【めいろまさんインタビュー⑤】イギリスの男女平等、DX化について聞いてみました。

アゴラ編集部

めいろまさん(@May_Roma)こと谷本真由美さんが3年ぶりに日本に帰国されました。これを記念して、アゴラ編集部では独占インタビューを敢行しました。今回は第五回になります。(第四回はこちら

metamorworks/iStock

——欧州の企業は男女平等が進んでいて、逆に女性に厳しくなっていると聞きました。

めいろまさん(以下、めいろま):欧州ではジェンダーの平等が進んでいると言われることが日本では多いのですが、実態は十分伝わっていないなあと感じています。

例えば「平等」になるということは、甘えも許されなくなる、ということです。

日本では女性は「そんな大変なことはやらなくて良いよ」と配慮されることが珍しくありません。会社でもあまりキツイ業務には回されません。

ところがイギリスはじめ欧州北部ではそのような配慮はあまりなく、働く人は成果が数字で評価されますので、女性であっても男性とほぼ同じ大変厳しい業務評価に晒されます。未達成であれば当然首です。見た目が良くでも可愛くても数字で成果が出ますのでごまかしが効きません。

妊娠したり、出産したりすると、どうしても仕事にギャップが生まれてしまいますし、当然与えられた成果を達成できなくなるので「未達」でクビや減給になります。

しかしそれは完全に「合法」なので、「出産や妊娠で差別したわけではない」という理由をつけることが可能です。実は仕事の場では、こうやって「差別」される女性も多いのです。「未達」が怖いので、子供を産まない女性もいますし、仕事自体をやめてしまう方も少なくありません。産休や育休も実は日本の方が遥かに長かったりします。欧州北部の場合、制度はあってもそれ以前に業績評価が厳しいので、そう簡単には育児と仕事を両立できないのです。

アメリカはもっと激しく、病欠も取れないというのが実態です。解雇規制が遥かにゆるいですし、欧州や日本のように国の介入が激しくなく、雇用契約は企業と労働者の間の「合意」で決まるからです。

実は日本の大企業や官公庁は働きやすいんです。

——日本に比べて役所のデジタル化が進んでいると言いますが?

めいろま:日本では役所の手続きが紙だらけで、いちいち窓口に並ばなければならなかったり、今どき電話での問い合わせがあったりするのでびっくりします。家にはがきを送ってくるのも驚かれます。プロセスの適正化が行われておらず、製造業のような工数管理をきちんとやっていないのがよくわかります。高齢化で納税が減るのが明らかなのに、ここまでデジタル化が進んでいないのは大問題でしょう。紙で処理ではエラーも起こりやすくなりますし、監査も不十分になります。

イギリスを始め欧州北部は納税者が役所の人件費にも厳しいので、現在は大半の業務がデジタル化され、実にシンプルなウェブサイトから確定申告から失業手当の申請、福祉手当の申請などが行えるようになっています。スマートフォンを持っていない人もいますから、あえてアプリにはせず、昔のテキストサイトのようなシンプルさです。サイトの色やフォントはすべて統一されていて、どのページでも同じ規格なので、事務処理が容易です。さらに二段階認証の実装も当たり前です。日本は確定申告のサイトのセキュリティさえ穴だらけなので驚かされます。

例えばイギリスの場合、運転免許の申請はそもそも全てデジタルが前提です。対面でやろうとすると、僻地にある事務所に飛行機に乗って行かなければなりません。デジタルでできない人は、高齢者を支援する団体などの人に手助けしてもらう仕組みになっています。

——ちなみにイギリスではみなさん確定申告はされるのでしょうか。

めいろま:複数から収入がある人や不動産を持っている人が少なくないので、かなりの人が確定申告をやっています。サラリーマンで収入が雇用先だけの人はやる必要がないことが多いです。

——日本でもDXが話題になっていますが、イギリスの企業でもデジタル化は進んでいるのでしょうか。

めいろま:デジタル化は確実に日本より進んでいます。まず以前ご説明差し上げたように、イギリスの組織はコストの適正化、利益率に大変厳しいために、人件費も高いので、デジタル化で効率を高めないと仕事が回らないのです。デジタル化する前に、徹底的にビジネスプロセスの見直しを行います。まずどのプロセスがどのくらい付加価値を生んでいるのかということを検証し、不要なプロセスは削除します。プロセスも業界標準があるので、どのような作業が何工程あるのかだいたいわかっています。

プロセスに問題があればそれを設計し直します。そしてシステムのグランドデザインとすり合わせ、適切なシステムを開発します。また既存のパッケージシステムを導入します。

日本の組織は、このようなプロセスの見直しを徹底的にやりません。ただし製造業の生産工程では昔からやっており、元々北米や欧州のプロセス改善の手法は日本企業が昭和40年代からやっている手法を参考にしています。日本は事務系やサービス業、行政はなぜか製造業のようなプロセス管理ができていません。

——そういった場合、余剰になった人員は解雇されてしまうのでしょうか。

めいろま:要らなくなった業務に携わっていた人は配置転換をしたり、再トレーニングをしたりします。解雇する場合もあります。

こういった業務改善は、日本だと前任者の名誉を傷つけてしまうのでやりづらいですが、イギリスはそうでもないんです。こういうことをやるときは、幹部クラスを外部から連れてきてあっというまに変えてしまいます。

——日本でDXが進みづらい理由がわかった気がします。

その6につづく

大人気の週刊めいろま世界のニュースクリップこちら

谷本真由美さん @May_Roma (めいろま)

ITコンサルタント。専門:ITガバナンス、プロセス改善、サービスレベル管理、欧州IT市場および政策調査。ITベンチャー、経営コンサル、国連専門機関情報通信官、外資系金融機関等を経て日英往復。趣味HR/HM。仕事依頼 Twitter @May_Roma