“たかが一歩”が生む新たな価値 〜 コロナ支援で飲食店の道路占用緩和

2020年09月19日 06:00

私が区議会議員として務める東京都中野区において、6月5日付国土交通省発表の「新型コロナウイルス感染症の影響に対応するための沿道飲食店等の路上利用に伴う道路占用の取扱いについて」を活用したテラスができた。

本件については「3密回避の秘策も遅々として進まず 〜 コロナショックもマインドチェンジが追い付かない」で取り上げさせていただいた。

要点としては、中野区において、この制度を活用できないか、関係各所に打診させていただいたところ、以下のような意見があった。

(再掲)

  • そもそもテラス席を置くと条件にある2m以上の歩行空間を確保できない。
  • もしテラス席を設置できたとしても道の片方のみであり、不公平である。
  • 2階以上の店は何もメリットがない上に入り口を狭められるというデメリットが生じる。
  • 商店街のある飲食店が団体に加盟していないため、制度利用する意味がない。
  • 実はすでに許可を得ずにテラス席を設けており、制度利用自体が藪蛇になる。

ここでは詳細に明記できないが、商店街などの団体は価値観が多様化する世の中でそれぞれの加盟店の意見に対して、バランスを取ることが困難になっているように感じる。各店舗ではコロナ対応が進められてきたが、長い時間をかけて形成された地域でのルール・慣習などはコロナショックでさえも変えていくことは難しい。

中野区において、制度の活用は非常に厳しいと考えていたが、条件を満たす店舗が現れた。

このテラスの規制緩和において、非常に懇意にしていただいたので、店のご紹介をさせていただく。

中野区中野4丁目7-2SHビル1Fにあるイタリア料理店TRATTOTRIA IL FORNELLO(イルフォルネッロ)、オーナーのフランコシェフは恵比寿のイル・ボッカローネ、広尾のラ・ビスボッチャのオープニングシェフを勤め、イタリアンブームの一役を担い、料理の鉄人をはじめ、テレビや雑誌などでも多く取り上げられた。イタリア人がリアルに普段食べている現地そのままの味を紹介してきた中野の名店である。

中野駅北口から徒歩7分、土地勘がある人ならばわかると思うが、中野体育館に面した「けやき通り」にある。

けやき通りは中野区が管理する区道である。

店舗地図

写真は今回のテラス緩和の制度の活用前の店舗の外観である。

赤丸で囲んだ机の足場はビル敷地内であるが、傾斜があるためにそのままテラス席にはできない。そこでビル敷地と区道をまたいでウッドデッキを設置し、その上にテラス席を設けたいとのご要望があった。

制度活用前の店舗外観

図は本件の概略平面図である。

文頭で紹介したリーフレットに記されているが、「歩道においては、交通量が多い場所は3.5m以上、その他の場所は2m以上の歩行空間の確保が必要です。」とあり、この通りは交通量が少ないため、2m以上の歩行空間を確保すればいい。

そこで図で示すように歩道部分を2m確保し、それ以上の部分0.6m(黄色斜線部)の道路使用許可(地元警察署)と道路占用許可(中野区)を得て、黄色全体にテラス席(ウッドデッキ)を設置した。

概略平面図

写真は完成後の様子で、けやき並木と調和した素晴らしいテラス席が設置された。

宇宙飛行士のニール・アームストロングの 「これは人間にとっては小さな一歩だが, 人類にとっては大きな飛躍である」という言葉を借りると、「これは人間における一歩サイズ幅だが、店舗・自治体にとって大きな飛躍である」。

“たかが一歩”であるが、店舗にとっては顔になり、3密を回避でき、新たな価値を生み出した。

テラス設置後

本制度はこれまでにない新しいルールのため交通上の安全性がしっかりと担保されるのか、警察署も自治体も問題がないように様々なことを検討されたとのことである。

11月末でこの制度の終了ということであるが、店舗においてせっかくの設備投資が無駄になってしまい、各自治体からエリアマネジメントのスタートアップ事業としての期待もあり、制度延長を強く求める声が多数あり、国土交通省には安全性を担保しながらも賑わいが創出できようご検討をいただきたい。

また関連して、今年5月20日に「道路法等の一部を改正する法律」が可決し、国土交通省は「賑わいのある道路空間」のさらなる普及に向けて「歩行者利便増進道路制度」を創設した。

商店街には既存のルールやデファクトスタンダードとなるものがあり、すでにコミュニティーがあるところではテラス席の制度利用は困難である。

これから再開発が行われるエリアにおいてはルールがある程度リセットされることが想定されることから同制度の活用していただきたい。

例えば、中野区においては西武新宿線の連続立体交差事業に伴う沼袋駅前バス通りの再整備(沼袋区画街路第4号線の道路空間構成について)においては防災力向上のため、ほとんどの建物がセットバックを強いられ、一方通行一車線のバス通りが両方通行二車線へと拡幅することは商店街の賑わいを喪失させてしまう懸念がある。

現在の沼袋駅前バス通りの様子

▼再整備の方針

しかし、テラス席が設置できることにより、実際の道路幅員より見た目はタイトになり、賑わいの演出が可能となる。地域の懸念事項を減らす一助としてもテラス席の導入について行政をあげて推進すべきではないだろうか。

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加藤 拓磨
中野区議会議員、元国交省研究官(工学博士)

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