米国で第4弾の新型コロナ対策成立、今回は十分?

(カバー写真:vhines200/Flickr)

トランプ大統領は24日、第4弾となる約4,840億ドル相当の新型コロナウイルス向け給与保証プログラム(PPP)・ヘルスケア拡充法案に署名した。米上院は21日に全会一致で、下院は23日に388対5の賛成多数で可決していた。なお下院での反対票は5名で、共和党から4名、民主党からはプログレッシブで知られるオカシオ・コルテス議員(NY州)が不支持にまわり、民主党寄り独立系のアマシュ議員(ミシガン州)は賛成・反対を表明しなかった。

第4弾となる新型コロナ対策の柱は、①PPPの追加枠付与、②医療システムへの支援、③検査体制の強化――である。特にPPPは第3弾となる約2.2兆ドルの景気刺激策に盛り込まれ始動したが申し込みが殺到、4月3日に開始し16日までのたった13日間で3,480億ドルの資金が底を突き、早急の対応が求められていた。

チャート:追加対策法案の主な内訳

作成:My Big Apple NY

なお新型コロナ感染抑制策として、下院議員は社会的距離確保などの行動指針に従いつつ、アルファベット順で分けられた数人のグループで出席し、議事堂に入場するにあたって6フィート(183㎝)の間隔を空けた。また、2度の採決の間には30分の清掃時間が設けられた。

もうひとつ余談ながら、約2.2兆ドルの景気刺激策に盛り込まれた1,200ドルの小切手、トランプ大統領の名前を入れてこんなデザインに仕上がりました。シークレット・サービスいわく、偽造防止の一環なのだとか。

(出所:Secret Service

――さて27日から第2弾の受け付けを開始したPPPですが、問題は追加枠が十分か否かという点にあります。開始当時の反省を踏まえ、申請殺到で道半ばで資金が枯渇する事態を回避し「今回は違う(This time is different)」状況となるのでしょうか。

1)中小企業向け支援枠 600億ドルを確保
→アメリカの地域開発金融機関(CDFIs)、マイノリティ預金金融機関(MDIs)、地方銀行、信用組合を通じた融資に割り当て

2)申請可能な企業の選別
→開始当時はヘッジファンドやプライベート・エクイティのほか、上場企業のような大手企業、大手レストランチェーンが申請したが、米財務省は規定を刷新。上場企業を始め資金繰りで困難に直面する可能性が低い企業に、申請に対する圧力を強化。申請する場合①PPP以外に資金調達の方法がない、②PPP以外の資金調達方法がないことを示す” certification in good faith=誠意の証明書”を提出、③前述の2点に違反する場合は、不正調査対象に。

3)テクニカル的な問題を一部解消
→中小企業庁(SBA)のシステムにつき一度に5,000件の申請を処理できるように改善(ただし、27日の再開直後からエラー発生

というわけで、対策は一応講じられています。特に上場企業など大手企業の申請を制限する枠組みが奏功するか注目で、第1回目では少なくとも2億4,340億ドルが上場企業に流入していました。その後、ハンバーガーチェーン大手シェイクシャックが公募増資で10億ドル調達後、に第1回の申請で得た資金1,000万ドルを返金したことが思い出されます。

ただ、地銀の報告をみると第2回の申請待ちの企業も多いのだとか。新たに申請できる企業が融資を獲得するには、さらに時間が掛かるとみられます。NABEの調査では米企業の6割が政府支援なしで6ヵ月以上存続可能と回答していたようですが、裏を返せば4割は困難という話です。5月末までの外出禁止措置の延長を決定したカリフォルニア州サンフランシスコ市や決定する見通しのNY州NY市などの中小企業にとって、残された時間は限られていることでしょう。


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2020年4月28日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。