孫正義も知らないソフトバンクの営業現場

スマホを電波障害で一週間で解約

菅政権がスマホ料金引き下げの旗を振り、通信会社も必死の競争です。私は駅前の勧誘のセールストークに乗せられ、苦い経験をしました。

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今や世界的な投資家になった孫正義ソフトバンク・グループ会長は、3月期の決算発表で「グループ全体で純利益は5兆円になった」と胸を張りました。コロナショックの株価の暴落、暴騰の波に乗り、すごいことはすごい。

さらに相当、気分が高揚していたか、「私は5兆円で満足する男ではない。10兆円でも満足しない」と。日本企業としては最大、さらに世界市場でトップ級を目指す意気込みにしても傲慢さを感じさせました。

私は先週、NTTドコモからソフトバンクに乗り換えました。「今、あなたが払っている月額約9000円の通信料が半額になります。地方や遠隔地でも通信障害は起きない」というセールストークに乗ったのです。

とんでもない結果になりました。その週末、よく行く山麓のリゾート地に滞在し、早速、新しいスマホを使おうとしましたら、様子が変です。まず携帯電話の繋がりがひどく悪いのです。

地元の人に電話をかけましたら、先方から「よく聞こえません」といわれました。時々、聞こえる相手の音声もぷちぷち音飛びしてしまいます。東京の人に電話すると「しばしば全く聞こえなくなりますよ」と。

ヤフーなどのニュース、グーグル検索、フェースブック、私が投稿しているgooブログ、ツイッターにもつながりません。つながっても、途中から切れてしまい「インターネットに接続できません」「切断されました。もう一度、やり直して下さい」の表示です。なんだこれは。

ずっと使っていたドコモ携帯でも、10年前、同じ経験をしました。「電波塔が足りない。来訪客が増える週末や時間帯によっては、通信渋滞が起き、つながらない」と言われました。その後、ドコモが電波塔を増やし、こうしたトラブルは解消され、都市並みの通信ができるようになっています。

ソフトバンク店の「遠隔地や地方でも通信障害は置きていません」との説明とは違う。電波塔、携帯基地局はあっても、ソフトバンクは電波が弱く、場所や地形によっては電波が届かない場所が出てきている。

事前の説明にウソや誇張があり、解約しかないと思いました。クーリングオフ(契約締結後でも8日以内なら、契約を無条件で解除できる)を適用できる。週明け早々、店舗を訪れ、契約を解除しました。

乗りかえてから6日目です。もし週末にリゾート地に行かず、8日を過ぎていたらどうなっていたか。解約が難航するか違約金を取られたか。いったん、ドコモを解約していますから、ドコモにもその月の通信料9000円(日割り計算に応じない規定)は全額、払う必要があったのです。

携帯電話の契約数は、ドコモが8300万件、auは6000万件、SBは4600万件です。大小合わせた基地局(3Gと4G)はドコモ40万、auは23万、SBは28万です。電波のカバー領域、強弱に大きな差があります。

駅前でソフトバンクの営業マンの宣伝は「あなたの月額9000円(1700円の24時間かけ放題付き)は高すぎる。うちは実店舗で対応しますから、NTTのオンライン対応限定のアハモもとも違う」と。アハモの申し込みでは苦労し、もとのドコモに戻したばかりですから、あり難い話でした。

ソフトバンクは電波基地・電波塔が少なく、地方や遠隔地では通信障害が起きやすいと、経験者から聞いていました。そこを確認すると、対応してくれた店長クラスの人は「そんなことはもう絶対にありません」と。

「まあ信じるか」と。料金はアハモ並み、実店舗対応、電波障害はないは、通信リテラシー(理解・操作能力)の低い私には魅力的でした。それで釣られたのです。

そのほかにも、事前説明にはいくつか疑問を感じました。「自宅に置くWi-Fiルーター(ネットワークへの接続機器)をソフトバンク系に変えてくれ」という要望です。「ルーターは汎用性があるはずだから、ソフトバンクに変えても問題は起こらないはずだ」と、何度も反論しました。

店舗側も引き下がり、確か1000円程度の割り増し料金を払えば、今のルーターでもいいとかで、折り合いがつきました。ソフトバンク系のルーターに変えてしまうと、その後の乗り換えが面倒になる。つまりユーザーに縛りをかけられる。そこが狙った悪知恵なのでしょうか。

勧められたスマホ端末は3万7000円で、48回(月)の分割払い(個別信用購入あっせん契約)です。4年間の縛りをかけるつもりなのでしょうか。あとで契約書を読むと、「途中で通信契約を解消しても、分割払いの支払い義務は残る」とあります。なんだこれ、です。

simロック解除すれば、今の機種を使える。そのことを説明せず、「2万円のキャッシュバック」で釣り、新機種に乗り換えさせ、4年間はユーザーを囲ってしまう。「キャッシュバックでなく、その分、通信料を下げてくれ」と頼むと、「それはできない」と。

20頁の契約書を読み返すと、私の署名が4か所もでてきます。確か一回だけ、パネルに自書のサインを求められただけだったはずだ。筆跡をよく見ると、最初のサインと全く同一です。つまり店側が断りもなしに、サインを転写していたのです。

法廷闘争にでもなれば、無断でサインを転写して、私の同意を取り付け形にしたのは違反になるはずです。つまり契約書自体が無効ということです。8日間のクーリングオフ期間を過ぎても、契約書は無効ということで、ソフトバンクとの契約を破棄できたのではないかと思っています。

ご関心のある方は、私のブログ「格安スマホの加入手続きでドコモに怒り」(3月28日)、「『格安スマホ加入でドコモに怒り』に抗議殺到」(3月31日)、「格安アハモの混乱で高齢者切り捨て反省」(4月19日)をご覧ください。


編集部より:このブログは「新聞記者OBが書くニュース物語 中村仁のブログ」2021年6月17日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、中村氏のブログをご覧ください。