小泉進次郎らの一般党員投票要求はなぜ不見識か

若手議員らが自民総裁選挙で党員投票を行うべきと言っている。小泉進次郎が「フルスペックの選挙」とかいう言い方をしていた。また、マスコミでも党員投票を短期間ですることは可能だといっていたキャスターがいた。

報道陣に総裁選のあり方についてコメントする小泉氏(FNNニュースより)

しかし、私は一般投票までするフルスペックの総裁選挙というのなら、任期切れの場合に準じる予告期間、選挙運動などをしなくてはおかしいと思う。投票だけフルスペックにすることは意味がないというか、それは人気投票でしかない。

選挙というのは、選挙運動を公的に用意された手段をフルに使って展開し、有権者が正しい選択をできるようにするシステムであって投票で決まることだけが選挙ではないのである。

まず、立候補をする準備ができる予告期間があり、マニフェストを用意し、演説会や討論会、頻繁なテレビ出演などができなくてはならない。フルスペックの選挙というならそう言うものであって、投票をすればいいものではない。

それができるなら、残存任期だけでなく、任期も3年間にすればいい。そうでないなら、両院議員総会のようなプロの責任で選ぶのがむしろ合理性がある。

ちなみに、任期途中で辞任があった場合にどうするかだが、アメリカでは最初から副大統領を決めてそれが昇格する。そのあたりについては、本日発売の私の新著『アメリカ大統領史100の真実と嘘』(扶桑社新書)でも書いているが、副大統領から昇格した大統領の評判はあまりよくない。

もともと、副大統領は大統領に相応しい人が選ばれているわけでないからだ。近年ではニクソン辞任にともなって昇格したフォード大統領も再選されなかった。

ニクソン大統領(左から2人目)辞任で昇格したフォード(同3人目)=米政府資料

フランスでは、ドゴールが辞任したあとと、ポンピドー大統領が死去したときとには、いずれもアラン・ポエール上院議長が臨時大統領となって、約2か月後に大統領選挙が行われるまで職にあった。

韓国でも朴槿恵大統領が失職したのが3月10日で文在寅大統領が選ばれたのは5月9日である。

日本では、首長が死去や辞任した場合は、通常選挙が行われるが、たとえば、宮崎県で2006年に談合事件が起きて当時の知事が辞任したのが12月4日、年明けの1月21日に選挙が行われて東国原英夫氏が当選している。

逆にいうと、首長の辞任と選挙を短い期間ですると、多くの潜在的な希望者が準備ができないので恣意的になるのである。

今回も選挙運動もろくにやらずに一般投票の要求が強いのは、ポストに就かずに一年中選挙運動していた石破茂氏にそのほうが有利なのは当たり前であって、本格的な選挙にしたいなら、フランスの大統領や、首長選挙のように2か月くらい時間をかけてするべきであろう。