京都市がコロナ対策で後手に回った本当のワケ:財政ワースト2位の原因

2020年06月22日 06:00

京都市役所(公式Facebookより)

コロナ対策で脚光を浴び、一躍時の人となった大阪府の吉村知事とは対照的に、今、京都市民の間ではコロナ対策への不満が爆発寸前になっている。門川大作市長のフェイスブックのコメント欄は荒れに荒れ、市役所や議員に対しても苦情が殺到している。

リーダーの資質という問題もあるのだろうが、それ以上に深刻なのは、対策を打つための「お金がない」という根源的な問題がそこにはあった。今の京都市は国の補正予算による交付金が確定するまで自前の対策が全く組めない。対策が後手に回るのは当然のことだ。

京都市が夕張市に次いで2年連続全国財政ワースト2という汚名を被ったのは2015年、16年のことだが、未だにワースト10から脱却することはできず、全国最低レベルの財政水準にある京都市。なぜ、ここまで財政が悪化したのか。

行政の黒字はナンセンス

京都市の決算状況からみていこう。決算額は2015年(平成27年)9億円、16年(平成28年)5億円、17年(平成29年)4億円と、毎年黒字を維持している。しかし、企業と違い、黒字には何の意味もないのが自治体会計だ。

そもそも、自治体の収支は「とんとんまたはちょっと黒字」が理想とされており、形式的に言えば、「お預かりした税金はちょうどいい額で、ほぼ毎年使い切っています」という格好だ。一般家庭なら、生活費を借り入れしている時点で家計は赤字ということだが、行政は借り入れをしようが、無理やりどこからかお金をひねり出そうが、それは収入に計上され、収支さえ合えば黒字になるからだ。したがって、黒字赤字は何の指標にもならない。問題は、どのようにして決算の中身がつくられたのかということだ。

予算不足369億円からのスタート

予算編成の骨格が決まるのは10月頃だといわれているが、毎年その頃に議会に報告されるのが、次年度の予算の見通しだ。そして、近年京都市では、その見通しの中で、予算が足りないという報告が上がってくる。2019年度(平成31年度)の予算不足は369億円だった。このままいけば、369億円の赤字ということになる。

「まいったな~。足りないじゃないか。なんとかしなきゃだな~~」

そこから、行政の錬金術が始まる。

今年度の「不足を補う取り組み」は以下の通りだ。

・財政構造改革によって72億円 → これはまともな取り組み

・特別会計繰出金の減・投機的経費の抑制により70億円 → 工事の後ろ倒しなど場当たり的対策

・その他歳出の精査・財源確保により67億円 → 積立を崩す、借金返済を遅らせるなど

・臨時交付金の予算計上により13億円 → 国から追加で貰えるラッキーなお金

・財政調整基金の取り崩しにより19億円 → 貯金の全額取り崩し

・公債償還基金の取り崩しにより65億円 → 借金返済原資の取り崩し

・行政改革推進債により63億円 → 借金

見て頂くとわかるが、ほとんどの予算捻出方法が、財産の喰い潰しとツケの先送りなのだ。

貯金ゼロの街、京都

さらに、家計に例えて詳しく見ていこう。

皆さんならお金が足りないとき、どうするだろう? まず思いつくのは、貯金を取り崩して使おうということだろう。行政も同じで、多少の不足なら貯金を取り崩せば解決する。しかし、京都市はこの貯金がほぼゼロだ。2016年度(平成28年度)は底を尽き、その後少しだけ貯金したものの、手元には十数億円しか残っておらず、ほぼゼロ状態が続いている。ちなみに政令指定都市の中で、「貯金ゼロ」というのは、全国的にみてもごく稀で、まさに最低の状況だ。

通常は、京都市程度の規模なら300億円ぐらいの貯金があるのが妥当だと言われており、とんでもない状況と言っていい。大阪の吉村知事がコロナ対策で思い切った対策を打てた背景にはこの貯金が随分積み立てられていた点にある。ちなみにお隣の大阪市は1630億円と橋下市長の改革の成果が如実に表れている。

この貯金の性質について説明しておこう。行政の歳入は毎年景気の動向などに左右され、当然予測通りにはいかない。景気が良ければ、想定以上に収入が増え、大きく黒字になる。逆にリーマンショック級の不景気の波が来ると大幅に赤字になる。

