専門家会議と西浦氏
新型コロナでは、老齢者や既往症を持つ人の致死率が他と比べて圧倒的に高いと言われている。このリスクに備えるため、全国のホテルに高齢者や既往症を持つハイリスク層の「予防退避」をしてはどうだろうか。
5月6日期限の新型コロナに伴う緊急事態宣言が、延長されることに決まった。安倍首相は、週明けにも詳細を詰め正式発表する予定だ。感染率等により地域ごとの緩和の余地はあるものの、基本的にはそのまま延長になる模様である。
しかし、これでは経済、経営が持たないとの切実な声が聞かれる。多くの店舗が閉まり、筆者の自宅付近を通る私鉄も、しばしば乗客0人の時があり、さながら幽霊列車状態だ。
政府の判断の基には、5月1日に開かれた緊急事態宣言の延長前の専門家会議がある。同日の記者会見で、今回は「減少はしているが期待したほどではない」という統一見解が表明された。
記者会見におけるやりとりで座長や副座長に代わった北海道大学の西浦教授は、「十分な現象を果たすためには、実効再生産数を0.5にすることを目標にしているので、それには達していないということだ」と答えた。その西浦氏の判断が、経済再開を始めている諸外国に比べて実質的に政府の慎重すぎる姿勢の根拠となっている。
だが、西浦氏は云わば専門家馬鹿、単なるオタクである。政府と専門家会議が、矢面に立ちたくないので丸投げして西浦氏を使っている。そして、不都合になったら「私らは数理感染症モデルの専門家ではないので、彼に全面的に頼ってしまっていた」と言って責任を被せて切り捨てる。
西浦氏の「うっかり八兵衛」的キャラと風貌は、その適任なのだろう。数理感染症モデルの専門家が日本で西浦氏しか居ないという事らしいが、それならば外国人専門家を複数招聘し任に当たらせるべきだ。
政治判断と備え
さて、緊急事態宣言の緩和即ち経済再開のための一番のポイントは、感染爆発を起こさない事に尽きる。そのためには、治療薬とワクチン、集団免疫の進捗に期待しつつも、行政等が主に出来る事は感染爆発の兆候の早期掌握とその抑え込み、及び人工呼吸器等の医療資源の拡充である。
これに加えて、そもそも新型コロナの重症者を増やさない事が重要である。政治は、新型コロナによる直接死と、不況による経済関連死の合計を最小にするという方程式を解く責任を負う。
西浦氏等の医療専門家が直接死の最小化を図るのは学者のミッションとして当然だ。しかし政治家はそれと経済関死の合算数の最小化を図らねばならない。即ち直接死の増加可能性のリスクに踏み込まざれば、専門家への丸投げに過ぎない。リスクを冒す以上、対策が要る。
先にアパホテルはじめ、「品川プリンスホテル」、「スーパーホテル大阪天然温泉」等有志のホテル業者は、軽症者を収容する事を表明しその体制が整ったが、実際に収容された軽症者はごく僅かだという。
この資産を利用しない手はない。だが、このことを知人に話したところ、「政権に近い業者を更に潤させるだけだ」と否定的な反応だった。しかし元より、何もアパホテル等に限る必要などない。一定の設備や機能を有するホテルは全て応募出来るようにすればよい。加えて感染者対象に比べてリスクは少ないのでホテル業者は手を挙げ易いだろう。
日本全国の宿泊施設数は5.2万施設、部屋数162.5万室という(2020年1月現在、参照Hotel Bank)。一方65歳以上の高齢者は3, 500人以上、75歳以上が約1,800人と言われ、それと比べスケールが違う。
だが、そのうち特に複数の既往症を併せ持つハイリスク層が自主的に予防的退避を行うようにすれば、感染リスクを抑制し医療崩壊を避け、経済再開するための一助にはなると思う。コストは当然国費で賄う。これは、ほんの一例ではある。
政府には、専門家会議任せでなく総合的な見地から、リスクに対する対策を打った上での政治判断を望みたい。