菅総理出演の「報ステ」を見て、総理と番組の双方に失望した話

濱田 浩一郎

番組公式サイトより:編集部

菅義偉総理が1月8日夜放送の、テレビ朝日系「報道ステーション」に出演した。生出演ではなくこの日、夕方に六本木のテレビ朝日の同番組スタジオで富川悠太キャスターらのインタビューを受け、それが番組放送中に流されるという形式であった。私は生でこの放送を見ていたが、菅総理の発言には改めて失望せざるを得なかった。

その理由の第一。菅総理は11の国と地域からビジネス関係者の入国を受け入れている仕組みについて、原則維持する意向を示したからだ。「これは今、経済活動が続いていますから、そういうなかで変異種というやつが1例でもあったら、そこはやはり即止めたい」のだそうだ。

しかし、この考えは甘いのではないか。1例でも出たらそれでは遅いと思うのだ。変異種が入る前に食い止めなければいけない。1例でも出た時は、既にドンドン国内に変異種が入っている可能性がある。国民に夜間の移動制限等、痛みを伴うことをしておいて、遠方からの外国人が自由に行き来できるのはおかしいのではないか。緊急事態宣言下とは思えない緩さである。

なぜここまでして、ビジネスであっても外国人の入国を受け入れるのか。これは私の勘ぐりだが、オリンピックを開催したいがためではないのか。ビジネス入国もできないのにオリンピックなど開催できないとの海外からの批判を避けるためではないのか。そうだとすると全く腹立たしい限りだ。国民の命よりもオリンピックのほうが大事だというのか。馬鹿げている。

失望した理由の第二。緊急事態宣言の延長、拡大の可能性を聞かれ菅総理が「仮定のことは考えない」と発言したことだ。言質をとられないために、慎重に発言したのであろうが、ここは本音で語ってほしかった。まさか、本当に仮定のことは考えず、政策を推進しているのではあるまい。しかし、これまでの政府の楽観的な対応、無為無策振りを見ていたら、本当に仮定のことは考えていないのではと思いたくもなるが。

失望した理由の第三。「去年の暮れにですね、1300人というのがありました。あの数字を見た時に、かなり先行き大変だなと思いました。(2週間前からは)想像もしませんでした」と菅総理が語ったことだ。本当に想像できなかったとしたら、これも一国の宰相として、認識が甘いと言わざるを得ない。知り合いの病院関係者は、もっと前から冬になると1000人台はいくと言っていた。私でさえも予見できたり、収集できる情報が、なぜ総理に入らないのか。それとも入っていても、無視していたのか。とにかく、冬に1000人台になるのが想像がつかないというのでは楽観的過ぎる。楽観的に物事を考えてきたから、最終的にはこのような事態になったと言えよう。

最後に、報ステの総理インタビューは、冒頭、富川キャスターが「お節など食べる時間はあったんでしょうか」などとのん気な話題に始まり、終始穏やかに進行した。白熱する場面も、政府の姿勢を問い詰める、そういった場面もなかったどころか、富川キャスターが必死に菅総理を持ち上げているかのような場面もあった。総理へのインタビューという絶好の機会に恵まれながら、太鼓持ちのような受け答えに終始した「報ステ」に、一番失望した。

濱田 浩一郎(はまだ・こういちろう)
兵庫県出身 。皇學館大学大学院文学研究科博士後期課程単位取得満期退学。歴史家・作家・評論家。兵庫県立大学内播磨学研究所研究員・姫路日ノ本短期大学講師・姫路獨協大学講師を歴任。大阪観光大学観光学研究所客員研究員。著書に『播磨赤松一族』(新人物往来社)、『あの名将たちの狂気の謎』(中経の文庫)、『日本史に学ぶリストラ回避術』(北辰堂出版)、『日本人のための安全保障入門』(三恵社)など