台湾や香港よりも「国家」としての要件を欠く中国

武漢発の新型コロナ肺炎で世界中に感染者や死者が溢れ各国が他国との往来を断然して自国民の救命と経済立て直に腐心する様子を目の当たりにすると、アベノマスクや10万円給付の申請書が未だ届かずとも「国家」とはありがいものだ、とつくづく実感する。

そんな中、香港が昨年に続いて荒れに荒れている。97年の返還から向こう50年間一国二制度布くと約束を中国がないがしろにしたからだ。自由を求める香港人の台湾への移民申請が今年既に6千人に迫り、シンガポールの不動産も高騰し始めているという。

タイミングで先月29日、中国共産党NO.3の栗戦書が「国家分裂法」を根拠に台湾の独立派をいつでも攻撃できると宣もうた2300が独立を唱えるなら、国ごと滅亡させるということだ。新型コロナ肺炎といい、香港といい、台湾といい騒ぎの背後には必ず中国共産党がいる。

国家について国際法調べるとモンテビデオ条約というのがあ1933にできたその国家の権利及び義務に関する条約によれば、一定の政治的存在が国際法上、国家であるためには、「永続的住民」、「一定の領土」、「政府」、「他国との関係を取り結ぶ能力」、の四要素が必要とされる。

敷衍すれば、「永続的な住民」とは、人種、言語、文化などが同じかどうかを問わず、一つの社会を構成している個人の集合体をいい、通常国籍によって国家と結び付けられる。一定の領土」とは、住民が定住する空間であり、領土の境界は必ずしも詳細明確に確定される必要はない。

政府」とは、領土及び住民を実効的に支配する政府でなければならない。他国との関係を結ぶ能力」とは、特に対外主権つまり対外的に独立であることを意味する。対外主権は、条約締結権、外交使節派遣権、戦争権などの形をとると、それぞれ説明されている*(「現代国際法講義 4版」有斐閣)

へー、「戦争権」ねえ。となると、憲法九条で交戦権を認めていない日本は、国家の要件ていることになるなあ、などという思いが頭をよぎる。

ソ連崩壊して東欧や中央アジアにいくつか独立国が出来んとする199112欧州共同体(EU)が出した「東欧及びソ連邦における新国家の承認の指針に関する宣言」というのがあり、モンテビデオ条約にある伝統的ものとは別に次の様な基準を設けた

・法の支配、民主主義、人権に関して国連憲章及びヘルシンキ最終議定書等を尊重すること。

・人種的民族的グループ及び少数民族の権利を保障すること。

・既存の国境の不可侵を尊重すること。

・関連軍備規制約束を受け入れること。

・国家承認及び地域的紛争に関する全ての問題を合意によって解決すること。

この新旧二つの国家の基準を読んで気付くは、およそ台湾はそのすべてが備わっており、香港もこれまで必要がなかった軍備を除ほとんどを備えている一方で中国にはEU基準の5つの項目の大半が欠けているということ。実に奇怪面妖摩訶不思議な話ではないか

また、前掲国際法講義には伝統的な国家承認の要件として「承認される国が国際法を遵守する意思と能力を有することが必要であり、その能力は一定程度の文明を有することが基準」とされていたが、今日では「国際法の妥当を積極的に否定しない限り、その意思があるとされるとある。

ハーグの常設仲裁裁判所167月、中国の南シナ海に対する領有権主張や人工島の建設などが国際法に違反するとフィリピン訴えを認める判決を下したが、中国は同裁判所の判断を紙くずに過ぎないとして認めていない。これすなわち中国が国際法の妥当を積極的に否定した証左

このパンデミック下ですらWHOは中国の圧力に屈し総会への台湾のオブザーバー参加を認めなかった。が、前掲講義には、未承認国が出席する国際会議への参加が「黙示の承認」と見做されないことの興味深い事例を載せている。*(一定の行為によって間接に承認の意思を推定させること)

それは、まだ中国(中共)承認国の少なかった1954年、米英仏ソの外相朝鮮とインドシナの問題を討議するジュネーブ会議開催を提案し、中国と南北朝鮮などを招聘した。その際ことさら、「会議への招聘も会議開催も招聘国の承認を意味しない」とのコミュニケを出したというのだ。

つまり、国際会議などへの参加と参加国の国家承認とを切り離して考えるということ。だのに、これに圧力をかける中国も、それに屈するWHOも、またそれを拱手傍観する日本を含む各国も、そもそも慣習法である国際法を理解しない実に情けない国家といわざるを得ない。

その中国べったりWHOからの脱退を、とうとうトランプ大統領が口にした。彼が518日にテドロスに出したWHO改革の最後通牒は30日後が期限。それまでに10日余り猶予があるから、WHO出方次第ではまだ撤回の余地があるに思う。

そしてこの際、日米は国連からも脱退し、新しい国際組織をG7中心に作ってはどうか。日独伊が敵国条項に入っている今の国連に未練はない。それは縷述した二つの国家基準を満たす国で構成する。台湾と香港はOKだが、今の中国は難しい。勿論、日本も九条を改正して普通の国になることが必要だ。


筆者は前稿で、ジョンソン英首相のファーフェイ包囲網形成提案を受け、キャンプデービッドG7に豪韓印も呼んだらどうか、と書いた。するとトランプは、9月に延期するものの豪韓印露のG7招聘を提案した。それはそれとして、TV会議で良いからもっと早く諸々話し合うべきではないか。