また、大きな天災などに見舞われたとき急な出費がかさみ赤字になる。それを平準化するために、黒字になったときにコツコツと貯金をし、赤字になりそうな時に使うという仕組みになっている。

要は、景気の調整やいざというときの資金として、貯金が存在するわけだ。これを使いきったということは何を意味するのか。

いざというときにお金が使えず、しかも先人が積み立てたお金を食いつぶしてしまったということだ。

ちなみに、我々が問題視しているのは、使い切った理由だ。貯金を使い切ると確かに今後の財政運営は厳しくなるのだが、必ずしも「使い切る=悪」ということではない。これまでも、東北大震災で福島市は貯金を使い切ったし、一昨年は想定外の大雪で除雪費用がかさみ、福井市も貯金がそこをついた。しかし、これは貯金を使い切る理由としては十分だ。

しかし京都の場合は違う。大きな天災があったわけでも、事故があったわけでもない。ただ、生活費の補填に使ってしまったのだからニートと同じで、この無計画さこそが、京都の財政危機を招いている原因だ。

マジでやばい京都市の自転車操業

もっと恐ろしい現実がある。京都市は、借金の返済原資を使い込みまくっている。行政の借金というのは少々特殊で、満期一括返済が原則になっている。つまり、返済期日がやってきたら、そのときに全額返済するというもので、毎月のローン返済のようなものはない。したがって、財務担当者は、返済期日に備え、計画的に資金を積み立てなければならない。これが公債償還基金といわれるものだど。

この自治体も山盛り借金をしているので、毎年なんらかの借金が満期になって返済を迫られる。これを上手に切り盛りするのが財務担当者の腕の見せ所というわけだ。しかし、京都市はこの返済のために積み立てている貯金を予算に組み込む、という禁断の錬金術を繰り返している。これは多重債務者の「今日は△△ローンの返済日、明日は〇×クレジットの返済日、来週は□□ローンの返済日…とりあえず□□ローンは来週なので、その返済分は今週の生活費に使ってしまおう。で、今週末に××ローンから借りれば大丈夫」という自転車操業に似ている。絶対にやってはならない財務手法だある。

これが、目に見えない「ツケの先送り」なのだ。そして、目に見えない分悪質だといえる。将来の返済分を今使っているのだから、次世代の返済は重くなる一方だ。「この手法は1日も早くやめたい」と京都市側は言うが、やめる気配はまったくない。これはマジでヤバい。

負担の先送りを繰り返した結果、悲劇が…

さて、上記の使い込みとは別に正規の借金についても触れておこう。借金をすればするほど、将来への負担は大きくなる。これが、大きくなりすぎると夕張のように財政再生団体に指定され、事実上破綻する。この将来への負担を示す指標を将来負担比率と呼び、一般的には破綻危険度といった表現で用いられることがある。現在、600%を超える突出して悪化した夕張市を除くと破綻水準に近い自治体はないが、ついに京都市は2015年度(平成27年度)、2016年(28年度)と2年連続夕張市に次いで破綻危険度ワースト2位となった。

ちなみに、昨今ふるさと納税の大盤振る舞いで話題になった泉佐野市(大阪府)は2008年度(平成20年)から早期健全化基準を上回る393%となり、遊休資産の売却などを進め、2013年(平成25年)には早期健全化団体から脱却したものの、未だにワースト10の常連になっている。総務省と対立してふるさと納税で全国の寄付を集め続けた裏には、そうした危機迫る財政危機があったことの付け加えておきたい。

このように、市民が知らぬうちに自治体は自らの体をどんどん蝕んできた。結局、収入が多くても使うのがそれ以上に使えば金は残らないし、収入が少なくても身の丈に合う生活をしていればそれなりに暮らせる。今の京都市は年収は高いが、貯金もなく、借金が多いという方に酷使している。対策は、ただひとつ、身の丈に合った生活(会計)に変えることしかないのだ。

詳しくは、小生の解説動画か、拙著『観光で京都が滅びる日』(ワニブックス)をご参照頂きたい。

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村山 祥栄
前京都市会議員、大正大学客員教授

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