海自FFMに対する評価

2020年11月23日 06:00

海自の最新鋭FFM「くまの」の進水式(海自サイトより)

海自のFFM(多機能護衛艦)二番艦が一番艦に先んじて進水しました。
FFMの最大の目玉はその艦としての能力ではなく、クルー制の導入でしょう。

音響艦ひびきで試験的に導入されたクルー制はFFMで本格的に導入されることになります。3隻あたり4チームのクルーが編成される予定です。

それが可能となったのはまず船体の小型化と省力化で乗員を通常のDDの半分、イージス艦の3分の1程度に抑えることができたからです。

また艤装の標準化を厳格に行ったことです。これまでの護衛艦では同じ型でも艤装がその都度異なっていたので、例えば一番艦と5番艦ではまったく違っていたりしました。これだとクルーが交代したときに戸惑い、支障が出てきます。戦闘時ならばそれはなおさら深刻になります。

逆に言えば既存の護衛艦はそれ故にクルー制を導入できない。特にイージス艦のようにクルーの数が多いなら尚更だ、ということです。艤装に関して言えば、修理のときに共通化すればある程度は可能となるとは思いますが、検討はすべきです。

またクルー制度を全面的に導入するのであれば、今後建造されるイージス艦を含めて護衛艦、潜水艦の艤装の共通化が必要となるでしょう。特に最もクルーの確保が難しい潜水艦は最優先ではないでしょうか。

クルー制を導入したFFMは現在行われている海賊対処などの海外任務では大きな期待がもたれているでしょう。既に英海軍などではおこなわれていますが、フネを派遣して交代のクルーは航空機で現地の港まで移動して現地で乗り込む、ということができればわざわざフネが往復することなく(その分燃料費も浮く)、クルーの負担も減ります。例えば中東と日本の間の移動が片道2週間とすれば往復で1ヶ月です。その時間がセーブできます。

現在この移動期間があるために半年交代となっていますが、クルー制ならば2~3ヶ月交代ということも可能となります。

ただ一方で艦のコンセプトは歪んでいるように思えます。建造費はゆき型と同程度にすぎません。それでまともな現代的なフリゲイトが建造できるのか?というのがそもそもの疑問となります。

実際に取材していると「安く作ること」が目的化しているように思えます。搭載機器でも世界を見れば安くて高性能のものが多数あるのに、国内業者発注ありで、「安くなるから低性能でいいでしょう?」という調達が見られます。これはコンピュータやジャイロ、レーダーなどで顕著です。

再三申し上げて来ましたがRWS(リモート・ウェポンス・テーション)はその好例です。
実績のなく、高くて低性能な国産RWSを採用しています。そもそも採用にあたって評価したのは日本製鋼所とコングスバーグだけです。英国、イスラエル、海軍用RWSを生産している国々のメーカーの製品をきちんとリサーチしていません。

特にトルコを調査していなのは問題です。トルコのアセルサンは多くの海軍用RWSを開発し、輸出実績も少なくない。そして価格は欧米よりもかなり安い。コスト低減を真剣に考えるならばアセルサンの製品の調査はマストのはずでした。ところがそんなことはやっていない。

採用された日本製鋼所のRWSにしても既存の艦に搭載して運用試験すらしていない。それで採用されているわけです。そもそも陸用に開発されたRWSですから、海上で監視や目標探知が問題なくできるか。塩害対策は万全かなどと調査するべきことは少なくなかったはずです。

そして割高な国産RWSに下駄を履かせるために、レーザーレンジファインダーや自動追尾装置を外しました。艦にセンサーがあるからいいのだと強弁していますが、であればどこの国のRWSもそうしていますが、ぼくの知る限りそんなものは存在しません。

海幕も装備庁もなんのためにRWSを導入するのかという、そもそも知らないのではないでしょうか。近接している高速艇やドローンなどを排除するためにはレーザーレンジファインダーや自動追尾装置は必須です。また交戦が正当かの証拠保全のためには録画機能も必要ですがこれもないようです。

そしてコスト削減ならば高くて信頼性の怪しい住友重機制の12.7ミリ機銃ではなく、オリジナルのFNのものを調達すべきだったでしょう。ところが国内業者に金を落とすためにわざわざ高くて高性能選んでいるわけです。

