ワクチンを何ヶ月も遅らす日本の医療界の利権構造

八幡 和郎

nevodka/iStock

新型コロナへのワクチン接種は、アメリカやイギリスではトランプ大統領やジョンソン首相の「英断」で早々に始まっているし、ロシアや中国ではもっと早かった。このへんは少々乱暴で政治的な賭けの要素もあったと思うが、普段はこうした問題に慎重なEUも、普通なら数週間かかるプロセスを即時で認可し、早速、3億回分のワクチンが各国に出荷され始め、年内に大々的に接種が始まる。

EUのフォンデルアライエン事務局長は医師でもあるが、立派な決断だと思う。日本と同じように薬務行政関係者は、各国ごとのルールまで持ち出して「そんなすぐと言われても」と言っていたが、ねじ伏せた。

日本は政府も医療界も何してるのか。これこそ、政府にとっても医療界にとっても大失態ではないか。とくに医療界はこの段になっても既得権益を守ることしか考えてない。いい加減にしろといいたい。

 日本ではいつ、接種できるようになるのか。ファイザーは160人、アストラゼネカは250人の日本人を対象とした治験をしているそうだが、各社はその結果と海外での治験結果をあわせて承認を申請。医薬品の審査を担う医薬品医療機器総合機構(PMDA)と厚生労働省の部会で有効性と安全性が認められれば承認されるのだそうだ。

日本と同水準の承認制度がある国で販売されるなどした医薬品について、審査を簡略化できる「特例承認」という制度はあって、レムデシビルは申請から3日で承認されている。

しかし、治療薬ほど緊急性はないとかいう声も関係者にはあって、2010年に新型インフルエンザのワクチンが特例承認されたときも、審査に2~3カ月もかかっている。

そこで、今月のはじめての段階では、厚労省では「今年度中にも接種できるようになれば」といっていたが、最近の報道では、ファイザーとビオンテックは12月18日に申請を出し(日本の面倒な手続きのために申請すら出せていなかったのだ)、来年の2月下旬をめどに医療従事者への接種を始められるよう、自治体に体制の整備を指示し、高齢者は3月下旬をめどに、そのほかの人たちは4月以降に接種体制を確保するとかいう見通しらしい。

それにしてもなんと悠長なことだろうか。ワクチンの確保すらできていなかった韓国よりはましだが、文在寅大統領も慌てふためいているようだから、もしかすると、日本にだけは負けないと頑張り、結果的に日本は韓国より遅いという大恥もありうる。

そこまでいかなくても、医療行政については、世界の主要国で最悪は韓国でその次は日本という確率はかなりありそうだ。そして、韓国の関係機関も「よその国で試してから接種するメリットもある」とか言っているらしい。日本の医療関係者でもそんなことを言っているのがいた。

もちろん、それなりの副作用はあるだろうが、大々的に治験も接種もしていて、ワクチンと言わず医薬品一般以上の深刻な話は何もない。一方、経済は疲弊し、倒産や自殺者も増えているというのに、ことの軽重を考えて欲しい。

しかし、医療関係者は、世界中でOKだから日本でもという論理が通用するとそれがアリの一穴になって、自分たちの既得権益が脅かされるということしか考えてないのである。

ワクチンの接種が始まった後、それを強制するわけにはいかないが、ヨーロッパではワクチン・パスポート、つまり、各種の社会活動をワクチン接種を条件にゆるめる考え方の検討が進んでいる。イスラエルはすでに導入。フランスでは南米のギアナ地区などで導入。 ワクチンすれば隔離などされないに始まり、買い物、劇場、学校、乗り物などワクチン接種証明がなければお断りということになりそうだ。

ワクチンが嫌な人は勝手に断って家に閉じこもってもらって社会的に何の問題もない。

 ついでながら、アビガンの認可もまたもや見送った。それなりに、効果がありそうで、安価で、妊婦など以外に深刻な副作用がないのだから、この決定は、岩盤規制を守るための示威行動としか見えない。