接続海域で潜水艦を潜没航行:中国に侮られる日本

2020年06月24日 06:01

Kzaral/Flickr

防衛省は20日、国籍不明の潜水艦が18日から20日にかけて、鹿児島県奄美大島の北東から同横当島の西方にかけて、わが国の接続海域を潜没航行したと発表した。この日のNHKの報道では、政府関係者からの情報として、この潜水艦の国籍は中国であると推定され、「海洋進出を強化する中国が潜水艦の能力を誇示するために、狭い海域を通過した可能性が高い」と伝えていた。

政府関係者の情報ということは、これを追尾していた海上自衛隊の対潜哨戒機などによる「ACINT(Acoustic intelligence):音響情報」やその他の情報によって国籍が特定され、これを官邸に報告した内容が(この情報に接した)政府関係者からメディアにリークされたということなのだろう。

23日になって、午後の記者会見で河野防衛大臣が、「この潜水艦は中国のものと推定される」と述べ、事実上中国海軍の潜水艦であることを認めた。

2018年、尖閣諸島沖を中国国旗を掲揚して航行する潜水艦(防衛省サイトより)

つまり、この中国海軍の潜水艦は、いずれかの海峡から太平洋へ進出し、何らかの活動をした後にこの奄美大島と横当島の海峡を東から西へ通峡したものと思われる。現在、米海軍の原子力空母3隻が西太平洋付近で活動中とされており、恐らく同潜水艦は、この周辺においてこれら米艦艇に対する情報収集などの作戦任務に従事していたものと推察される。

そして、帰り際に、日本の南西諸島の中央部を潜行して突破することで、わが国の情報収集態勢や海上自衛隊などの探知能力を確認しようとしたのであろう。

ちなみに、この奄美大島と横当島の海峡は、約31海里(58km)であり、これからわが国の領海(12海里×2)を差し引くとわずか7海里(13km)ほどしかない。即ち、この海峡は、わが国の接続海域(領海から12海里)に含まれ、「自国の領土又は領海内における通関、財政、出入国管理などに関する法令違反の防止及び処罰を行うことが認められた」水域ということなのである。

このように、特定海峡(国際海峡)でもないこのような狭い海峡を、他国の潜水艦が作戦行動として潜没して通峡するというのは、その国が完全にわが国を「舐めている」ということである。領海には侵入しなかったからといって、黙認できるような話ではないのだ。

残念ながら、この行為は今までわが国の経済水域や接続水域などにおいて、何らの強制力もないまま野放しの状態で「中国の海洋調査活動を許してきた付けが回 ってきた」ということなのであろう。これは、わが国の政治的な瑕疵である。

通常、平時であれば、このような潜水艦を探知しても、こちらの探知能力を秘匿するため、公表などはしない。しかし、現在はすでに米中が「新たな時代の戦争」ともいうべき状態に突入しており、もはや平時とはいいがたい。決して、このような挑発行動を見逃すわけには行かないのである。だからこそ、防衛大臣は公表に踏み切ったのであろう。

ここまでは軍事の役割である。ここからは、政治と外交の世界だ。

2か月以上にわたって接続海域に居座り、幾度となく領海侵犯を繰り返す中国海警局の警備艦について、菅官房長官は幾度となく厳重に抗議している。この22日にも同警備艦4隻が領海に侵入したばかりだ。これらと合わせて、さらに強く抗議し、中国による一連の「わが国に対する挑発行動」を非難するべきであろう。

同時に、今回のような情報は米国とも共有しているだろうから、米国も巻き込むべきではないか。中国に対して、「そちらの行動はすべて日米は把握している」ことを誇示し、「挑発行動には断固として対処する」と相手をけん制するべきであろう。これが、多少なりとも中国軍による挑発行動の抑止につながると考えられるからだ。

筆者が知る限り、今のところ政府が中国に対して本件について抗議したという行為は確認されていない。今回のような情報のみを公表して、断固とした抗議の意思を示さなければ、相手にこちらの手の内を見透かされ、さらに付け入る隙を与えるだけである。政府は、中国に対して毅然とした態度をとってもらいたいと切に希望する。

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