海幕はRWSの導入を単に機銃の数を減らし、見張りと共用化することによって省力化することが目的だったのではないでしょうか。艦内から見張りができれば担当者の負担も減ります。それらができればいいということでしょう。

装備庁の説明では他に機銃も搭載しません。つまり最低でも180度ぐらいはRWSの死角となります。特に艦の後方はがら空きです。他の護衛艦と違い、後部に搭載されているは機関砲を装備したCIWSでなく、ミサイルのみを搭載したSea RAMです。

他国の水上戦闘艦のように、死角ができないように12.7ミリ及び、7.62ミリ機銃や7.62ミリのミニガンも搭載されていません。調達コストとクルーを減らすためでしょう。

また他国で搭載されている中口径機関砲のRWSもありません。これでは主砲と12.7ミリ機銃を搭載したRWSの間はがら空きとなります。またドローン対策でも問題です。今のRWS2基ではほとんど役に立たちません。

それから機関も問題です。これはFFMに限ったことではないのですが、海自の護衛艦は30ノット以上の最高速度が求めています。

先週の海幕長会見でも尋ねましたが、高度な機密でいえないと言われましたが、おそらくは米海軍の空母の護衛でしょう。ですがこの程度のことは民主国家ならば当然納税者に説明するような話で秘密でもなんでもありません。

護衛艦の最高速度を欧州の水上戦闘艦並に27~28ノットにすればエンジンの調達費用もそうですが、燃料費や維持整備費が格段に下がります。更に統合電気推進にすれば尚更です。

そうすれば船体にも余裕がでるし、エンジンの場所も自由にレイアウトできます。船体の余裕ができれば、乗り組む員の居住環境の改善もできますし、浮いたアラブ代を航海手当に回すこともできます。そうすれば多少なりとも、リクルートも楽になるでしょう。

「海軍かっこいいぞ、フネは楽しいぞ、カレーがうまいぞ」という宣伝だけでは人は集まりません。

またスペースが余分にできるならば、イージス艦ならば搭載ミサイルも増やせるし、その他の艦では例えば水陸両用部隊や特殊部隊を収容することもできるようになります。欧州ではそういうフネも増えています。

後は旧式艦やミサイル艇の早期の退役、FFMの隻数低減、警備艦はキャンセルして、フネの数を減らすべきです。今後クルー制の導入は潜水艦も含めてFFM以外にも広がるでしょう。そうすれば艦の稼働率は上がります。より少ないフネで回せるはずです。

また逆にクルー制を導入するのであれば、隻数を減らさないと人間が不足します。

今のように充足率が8割もなく、医官も乗っていない護衛艦では戦争できないでしょう。
10倍に薄めたカルピス10杯よりも5倍に薄めたカルピス5杯のほうが良いでしょう。

その分UAVで水上監視を行えばいい。先日の会見で海幕長はUAVではフネの機能を完全には置き換えられないと仰っていましたが、ISRや哨戒は可能であり、またソノブイや単魚雷の搭載も可能です。さらにもうせば調達&維持コストが法外に高いP-1も調達数を減らすべきです。

現実問題として現在の隻数を維持したまま、艦艇乗員の充足率を上げるのは無理です。
根性論では問題は解決しません。海幕は充足率やその他の情報を米海軍並に納税者に開示すべきです。あれもこれも秘密にすれば、外部のからの批判や提言もはいってこず、唯我独尊になります。それをやっていた帝国海軍と大日本帝国がその結果どのような末路をたどったか今更言うまでもないでしょう。

それから海幕長には、アショア代案でイージス艦増勢になった場合、レーダーはSPY7SPY6と混成にするのかと尋ねました。海幕長の回答は「まだ採用をSPY6に絞ってない、SPY7で統一もありうる」とのお話でしたが、これを信じる人がどれだけいるのでしょうか。

まあ、大人の事情があるかとは思いますが。


編集部より:この記事は、軍事ジャーナリスト、清谷信一氏のブログ 2020年11月22日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、清谷信一公式ブログ「清谷防衛経済研究所」をご覧ください。

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清谷 信一
軍事ジャーナリスト、作家

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