PCR検査って何?

2020年05月16日 20:00

新型コロナウイルスの問題で、「もっとPCR検査しろ」という人がワイドショーに毎日出てきます。最近は「54兆円で国民全員にPCR検査しろ」という人まで出てきましたが、これは何でしょうか?

PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)検査は、のどからとった検体のDNA(デオキシリボ拡散)を遺伝子解析して、ウイルスをみつける検査です。新型コロナだけでなく、いろいろな感染症で使われますが、1回6時間ぐらいで、費用は1万円以上かかります。

病気は「早期発見・早期治療」といって、検査で早く見つけることが大事ですが、新型コロナウイルスには薬も治療法もないので、検査しても病気はなおせません。普通の風邪とおなじで、コロナだとわかっても、家に帰って寝るしかないのです。それでも検査する意味があるとすれば、次のような理由でしょう。

  1. 感染ルートを追跡する:これはクラスター対策ですが、感染の初期ならともかく、ウイルスが全国に広がった今は意味がありません。
  2. 感染率を調べる:これは疫学調査ですが、国民全員を調べる必要はありません。ランダムサンプルの抗体検査(コロナの免疫をもっているかどうかの検査)で十分です。
  3. 感染した人をみつけて入院させる:入院中は感染が止まりますが、症状がなくなってもウイルスが体内から消えてなくなるわけではありません。ウイルスはゼロにできないし、する必要もないのです
  4. 感染してないと確認して安心する:PCR検査では、感染している人のうち30%がまちがって陰性(擬陰性)と判定され、感染していない人の1%がまちがって陽性(擬陽性)と判定されるといわれています。このため国民全員を検査すると大混乱になります。

このうち4がわかりにくいと思いますが、次のような例で考えてみましょう。最近の調査では新型コロナにかかっている率は0.5%という結果が出たので、感染者は60万人とします。国民全員を検査すると、このうち30%は擬陰性になり、70%の42万人が正しく陽性と判定されます。

のこりの感染していない1億2000万人のうち、1%の120万人がまちがって陽性と判定されます。本当に感染している人と合計して162万人が陽性と判定されますが、このうちウイルスをもっている人は42万人しかいません。

このように感染している人の少ない病気で無差別に検査すると、膨大な無駄が生まれるだけでなく、100万人以上がまちがって陽性と判定され、強制的に入院させられるのです。そしてまちがって陰性と判定された18万人(60万人の30%)は、安心してウイルスを拡散します。

症状の出た患者を検査するだけで十分

そんな不正確な検査のために国民全員をPCR検査する費用は、1兆円以上かかります。しかもこれは、そのとき体内にウイルスがいるかどうか調べるだけですから、つねにウイルスがいないことを確認するために毎週検査したら年間54兆円ぐらいかかり、100万人以上が入院して病院はパンクしてしまいます。

それで何がえられるのでしょうか。新型コロナの死者は700人程度で、その半分以上は80歳以上のお年寄りなので、よい子のみなさんには関係ありません。

マスコミのみなさんが「恐い恐い」といった割りには、コロナの被害は大したことないので、政府の悪い点をみつけようとして「検査が少ない」という話ばかりしてるんでしょうが、日本の検査が少ないのはコロナ患者が少ないためで、その逆ではありません。

これを「政府は検査を減らして患者を少なく見せている」とか「死者を隠している」とかいうのは、原因と結果を取り違えた話です。重症患者は必ず検査し、死亡診断書にも死因を書くので、それを偽造することはできません。

PCR検査を増やすと死亡率が下がるとか、PCR陽性率が上がると死者が激増するという論文も出ましたが、そんなことはありえない。感染が原因で検査はその結果をみるだけですから、体温計を冷やしても熱が下がらないのと同じです。これはよい子のみなさんでもわかりますね。

新型コロナは単なる風邪なので、国民全員を検査する必要はありません。症状の出た患者を検査するだけで十分です。それ以上の「安心」のためにゼロリスクを求めると天文学的なコストがかかるというのが、原発事故で日本人がまなんだ教訓です。

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池田 信夫
アゴラ研究所所長(学術博士)

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