厚労省と共謀して失敗をごまかす8割おじさん

2020年06月20日 16:00

厚労省の「第2波」対策が、都道府県への事務連絡という形で発表された。「東京で感染者が8万人」とか「42万人死ぬ」とかいう誇大な予測がはずれた反省を踏まえているのかと思ったら、今度も「再生産数1.7か2.0」を想定しろという。

これは概要版の図だが、ここでは3月後半に東京だけでみられた実効再生産数Rt=1.7が全国に一般化され、それが「都道府県のアラート」で0.7に激減したことになっている。

その根拠になった専門家会議の西浦モデルでは、Rtを1.4、1.7、2.0と想定して計算している。Rt=1.4としても最大3800万人が感染するが、それを接触削減で劇的に削減するのだという。

これは「緊急事態宣言でRtは下がらなかった」という批判に対する反論だが、この説明はおかしい。感染がピークアウトしたのは3月末であり、4月7日の緊急事態宣言より10日以上前だ。上の図からもわかるように、緊急事態宣言の前後でRtは同じ0.7程度である。

つまり西浦氏があれほど力説した緊急事態宣言も8割削減も効果がなかったのだ。これは彼にとっては困ったことになる。あれだけ大騒ぎして国民を巻き込んだ緊急事態宣言は何だったのか。

「8割」を説明する西浦氏(ツイッター「新型コロナクラスター対策専門家」より)

接触削減のタイミングを遡及するご都合主義

その言い訳を彼は思いついた。効果があったのは緊急事態宣言ではなく3月25日の東京都の記者会見だったというのだ。小池知事のおかげで57%もRtが下がったのだという。

これはピークに合わせて対策のタイミングをさかのぼるご都合主義である。安倍首相が記者会見し、全国で飲食店などの休業が始まった緊急事態宣言より、東京都知事の記者会見の影響のほうが大きいということがあるだろうか?

3月25日の会見はネットに全文が出ているが、「感染爆発重大局面」と繰り返しただけで、具体的に条例などを施行したわけではない。そもそも全国のほとんどの人は、そんな記者会見が行われたことさえ知らなかった。これは西浦氏が「接触削減で感染が劇的に減らせる」という彼の説が反証されたことをごまかすトリックである。

3月後半に感染が増えた原因は、押谷仁氏も認めたように1000~2000人の輸入感染であり、それが3月末の入国拒否で止まったのがピークアウトの原因である。これは検疫でチェックできなかった厚労省の失敗だが、彼らはそれに口をぬぐって「都道府県のアラート」でRtが激減するというインチキな「推計モデル」を出している。

接触削減などの「非薬物的介入」で感染が止まるというエビデンスは、世界のどこにもない。日本より強硬なロックダウンをした国でも、Rtはほとんど下がっていない。介入で感染が止められるというのは神話なのだ。

ここまで来ると西浦氏は善意で間違えているのではなく、厚労省と共謀してコロナ対策の失敗を隠蔽しているといわざるをえない。全国民を巻き込んだ8割削減に効果はあったのか。介入の効果は、その膨大な経済的被害に見合うのか。第三者が客観的に検証する必要がある。

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池田 信夫
アゴラ研究所所長(学術博士)

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