「コロナ陰性証明書」は最も危険な感染源になる

中田 智之

新型コロナウイルスに関する問題も、緊急事態宣言の出口が見えてきて一段落の気配があります。当然のことながら自粛解除に伴う第二派、および入口戦略(参照:音喜多議員ブログ)など、今後も気を抜くことはできませんが、経済活動再開に関しては多くの国民が望んでいることでしょう。

しかしこの状況下でPCR検査熱望論も最後の盛り上がりを見せているようです。

(参考)緊急提言新型コロナ・V字回復プロジェクト「全国民に検査」を次なるフェーズの一丁目一番地に ―

(参考)黒沢年雄が「コロナ陰性証明書」発行を熱望 ―東スポWeb

oldtakasu/写真AC

特に一般市民が期待してしまうのは「コロナ陰性証明書」の部分だと思います。

そこで本稿では「コロナ陰性証明書」なるものが危険で、感染拡大の原因ともなり得ることを説明していきます。

1. 偽陰性者がウイルスをばらまく

全ての検査には感度があります。感度というのは、有病者を陽性であると判定する割合のことで、新型コロナウイルスに関するPCR検査は最大で70%の感度と言われています。

簡単にいうと100人の感染者がいたら少なくとも30人の判定漏れをだします。これを偽陰性といいます。

前出の提言では偽陰性に対応するために陰性判定に対し2回検査するとありますが、それでも100人の感染者がいたら少なくとも9人の判定漏れが発生し、この9人は「コロナ陰性証明書」を持って堂々とウイルスをばらまいて生活します。

一方でPCR検査で陰性とでても、擬陰性対策のために再検査を必ず行うことになるので、検査後すぐには「コロナ陰性証明書」は発行されません。

再検査のために費用は倍かかりますが、1件すごく少なく見積もって1万円する検査を多くの人が2回行うことになるので、かなりお金がかかることになります。

その予算は50兆円ということなので、もし国民に一律給付すると一人50万円受け取ることができる額になります。

2. 「コロナ陰性証明書」の有効期限は短い

PCR検査をして「その時点で新型コロナに罹患していない」ことが証明されたとしても、新型コロナに対する抵抗力を持っているかは不明です。

つまり「コロナ陰性証明書」保有者が意気揚々と市中に繰り出すと、その日のうちに新型コロナウィルスに感染する可能性があります。

市中には第1項で述べた通り、「コロナ陰性証明書」を持つ偽陰性者がウィルスをばら撒きながら歩いているかもしれません。検査結果も当日にわかるわけではないので、「コロナ陰性証明書」が届くまでの時間差の間で、感染する者がいるかもしれません。

3. 動物を媒体とした感染の可能性は考慮しないのか

新型コロナウイルスはネコの間でも感染拡大するという知見があります。ネコからヒトに感染するかは不明ですが、それは人体実験をしない限りすぐにはわからないでしょう。

感染の可能性があるならばと、国内全てのネコに対してもPCR検査をするのでしょうか。ネコに対するPCR検査が終わったとしたら、新型コロナウィルスの発生源と考えられているコウモリにもするのでしょうか。

(参考)新型コロナウイルスはネコの間で感染伝播する ―東京大学医科学研究所

写真AC

まとめ:よりよい方法がある

「早く職場に復帰したい」「病欠だとしても家族に迷惑をかけたくない」という大きなニーズがあり、PCR検査に期待する気持ちは理解します。私も、医師が必要だと判断したケースに対しては滞りなくPCR検査が受けられる体制づくりに関しては賛成です。

しかし以上の説明から、全国民に対するPCR検査、あるいは「コロナ陰性証明書」は、外出許可証、あるいは出勤許可証といったようなものとして、問題解決の助けとならないことをご理解いただけたでしょうか。

PCR検査の限界を理解した上で実施するならともかく、「コロナ陰性証明書」により実態と乖離した解放感・安心感を得ることはかえって危険です。

それでは新型コロナウィルスは、PCR検査でも太刀打ちできない恐ろしい病原体なのでしょうか。

そんなことはありません。日本は世界各国と比較して緩い行動制限で十分感染を抑えることに成功してきました。

その原因は未だ分析の途上ですが、手をよく洗う、くしゃみは手でなく肘の関節部で受け止める、ドアノブや吊革、他人との手の接触を感染源だと認識するなどといった、基本的な衛生知識は、自粛解除後も感染リスクを大幅に減らします。また十分な睡眠と栄養摂取による基本的な免疫力の向上は、新型コロナウィルスに対しても強力なバリアーとなります。

「コロナ陰性証明書」という高額かつ実効性のない買い物に頼るのではなく、このような地道な健康管理をまずは大切にしてほしいと考えております。