを公表し、社内の情報提供が調査の端緒であったことを明らかにしています。今年1月下旬に届けられた1通の内部通報が、10年以上も現場で続いていた検査不正を明らかにしたのです。会社の自浄作用が発揮された一例だと(少なくとも現時点では)理解しました。

公益通報者保護法の改正法案の早期成立が望まれますが、どんな改正をしたとしても、これを運用する企業自身の風土が「旧態依然」ということであれば、通報制度は機能しません。経営トップのコミットメントも大切ですが、それよりも大事なのは「健全なレポートラインも根詰まりを起こす」ということへの中間管理職の意識だと常々考えております。


編集部より:この記事は、弁護士、山口利昭氏のブログ 2020年4月28日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、山口氏のブログ「ビジネス法務の部屋」をご覧ください。