ベーシックインカムで達成すべき3つのテーマ

2020年10月10日 06:00

ベーシックインカムを求める声が野党を中心に高まっていますが、それぞれが全く違う制度について話しているように感じます。この中で共通するのは再分配に関する諸制度の一元化と見直しで、この部分に関して、幅広く共感の得られるものが、改革案として妥当なのではないでしょうか。

私も以前、持続可能な社会保障を考える立場から、「ベーシックインカムと一括りにされているもの」の分類をしました。

ベーシックインカム論の混迷:現実的にはどの手法が最良か? ― アゴラ(2020年01月06日)

いらすとや

その後議論はさらに深まりましたが、方法論よりも何を目的にするかという切り口が重要かと思います。今、社会がベーシックインカムに対して期待しているのは下記の3点かと思います。

1. 諸制度の不公平感の解消

福祉制度は認定や審査などがあり不公平感の温床になっています。具体的には認可保育園制度で、どのような順位付けがされているかは不透明で、妊娠した親は錯綜した情報に右往左往させられます。

同様のことが、生活保護や雇用保険の受給について言えます。制度上、生活保護申請を窓口は断ることができませんが、そのようになっていないのが現実のようです。

このように人間が判断する以上、どうしても線引きに不満が生まれます。実現可能な範囲で自動的に適応の可否が決まる方が、不公平感のない制度設計になります。

2. 複雑な諸制度の一元化

既に現金給付をしている複数の制度があります。老人限定ベーシックインカムといえる年金制度や、所得制限付子供版ベーシックインカムといえる児童手当などです。これらは財源としてそれぞれ年金保険料、年少扶養者控除廃止という手段がとられています。

つまり児童手当についてはもともと税金の控除があった分をなくして徴税し、再配布しているということになります。

そういうことであれば、年金や雇用保険も含めて給付付き税額控除にまとめてしまえば、現金に関する申請を確定申告に一本化することができ、窓口や手続きも減るので公務員の負担も減らすことに繋がります。この時生活保護はストック(資産)は参照しないでフロー(月々の収入)のみで判断してもいいのではないかと思います。

既に給与支給についてはマイナンバーで原則的に捕捉されているので、月ごとの給与が途絶えた場合、自動的に申請してある銀行口座に振り込まれるという形も検討されていると聞きます。

3. ワーキングプア・少子化対策

私がベーシックインカムの必要性を特に感じるのは、低賃金労働者の生活に関してです。学歴が高くなく、現場労働に従事するものは、社会を支える重要なエッセンシャルワーカーであるのに厳しい生活環境で、人生設計が困難になっています。

エッセンシャルワーカーは慢性的な人手不足で、外国人労働者で補うというのも一つの手段です。しかし同じ文化と言語を共有し、その生涯にわたって共に社会を担う「非大卒日本人労働者」の生き方を再評価し、ボトムアップするのは、ベーシックインカムの議論において重要なテーマであるかと思います。

たとえば前述のように児童手当相当分が計算しやすくなれば育児計画が立てやすくなりますし、非大卒労働者でも十分な人生設計が可能であれば、養育費に子供の人数分の私立大学学費を計上する必要がなくなり、育児教育のハードルを下げることができます。

まとめ

全ての社会保障を一元化する、原理主義的なベーシックインカムは確かに公平で合理的です。しかしそれでは医療保険制度など急に多額の出費が必要な場合などに対応できません。

そうであれば現物給付されているものに関してはある程度現状維持し、既に現金給付されている諸サービスに関して、ワーキングプア対策も含めながら一元化して合理化していく、というのが、現実的な方法ではないでしょうか。

元々ベーシックインカムは社会保障を合理化することで政府の介入や恣意的運用を小さくしようという市場原理主義派のアイデアです。社会保障の見直しというと弱者切り捨てと批判されがちですが、その様には考えていません。

むしろ社会福祉をどのように持続可能な制度するかを考え、適正な規模について論じているので、無為無策な福祉拡大よりも、より真剣に社会福祉に向き合っている訴えることもできます。

多くの人の賛同を得られるような合理的な再編を提案していくことが、政治的に「第三極」と呼ばれる勢力の拡大につながっていくのではないでしょうか。

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中田 智之
歯学博士・医療行政アナリスト

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